「視覚障がい」の特徴と職場でできる配慮とは?
障がい者雇用において、事業主には「合理的配慮の提供義務」が求められており、障がい者が職場で働く際に何らかの支障がある場合には、それを改善するための措置を講じることが必要です。しかし、「合理的配慮」と言っても、障がいの内容によって特性や症状が異なるため、どのような配慮が必要なのかは状況によって変わります。そこで、「ケース別配慮のポイント」と題して、7回にわたって障がいの種類ごとにどのような配慮が適切かを紹介します。第4回の今回は、「視覚障がい」のケースについて見ていきます。

「視覚障がい」は、どのような障がいか

人間の目には、物を識別する「視力」をはじめ、一度に多くの情報を得るための「視野」、ピントを合わせる「屈折と調整」、動いているものを検知する「動体視力」、明るさの変化に対応する「順応」、色を識別する「色覚」など、いろいろな機能があります。視覚障がいとは、これらの何らかの機能が低下して、目からの情報が得にくいために日常生活に支障をきたしている状態です。

視覚障がいには、全盲(全く見えず、明るいか暗いかの判別ができない)だけでなく、弱視(目は不自由でもある程度は見ることができる)や、視野狭窄(見える範囲が限定されている)など、さまざまな症状があります。

視覚障がいは、「視力」と「視野」の程度により、身体障害者手帳の障害程度等級1級から6級までに分けられます。しかし、見えるか見えないかだけでなく、「形の識別」、「明暗への対応」、「文字を読む速度」、「色の見分け」などに困難が生じることもあり、障害者手帳の等級だけでは具体的な症状がわからないこともあります。「見えにくさ」は、個人によってかなり異なることを意識しておくことが必要です。

また、視覚障がいは、生まれつき視覚に障がいがある「先天性」と、生まれてから視覚に障がいが生じた「後天性」に分けられます。先天性の場合は、視覚特別支援学校に通い、点字の授業や職業教育を受けることが多く、点字を使ってスムーズに読み書きできる人も多くいます。一方、視覚特別支援学校は生徒数が少ないことが多く、集団で過ごす経験は不足しがちです。

後天性の場合、障がいが生じる前と生じた後では、生活が大きく変化することになります。そのため施設などで歩行や点字、音声パソコン、家事、日常生活動作などの訓練が受けられるほか、視覚障がい者用に開発された日常生活用具や、補助具などの活用方法も学ぶことができます。

視覚障がい者の就労支援機器

視覚障がいの支援機器として、白杖を思い浮かべる人が多いと思いますが、他にも視覚障がい者が働くために役立つさまざまな支援機器が開発されており、以下のようなものがあります。

●拡大読書器
書類や写真などを拡大表示する機器です。コントラストや色調の変更ができるため、より見やすく調整することができます。卓上型と携帯型があり、活用シーンに合わせて選択できます。

●画面拡大ソフト
パソコン画面の文字や写真を拡大するソフトです。色調の変更や、カーソルの強調などの調整により、画面を見やすくすることができます。

●画面読み上げソフト
パソコン画面の文字情報を音声で読み上げるソフトです。画面拡大ソフトと併用することで、より視覚障がい者の疲労軽減や作業効率向上が見込めます。

●点字ディスプレイ
パソコン画面の文字情報を点字表記する機器です。画面読み上げソフトと併用すれば、点字と同時に音声でも画面情報を認識できるため、視覚障がい者の疲労軽減、また作業の正確性の向上につながります。

●活字音訳ソフト
スキャナーで読み取った画像情報から文字情報(テキストデータ)を検出し、音声で読み上げるソフトです。

「視覚障がい」への配慮のポイント

視覚障がいは、視力や視野の程度の違いから、見え方が個人によってかなり異なり、困りごとも人それぞれです。声をかけると目を合わせて話すことができても、一人で歩くと物にぶつかってしまう人もいますし、白杖を持たずに移動することができても、文字を読み書きするのが難しい人もいます。

適切な支援を行うには、どのようなサポートが必要かを当事者に直接聞くことをおすすめします。そうすることによって、必要以上に手厚いサポートをして本人の意欲をそいでしまうことや、逆に支援が不足していたり、適切でなかったりする状況を減らすことができます。

仕事をするときには、視力や視野に加え、明るさや色など、当事者の見え方に応じた環境設定を行うことで作業がしやすくなります。状況に合わせて支援機器を活用し、パソコンを使用する業務などに携わっている視覚障がい者も増えています。職場でどのような配慮ができるのかを見ていきましょう。

【募集・採用のときにできる配慮】

●求人内容について、音声などで情報提供する
求人情報が文字で記載されている場合、当事者が内容を読むことができない場合があります。募集内容を読み上げたり、口頭で労働条件を説明したりするなど、音声で求人情報を提供している企業があります。また、ホームページに求人情報を掲載する場合には、音声案内を実施する、もしくは音声読み上げソフトに対応した形で掲載することもできるでしょう。

●点字や音声による採用試験の実施や、試験時間の延長を行う
採用試験では、文字を拡大して印刷する、音声ソフトの利用を許可する、点字による採用試験を実施するなどといった配慮が有効です。また、当事者は読むのに時間がかかることが多いため、試験時間を長めに設定する場合もあります。

●その他の配慮
面接時に当事者を会場の最寄り駅まで迎えに行く、当事者に分かりやすいよう会場の入り口に目印を置く、段差がある場所を事前に伝えて注意を促すなどの配慮をしている企業がありました。

【採用後にできる配慮】

●拡大読書器などの支援機器や、音声ソフトなどのツールを活用する
当事者が業務を進める上で困難が生じているようであれば、視覚障がい者向けの各種支援機器や、パソコンの機能を上手に活用している事例が参考になるでしょう。例えば、パソコンの基本機能を活用し、文字のポイントを上げる、文字を拡大する、画面の白黒を反転するなど、当事者が見やすいように設定することもできます。また、次のような支援機器を活用しているケースもあります。
・拡大読書器
・音声読み上げソフト
・点字入力用キーボード、点字翻訳ソフト
・ポータブルレコーダー
・音声機能付きコピー機、FAX

独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構では、障がい者の円滑な職務の遂行や職域拡大のため、就労支援機器の導入を検討している事業主を対象に、就労支援機器の無償貸出しを行っています。就労支援機器を職場で活用できるか試したい場合、購入する前に利用してみるとよいでしょう。詳しくは、本記事の最後に掲載する同機構該当ページへのリンクを参考にしてください。

●出勤時間や就業場所などに配慮
当事者の出勤時間を公共交通機関のダイヤに合わせる、または通勤ラッシュを避けて時間設定するなどの配慮もできます。通勤時に事故が起きないよう、天候(風雨や降雪など)に応じて出勤時間に幅を持たせるなど、柔軟な対応をしている事業所もあります。オフィスが複数ある場合には、当事者が出勤しやすい職場に配属するなどの調整もできます。

●職場内の安全管理
職場内のレイアウトや、危険箇所を確認しておきましょう。視覚障がい者が移動するときに支障となるものを通路に置かないようにすることや、当事者の移動の負担が少ない場所に机を配置すること、打合せ場所を工夫することなども有効な配慮です。

視覚障がい者にとって、職場に予期しないものが置いてあると危険であり、ストレスにもなります。職場全体で安全管理について注意喚起し、非常時の避難の誘導担当者などを決めておくことは、リスク管理において重要です。

●その他の配慮
その他の配慮としては、食堂などの社員施設において、メニューを点字で表示する、ユニバーサル席を設置する、食堂職員が当事者の配膳をするといったことがあげられます。

また、階段などの危険箇所にマットや手すりを設置してわかりやすくしたり、照明スイッチを当事者の使用しやすい場所へ移設したりするなどの工夫を取り入れ、職場の安全確保に努めることによって、視覚障がい者はもちろんですが、社員全体の安全管理を強化できます。

視覚障がい者が盲導犬を活用している場合には、勤務時間中に盲導犬を預かる、他の社員向けに盲導犬への接し方の理解促進を図るなどの配慮もできるでしょう。

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