身体障がい(肢体不自由・内部障がい)の特徴と職場でできる配慮とは?
障がい者雇用において、事業主には合理的配慮の提供義務が求められており、職場で働く際に何らかの支障がある場合には、それを改善するための措置を講ずることが必要となります。しかし、「合理的配慮」と言っても、障がいの内容によって特性や症状があるため、どのような配慮が必要なのかは、状況によって変わってきます。本稿では、身体障がいの「肢体不自由」や「内部障がい」について見ていきます。

身体障がいとは、どのようなものを指すのか?

「障害者雇用促進法」で障がい者とカウントされるためには、障害者手帳を持っていることが必要です。この障害者手帳には、「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」の3つがあります。そして、交付される手帳には、生活における支障の程度や症状などに応じた「障害等級」と呼ばれる区分があり、これに基づいて等級が決められています。

障がい者だからと必ず障害者手帳を取得する必要はありません。ただ障害者手帳を持つことにより、メリットがあります。例えば、さまざまな福祉サービスなどを受けられる、障がい者枠で働くという選択肢が増えるなどです。

身体障害者手帳は、身体障害者福祉法に定める身体上の障がいがある人に対して、都道府県知事、指定都市市長又は中核市市長が交付しています。手帳交付の要件としては、「身体障害者福祉法に掲げる次のような身体上の障がいがあり、一定以上で永続すること」とされています。

■定められている障がいの種類
・ 視覚障がい
・ 聴覚又は平衡機能の障がい
・ 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障がい
・ 肢体不自由
・ 心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障がい
・ ぼうこう又は直腸の機能の障がい
・ 小腸の機能の障がい
・ ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障がい
・ 肝臓の機能の障がい

身体障害者手帳では、症状の種類や日常生活で支障をきたしている程度により、障がいを1級から7級の等級に分類されています。手帳申請の際に審査が行われ、障害等級が認定されます。

等級は1級に近づくほど程度が重く、7級に近づくほど軽くなっていきます。身体障害者手帳は、6級以上の障がいに対して交付されます。7級の障がいは、単独では身体障害者手帳の交付対象にはなりません。ただし7級の障がいが2つ以上ある場合や、7級の障がいと6級以上の障がいが重複して存在する場合は交付対象となります。

「肢体不自由」「内部障がい」への配慮のポイント

身体障がいと一言で言っても、この中にはさまざまな障がいが含まれます。「平成 30 年度障害者雇用実態調査結果」(厚生労働省)の結果を見ると、身体障がい者の内訳は、肢体不自由が 42.0%を占め、次いで内部障がいが 28.1%、聴覚言語障がいが 11.5%となっています。
「肢体不自由」は病気や事故などにより、上肢(腕や手指、肘関節など)、下肢(股関節、膝関節など)、体幹(座位、立位などの姿勢の保持が難しいこと)の機能の一部、または全部に障がいがあり、日常生活の中での動作が困難になった状態を指します。

「内部障がい」とは、体の内部に障がいがあることを言います。心臓機能障がい、腎臓機能障がい、呼吸機能障がい、膀胱または直腸機能障がい、小腸機能障がい、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障がい、肝臓機能障がいなどが含まれます。例えば、人工透析を受けていたり、ペースメーカーを入れたりする場合もこれに該当します。外見からは分かりにくいことがほとんどです。

続いて、肢体不自由と内部障がいの方に対する職場でできる配慮について具体的に見ていきます。

【肢体不自由】
肢体不自由には、上肢、下肢、体幹障がいがあり、日常生活の運動機能に障がいがあることが多く見られます。特に下肢に障がいがあり、車いす等を利用している場合には、物理的な配慮が必要になることが多くあります。

●募集・採用のときにできる配慮
・面接のときに移動を少なくする

面接場所のフロアを1階にしたり、入り口から近い場所を選んだりすることで、面接場所への移動の負担を軽減できます。いくつかの試験を行なうときには、すべてが1つの会場で完結するようにできるようにすると移動を少なくできます。また、車での移動を希望する場合には、駐車場を準備する企業もあります。

●採用後にできる配慮
・移動の支障となるものをなくし、職場内での移動の負担を軽減する

通路に棚や物が置いてあると、車いすでの移動で支障になることがあります。これをなくすために、物の配置や場所の使い方を工夫し、レイアウトを変更する、障がい者社員を移動しやすい席に配置するなど、できることは多くあります。また、移動頻度の少なくするために、業務に必要な設備(書類棚、各種ラック、プリンター等)を席の近くに配置できるかもしれません。何か業務で移動が必要な時には、階段を使用せずにすむように、一部屋やワンフロアで作業が可能なようにレイアウトしている職場もあります。

・業務がしやすいオフィス機器を活用する
肢体不自由の方は、作業姿勢の調節が難しいなどの支障があるかもしれません。そのため車いすでも使用しやすい、高さの調節のできる机を準備している職場もあります。

・障がい特性から見て困難な業務の担当を外す
移動したり、立って業務を行なったりが難しいのであれば、座ってできる仕事に専念してもらう体制を作れないか検討します。また、重い荷物の運搬や、高さがある場所での作業、その他にも障がい部位に負担のかかる業務については、担当を外す配慮をしているケースもあります。

・移動、対応しやすい環境を整える
職場内にスロープや手すりを設置したり、ドアを引き戸や自動ドアにしたりといった配慮ができないか、まず考えます。また、車いすの方の目線を考慮し、カード認証機や掲示板をその目線に合わせて設置している職場もあります。

【内部障がい】
内部障がいでは、病気や障がいの影響により、体力や運動能力が低下していることがあります。また、定期的な通院が必要な場合も多いので、体調管理や通院に関しての情報を把握することが大切です。

●募集・採用のときにできる配慮
・面接時間や試験形態について、必要に応じて短めに設定する

身体的な負担等を考慮して面接時間を短く設定する、本人の体調を確認しながら採用を進めるなどをする企業が見られます。また、ストーマを装着している場合には、交換する必要が生じた場合に備えて、トイレが近くにある場所で面接を行なうといったことも考慮できるかもしれません。

●採用後にできる配慮
・出退勤時刻・休憩・休暇に関し、通院や体調などに柔軟に対応

障がい者の希望と障がいの状態、通院状況に合わせて、柔軟に休暇・休憩を取得できるようにする、あるいは、固定的な勤務休暇形態にするとよいでしょう。

ある企業では、一般的には交代制の勤務ですが、障がい者は日勤に固定されています。また、透析治療の日には短縮勤務として、体調管理をしやすくしています。

・労働条件・職場環境等に関して、通院・体調に配慮
体調面を考慮して、残業の少ない部署に配置する、短時間勤務ができる体制を整えている企業があります。

・職場に休憩しやすい環境を整える
職場に休憩できるスペースや横になれる場所を作り、体調不良の時には、ベッド等で休めるようにしています。また、車いすユーザーが多い職場では、褥瘡予防のために車いすから移動できるスペースを準備することができるかもしれません。

・障がいに配慮した職場環境を整える
心臓ペースメーカーを装着している人は、電子機器の影響を受けやすくなります。そのため電子機器から離れた場所に仕事スペースを配置できるかもしれません。

また、体調管理が必要な場合も多くあります。水分摂取量に制限がある社員には、夏は室内作業を中心にする、扇風機やスポットクーラーを作業場に設置するなどの環境整備ができるかもしれません。

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