障がい者雇用におけるテレワークのメリット/デメリットと業務切り出しのポイント
テレワークは、障がいや疾病の特性等に応じた働き方の一つとして注目されています。通勤が難しい障がい者でも、パソコンやインターネット等を活用して在宅で勤務するという選択肢が増え、能力に応じた業務の幅を広げるからです。この、障がい者雇用のテレワークについて3回にわたって考察するミニ連載。2回目となる今回は、障がい者雇用をテレワークで進めることのメリット/デメリットと、業務の切り出し方のポイントについて見ていきたいと思います。

障がい者雇用におけるテレワークのメリット

テレワークのメリットは、生産性の向上や業務効率化、オフィスの縮小化や交通費などのコスト削減、子育てや介護などの制約がある社員でも働き続ける環境を作ることなどが挙げられます。では、障がい者雇用におけるメリットやデメリットは、どのような点があるのでしょうか。

●ストレスを軽減しながら仕事がしやすい環境を作りやすい
精神障がいや、発達障がいのある人の中には、ストレスを感じやすい人が多くいます。このような特性がある人にとっては、通勤ストレスがなくなることや、対人コミュニケーションが減ることから「働きやすくなった」と感じる人が多いようです。

例えば、「今までは職場で直接に顔を合わせてミーティングすると、緊張してうまく伝えることができなかったが、パソコンの画面では落ち着いて話せる」という声や、「チャットの短い文章でわかりやすく、履歴も残るので見直すことができて安心」「指示を聞き返す必要がないので、精神的なストレスが軽減した」という意見も聞かれます。

●コミュニケーションがていねいになる
一般的に対面で仕事をする場合、こちらが予期していないときに指示を受けたり、同時に複数の業務を振られたりすることがあります。障がい特性のある人にとって、このような場面は、仕事の内容を理解しにくい状況を作ることがあります。

私たちは情報を取り入れるときに、聴覚として耳から聞いて情報を取り入れるか、視覚として何かを読んだりすることの、どちらかで情報を得ています。しかし、障がい者にとっては、このどちらかの情報を取り入れることが、極点に苦手なことがあります。

これがテレワークになると、事前に打ち合わせの時間を決めるため、情報を受け取る準備ができます。また、相手の返事を待ってからコミュニケーションを取れるため、相手のペースに合わせることが苦手な人でも、情報を受け取りやすくなる傾向があります。

加えて、テレワークではメールやチャットでの文字による連絡が多いこともメリットです。文字として言語化されて入ってくる情報は、受け取る側にとって自分のペースで理解しやすくなるうえ、もし同時に情報が入ってきたとしても、順番に処理できます。マルチタスクが苦手な人にとっても、情報を整理して、受け取りやすい環境を作れるのです。

●働きやすい労働環境を整えるコストが削減できる
障がい者が働きやすい環境を作るために、職場整備に設備投資や、障がい特性に合わせた配慮をおこなっている職場が多数あります。

例えば次の通りです。
・疲れやすく身体的な休憩が必要な社員向けに休憩室や仮眠室を準備する
・気が散りやすい特性がある人のために机のパーティーションや個室のワーキングスペースを設ける
・物音に敏感な社員を端の席へ配置する、イヤーマフ(耳全体を覆うタイプの防音保護具)を準備する など

テレワークであれば、このような障がい者の働きやすさを考慮した労働環境整備にかかるコストを削減できます。

●採用する地域が限定されない
障がい者雇用に多くの企業が取り組むようになり、首都圏などの企業が多い地域では、障がい者の採用が激化しています。また、通勤の難しい地域などでは、採用したくても応募者がいない状況も少なくありません。
しかし、テレワークによって働く場所が限定されないのであれば、住んでいる地域や通勤の困難さなどに関係なく、企業は採用できます。また、障がい者にとっても働く機会が増えることにつながります。

障がい者雇用をテレワークで進めることのデメリット

●職場にいれば気づけたことに気づきにくくなる
職場で一緒に働いていると業務の状況や、職場の過ごし方(休憩や食事なども含む)を管理・把握できました。しかし、テレワークでは自己管理に任せることになります。会社にいれば、仕事ぶりや表情などから「ちょっと疲れているな」とか「体調が悪そうだな」と周囲が気づいたような場面でも、テレワークでは気づきにくくなりがちです。

また、会社に出勤していると、その時間に合わせて生活リズムを立てやすくなりますが、テレワークでは、時間の管理なども原則自己で行います。業務ももちろんですが、朝起きる、食事を取る、睡眠取るなどの生活リズムができていないと、調子を崩してしまうことも見られることもあります。

●障がい特性によっては、業務に支障が出ることもある
精神障がいや発達障がいの方にとっては、テレワークを働きやすいと感じる人が多い一方で、障がいによっては、業務に支障をもたらすこともあるようです。日本財団が行った「コロナ禍における健常者と障がい者調査レポート」(※)によると、視覚障がい者や聴覚障がい者の場合、アンケート結果から「仕事が遅延したり、支障をきたす」ことが示されています。

聴覚障がいでは、口話といって唇の動きで話を読み取る人がいます。WEB会議上で、複数人が一気に話をすると、誰が話しているのかがわからなくなり、状況についていけなくなることがあります。

テレワークでは、便利なツールがたくさんありますが、障がいのある社員が同じように利用できているのか、情報を受け取れているのかをイメージすることや、本人に直接確認することはていねいに行っていくべきでしょう。また、情報を受け取れていないのであれば、どのようにフィードバックするのかを考えていくことも必要です。

障がい者雇用のテレワークで、業務を切り出すポイント

障がい者雇用を進めていく企業の悩みとして多くあげられる点は、「どのような仕事を障がい者に担ってもらうか」ということです。これがテレワークという環境になると、さらに業務が絞られてしまうように感じられるかもしれません。

実際に、テレワークを行っている企業の中で、障がい者が携わっている業務として多いものは、次のような業務です。
・文書、データ等の入力・加工
・資料作成・修正
・情報収集、リサーチ調査
・Webサイトのデザイン・制作等
・WEBサイトのパトロール、管理

まずは、このような仕事について検討してみましょう。

また、今までは、テレワークが難しい業務とされてきた営業などでも、コロナ禍により顧客との打ち合わせや商談もリモートで実施するケースが増えています。リモートの場合には、対面のときよりも、参加する人数が増えても目立ちません。場合によっては、打ち合わせ等に同席してもらうことで、営業に関連した業務や報告書の作成、議事録の作成などに関わる機会を作りやすくなります。

他に業務を切り出す視点としては、今できていない業務でも本当は取り組んだほうがよいもの、やらなければならないけれど手がつけられていない業務などがあります。

今は、業務に関する情報をインターネットから取得することがほとんどです。しかし、多くの中小企業では、WEBを活用した情報発信をリソース不足から満足にできていません。必要なときに都度、外注しているのが現状です。

このような、企業サイトのコンテンツ制作やSNS発信といった、広報やマーケティングに関わる業務は、一時的な施策として行うよりも、継続的に行うことが欠かせません。また、これらのコンテンツやSNSは、会社の資産にもなり、続けていくことで顧客からの問い合わせや周知につながり、事業の拡大に寄与できます。このような業務を障がい者に任せることもよいでしょう。

もちろん、はじめからできる仕事ばかりではないかもしれません。しかし、実務を通してスキルや手法を習得してもらうことにより、作業力やスピードはあがっていきます。

現状で難しいからと無理だと決めつけてしまうのではなく、ていねいに教えることにより、できることが増え業務の幅が広がるのはよくあることです。また、このようにできる仕事が増えることが、障がい者のモチベーションアップにもつながります。
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