障がい者雇用を進めていくときに活用したいのが、障がい者雇用に関わる支援機関です。しかし、障がい者雇用に関わるサポート機関は複数あるため、それぞれの機関の違いや、どのように活用できるのかわかりにくいという声をよくお聞きします。そこで、障がい者雇用で活用できるサポート機関の種類や役割、サービス内容について、5回に分けて解説しています。今回の第4回目は、「障害者職業センターと、障害者就業・生活支援センターの活用方法」についてお伝えしていきます。
職場の障がい者サポートのイメージ

「障害者職業センター」の活用方法

【障害者職業センターとは】
障がい者の職業的自立を促進・支援するため、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構が設置・運営しているセンターです。障害者雇用促進法に基づいて、職業リハビリテーションの実施・助言・援助などを行っています。

センターには、下記の3種類があります。

・障害者職業総合センター
・広域障害者職業センター
・地域障害者職業センター


上記のうち「障害者職業センター」では、障がい者本人に対する専門的な職業リハビリテーションサービス、事業主に対する障がい者の雇用管理に関する相談・援助、地域の関係機関に対する助言・援助を実施しています。

また、「地域障害者職業センター」は、都道府県ごとにあり、障がい者の就労に関するさまざまな支援を行なっています。職業センターには、障害者職業カウンセラーや配置型ジョブコーチなどが配置されており、障がい者雇用の専門的な役割を果たしています。

【参考】独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「地域障害者職業センターの所在地」

【障害者職業センターが行うサービス内容】
障害者職業センターは、就職を目指している、または、すでに在職中の「障がい者当人」だけでなく、障がい者雇用を考えていたり、障がい者雇用に取り組んでいたりする「事業主」も活用することができます。

●障がい者当人へのサービス

相談や各種検査、作業などを通じて、今後の就職や職場定着に向けた進め方を相談することができます。また、就職に向けた職業準備支援として、障がい者一人ひとりのニーズに応じて、職業評価、職業指導、職業準備訓練、及び職場適応援助などの各種の職業リハビリテーションを実施します。

・職業評価
就職の希望などを把握した上で、職業能力を評価し、それらを基に就職して職場に適応するために必要な支援内容・方法などを含む、個人の状況に応じた職業リハビリテーション計画を策定します。

・職業準備支援
「ハローワーク」における職業紹介、ジョブコーチ支援など、就職に向けた次のステップに進むために、センター内での「作業体験」、「職業準備講習」、「社会生活技能訓練」を通じて、「基本的な労働習慣の体得」、「作業遂行力の向上」、「コミュニケーション能力や対人対応力の向上」への支援を行います。

・職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業
障がい者の円滑な就職と職場適応を図るため、事業所に「ジョブコーチ」を派遣し、障がい者、及び事業主に対して、雇用の前後を通じて障がい特性を踏まえた直接的・専門的な援助を実施します。

●事業主(企業)へのサービス

障がい者の雇用管理に関する相談・支援を実施しています。障がい者を雇用するときに職場に適応できるよう、職場への「ジョブコーチ」の派遣や、うつ病などにより休職している精神障がい者を対象に、職場復帰に向けた支援(リワーク支援)があります。

・事業主支援
障がい者雇用の相談や情報提供を行うほか、障がい者の雇用に関する事業主のニーズや雇用管理上の課題について、専門的な助言・援助、また社員向け研修会の講師派遣などを行います。

・職場適応援助者(ジョブコーチ)支援
一定期間、配置型ジョブコーチが事業所に出向き、障がい者が安心して働き続けられるための業務・職場環境の整備や、事業主が雇用する上での心配や悩みを解決する支援を行います。

・リワーク支援
うつ病といった精神疾患で休職している社員がスムーズに職場復帰できるように、主治医との連携しながら職場復帰に向けた「課題の整理(職場復帰のコーディネート)」と、「リワーク支援」のサービスを実施しています。なお、「リワーク」を利用できるのは、雇用保険適用事業所に在職中の社員です。

・研修など
障がい者を雇用している企業や、これから雇用しようとしている企業の担当者向けの研修やワークショップを行い、障がい者雇用に関する理解の促進を図っています。また、「企業在籍型職場援助者(ジョブコーチ)」研修の開催や、ジョブコーチ支援の計画書作成に関するアドバイスをしています。


近年、障がい者支援機関が増えており、サービス内容が重複する中で、障害者職業センターは「リワーク支援」に力を入れています。特に、うつ病といった精神疾患などにより休職している社員に、「ストレスの対処法」や「コミュニケーションスキルの向上」、「仕事への集中力の回復」などを図るプログラムを実施ししています。これにより、スムーズな復職を目指すとともに、企業側には復職に向けた受入準備の支援をしていますので、該当する社員がいる場合には活用することができるでしょう。

「障害者就業・生活支援センター」の活用方法

【障害者就業・生活支援センターとは】
「障害者就業・生活支援センター」は、障がい者の身近な地域において、雇用や保健福祉、教育などの関係機関の連携拠点として、就業面、及び生活面における一体的な相談支援を実施する機関です。名称が長いので「・」だけを取り出して、通称「ナカポツ」と呼ばれています。運営する事業所は、自治体から公益法人(社団または財団)や、社会福祉法人、福祉NPO法人事業所が指定されています。

「ハローワーク」や「障害者職業センター」は、雇用・就労に関する支援を主としていますが、「障害者就業・生活支援センター(ナカポツ)」は、障がい者の就業面と生活面をサポートする一体的な相談・支援を行ないます。
なお、「障害者就業・生活支援センター」は、令和2年4月1日現在で、全国に335センターあります。
【参考】 厚生労働省「令和2年度障害者就業・生活支援センター一覧」(PDF)

【障害者就業・生活支援センターが行うサービス内容】
障がい者の就業や生活面における各種の相談に応じ支援するため、住んでいる地域の雇用や保健福祉、教育などの関係機関を整備・連携することを目的として、「就業」、及びそれにともなう「日常生活の仕事」と「生活」の両方をサポートするセンターとなっています。そのため、ここには「就労支援員」と「生活支援員」がいて、「就職」、「住居」、「役所への手続き」などさまざまな「日常の支援」を行います。

主な支援内容は、次のようなことです。

●就業面での支援

・就業に関する相談支援
・就職に向けた準備支援(職業準備訓練、職場実習のあっせん)
・就職活動の支援
・職場定着に向けた支援
・障がいのある方それぞれの障がい特性を踏まえた雇用管理についての事業所に対する助言
・関係機関との連絡調整


●生活面での支援

・日常生活・地域生活に関する助言
・生活習慣の形成、健康管理、金銭管理等の日常生活の自己管理に関する助言
・住居、年金、余暇活動など地域生活、生活設計に関する助言
・関係機関との連絡調整


障がい者雇用をしていると、企業という立場からは、直接関わりにくい「生活面での課題」が生じることも珍しくありません。家庭や金銭的な問題などが出てきたときには、「障害者就業・生活支援センター」と連携して対応やサポートなどを行うことができます。

また、「障害者就業・生活支援センター」が担う役割は、地域により変わります。就労移行支援事業所などの就労支援機関が多くある地域では、主に生活面のサポートを担うことが多いですが、就労支援機関が少ない地域では、就労に関する支援も手厚くされていることもあります。地域の状況に合わせた活用をするとよいでしょう。
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