「リクナビ」低迷、口コミサイト、逆求人型サイトの台頭

「1年を通して最も活用した就職サイト」について、文系における2020年卒学生と2021年卒学生の傾向を比較してみると、2020年卒学生では上から「マイナビ」(38%)、「リクナビ」(27%)、「ONE CAREER」(14%)となっており、2021年卒学生では「マイナビ」(48%)、「ONE CAREER」(15%)、「リクナビ」(13%)となっています[図表3]。「マイナビ」の利用率が10ポイントも増えているのに対して、ここでも「リクナビ」の利用率は前年より14ポイントと大きく減少しており、その結果、「ONE CAREER」に抜かれて2位から3位に後退しています。
第114回  学生の間で活用が増えている「口コミサイト」や「逆求人型サイト」
理系においては、2020年卒学生では「リクナビ」がトップの38%となっていたものの、文系と同様に2021年卒学生では利用率が20%と前年を大きく下回り、2位に後退する結果となっています[図表4]
第114回  学生の間で活用が増えている「口コミサイト」や「逆求人型サイト」
これまで長らく就職ナビの2強を形成してきた「マイナビ」と「リクナビ」ですが、今年は「マイナビ」の独り勝ち状態といってもいいでしょう。リクナビ離れの一因は、昨年8月はじめに報道されたリクルートキャリア(「リクナビ」運営会社)が「内定辞退率」予測データを企業に提供していたことでしょう。内定辞退率の予測データについて、リクルートキャリアは学生に対する告知が不十分だったことから、一方的なバッシングを受けることになりました。この件に関する大学キャリアセンターの不快感はとても強く、2021年卒学生に対するキャリアガイダンスへのリクルートキャリアの参加を断ったり、推奨の就職関連サイトから外したりといった動きが広がったのです。もちろん、学生本人もこの報道は目にしたでしょうから、「リクナビ」に対する信頼感は大きく後退したといえます。

また、就職ナビの補完的に活用されることが多かった口コミサイトがその存在価値を高めるとともに、新興の逆求人型サイトが中位の就職ナビを押しのけて、「最も活用した就職サイト」のポジションをじりじりと確保し始めてきています。

活用理由が各サイトで異なる口コミ系サイト

ここで、ランクインした口コミサイトや逆求人型サイトを推す学生の理由をいくつか見てみましょう。まずは口コミサイトから。

【楽天みん就】
・コロナの影響で選考に遅れが見られる中、周りの就活状況を共有できた点は非常に便利であったから(関西学院大学・文系)
・みんなの評判や意見がリアルタイムで更新されるから(同志社大学・理系)
・過去の面接での質問内容を調べるときによく使った(立教大学・文系)
・周りの選考状況が気になるから。大学が立ち入り禁止になり、友人と話す機会がなくなったので、みん就の掲示板から情報を得るしかなかった(大阪府立大学・理系)
・掲示板で周りの学生の、選考状況を把握できたため。もちろん虚偽の情報も含まれているだろうから、情報の取捨選択はしっかり行った(慶應義塾大学・文系)
・志望企業の過去内定者の志望動機・面接対策などを参考にしました。また、企業の掲示板から既に面接を受けた人の所感や面接についての情報を得たり、自分では知り得なかった情報を得られたため(上智大学・文系)
・他の選考受験者がどこまで進んでいるのかを参考程度に把握するため(東京工業大学・理系)
・不合格がサイレントの場合、みん就を見ることで自分が落ちたのかどうかがすぐに分かった(関西大学・文系)
・最も利用したのはリクナビになるが、選考のために活用したのはみん就(フェリス女学院大学・文系)

【ONE CAREER】
・信頼性の高い経験談が載っているから(京都大学・文系)
・選考ステップや体験談、内定後の流れなどが載っているから(東京大学・文系)
・エントリーシートや面接の対策に最も適した就活サイトだったから(大阪大学・理系)
・ESや面接対策が一番できる。絞り込み検索ができるのがとても良い(立命館大学・文系)
・その企業を実際に受けた方の体験談が見られ、とても参考になったからです。通過率も上がったと思います(法政大学・文系)
・就活体験談、特に面接のレポートが非常に参考になりました。1次面接から最終面接まで、各フェーズでどのような話をするのか、面接対策をする上で必ず参照していました。実際には同じような質問をされることはなくとも、幅広く準備してきたことで、何を聞かれてもいいような状態に仕上げ、安心して面接を受けることができました(東京理科大学・理系)
・スマートフォンから体験記等を見るのに一番見やすく、量も充実していたから(東京大学・理系)

【就活会議】
・就活状況の速報や、実際働いている人の口コミも見ることができて、便利でした(関西大学・文系)
・自分と会社との適性など、詳しい情報が載っているから(明治大学・文系)
・ESと体験記がたくさんあるから(同志社大学・理系)
・会社の評価などを調べるために、就活中も内定先が決まってからもよく利用していた(東京電機大学・理系)
・ベタな就活のイロハや企業傾向をつかむ際に便利だったから(東京大学・理系)

【外資就活ドットコム】
・体験談が見やすい。広告や余計な文字が少なく、検索しやすい(慶應義塾大学・理系)
・利用者が主に早慶で自分の求めている情報に合致していると思ったから(早稲田大学・文系)
・コミュニティで選考を確認した(一橋大学・文系)
・大まかに自分が志望するレベルの企業について、詳細かつ多数の情報があった。また、コミュニティに参加する学生のレベルも相当高いものであったと感じられ、自己啓発の一環としても利用の価値があった(慶應義塾大学・文系)
・高学歴の方の体験記やESを見ることができ、また速報スレッドやインターン・本選考の締め切りなど就職活動を行う上で有意義な情報をたくさん載せているから(青山学院大学・文系)

口コミサイトと一括りにまとめてしまいがちですが、サイトの活用理由は、「リアルタイムの選考状況把握」(楽天みん就)、「過去の体験談やエントリーシート」(ONE CAREER)、「働いている人の口コミや評価」(就活会議)、「コミュニティと参加学生のレベル感」(外資就活ドットコム)とそれぞれ異なります。複数の口コミサイトをうまく使い分けている学生が多そうですね。

次は、逆求人型サイトの活用理由です。

【OfferBox】
・企業からオファーが来るので、他人から見た自分の強みを知ることができ、自己分析を進めやすいから(近畿大学・理系)
・面談に進めるチャンスが多いから(近畿大学・文系)
・ログインするとオファー数が増える傾向にあるため。自分で探すだけでは出会えない企業がたくさんあったため(西南学院大学・文系)
・自分のプロフィールを見た上で採用側がオファーを送ってくれるため、内容の濃い就職活動につながったと思うから(立命館大学・理系)
・ここ経由で内定が出たから(津田塾大学・文系)
・オファーがくる確率が高かったため(摂南大学・文系)

【iroots】
・オファー数は少ないものの総じて質が良く、知らなかった業界や職種のオファーをもらっても話しているうちに相性がいいなと思わされることが多かったから(上智大学・文系)
・スカウトがたくさん来たから(津田塾大学・文系)

こちらは口コミサイトほど、活用理由にサイトの機能や特徴による違いはあまり見られないようです。差別化は、具体的にどんな企業からオファーが来るのか、自分とのマッチングに納得性があるのかなどに落ち着きそうです。

学生が魅力に感じる制度や取り組みが埋もれていませんか?

次に、学生はさまざまな企業の話を聞く中で、企業のどんな制度や取り組みに魅力を感じ、結果的に志望度のアップにつながったのでしょうか。学生のコメントから見ていきましょう。ぜひご確認ください。企業側は、同様の制度があってもわざわざ紹介や説明をしていない項目もあるのではないでしょうか。会社内では当たり前になってしまっている制度や取り組みでも、学生目線に立ってみて、今一度価値を見直してみるのもいいのではないでしょうか。

・ジョブローテーションがあるところや、社員に対して福利厚生がしっかりしているところ(同志社大学・理系)
・説明会の段階から交通費を出してくれる企業は給料などもいいと感じ、志望度が高まりました。また、コロナに対する取り組みをいち早く行っている企業などは、新しいことにたくさん挑戦できる社風だと感じ、志望度が高まりました(関西大学・文系)
・海外大学への社費留学(MBA取得など)(東京農工大学・理系)
・若いうちから裁量権がある会社(横浜国立大学・文系)
・働き方改革を積極的に行っている会社は志望度が高まった(東京都市大学・理系)
・勤務時間を選べるフレックス制度。また、家賃補助に関してはよく見ています(京都産業大学・文系)
・合格後の社員面談のセッティング(京都大学・文系)
・フラットな職場を意識して部長や目上の人も○○さんと呼ぶ(関西学院大学・文系)
・家賃補助が高額(名古屋大学・理系)
・リクルーターが付いて、企業についてすごく教えてくださった。また、その際に聞きたいことがあると包み隠さず教えてくださって、透明性があると感じた。そのため、入社後のイメージがつかみやすく入社したいと強く思うようになった(慶應義塾大学・文系)
・就活生へのアドバイスを込めた結果通知(芝浦工業大学・理系)
・コロナ禍でテレワークなどの在宅ワークを積極的に採用している企業にはとても良い印象を持った(近畿大学・文系)
・2時間ほど休める制度(早稲田大学・文系)
・ドレスコードフリーや時短促進制度(東京都市大学・理系)
・多様な人材を集めるために、新しい変わったインターンシップを行っていたこと(近畿大学・文系)
・エントリーシート提出から面接までの間に、社員さんと関わる機会を多く設置してくれたこと(慶應義塾大学・文系)
・世界トップを指向した研究開発(東京大学・理系)
・挑戦を重んじる社内風土。研究開発費の割合の高さ(北海道大学・理系)
・社内公募での新規部署や事業の立ち上げ制度(日本大学・文系)
・環境問題に取り組むボランティア(立命館大学・文系)
・研修制度が充実しているところがかなり魅力的に見え、大して事業内容に興味なかった会社でも志望度が上がった(日本大学・理系)
・社内に無料のカフェや食堂があったこと(法政大学・文系)
・フレックス制度やテレワークを積極的に取り入れていること。女性が働きやすくなるような産休・育休制度が整っていること(東京農工大学・理系)
・3年ごとにジョブローテーションがあるため、モチベーションを維持できる(中央大学・文系)
・ブラザーシスター制度(お兄さんお姉さんのように親身になって相談できる先輩が近くにいながら仕事を学べて安心できる)(愛知淑徳大学・文系)
・転居を伴う転勤が少ないこと(立教大学・文系)

学生に不評な「みなし残業代」、誤解もありそう

最後に、逆に学生が引いてしまう制度や取り組みについても、学生のコメントから見ていきましょう。

・事前にみなし残業代が20時間分以上入っているところ。残業が多いのかなと感じたため(京都産業大学・文系)
・みなし残業代制度を取り入れている企業や、変形労働時間制を取り入れている企業は志望度が下がった(近畿大学・理系)
・インセンティブ制度、みなし残業代制度がある会社(広島大学・文系)
・ジョブローテーションをあまりしていないところや、海外展開をしていないところ(同志社大学・理系)
・コロナの状況下でリモートワークがほとんど推進されていない(東京都立大学・理系)
・Web面接を活用しない、緊急事態宣言などへの対応が遅れている(名古屋市立大学・文系)
・住宅手当が、通勤時間が長い人にしか出ないこと(東京農工大学・理系)
・同族経営の企業(同志社大学・文系)
・「体育会系」を前面に打ち出していたこと(お茶の水女子大学・文系)
・連絡が遅い会社は志望度が下がりました(日本女子大学・文系)
・全国転勤あり、年間休日105日以下(関西学院大学・文系)
・エントリーシート締切日の大幅な延長(芝浦工業大学・理系)
・人事面談に参加していたにもかかわらず、コロナで中止になった後、Web面接で再開された際にまた一からやり直し。不公平さと不親切さを感じた(慶應義塾大学・文系)
・エントリーシート通過から面接まで1カ月以上空くにもかかわらず、全く接触がなかったこと(慶應義塾大学・文系)
・雰囲気が堅苦しいWeb座談会(岡山大学・理系)
・女性の管理職が少ない(立命館大学・文系)
・最終面接が、対面面接やWebのライブ面接でもなく、録画面接になったこと(駒澤大学・文系)
・完全成果主義(大阪府立大学・文系)
・精神論が多い社風の場合はエントリーをやめました(慶應義塾大学・文系)
・裁量権を持って仕事をすることができなさそうな雰囲気。社員の方の意識が低いこと(岡山大学・文系)
・インターン、説明会などの質疑応答の際、企業にとって都合の悪い質問は婉曲的な表現で巧みに回答を避けている(大阪大学・文系)
・このような情勢の中、テストセンターでの受験を必須とする企業(千葉大学・理系)
・初任配属地が全国各地でどこになるか分からない(同志社大学・文系)
・最初の赴任先がランダム、仕事優先を好む人が多い会社(横浜市立大学・理系)
・社訓を毎朝読んでいる(岡山大学・理系)
・部長クラスの人に昔の風潮が残っているのを感じて印象が悪くなったことがあった(中央大学・理系)

学生のコメントで最も多かったのは、「みなし残業代」「残業代固定」、次いで「ジョブローテーションが(少)ない」「リモートワークやオンライン化が進んでいない」です。「住宅手当(補助)」を気にする学生も少なくありません。みなし残業代は、本来は毎月一定額(一定想定時間分)を支払うと約束する制度で、仮に想定時間に満たなくても一定額の支払いは保証され、逆に時間数を超過した場合にはその分を追加で支払われなければならないはずで、社員にとってはそんなに不利な制度ではないはずです。学生の間では、「みなし残業=残業代固定(想定時間を超過しても追加の支払いなし)」と伝わっているのではないかと想定できます。こういったワードの説明も、学生には丁寧にしてあげる必要がありそうですね。
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