第5回 青山学院大学:進路・就職センター「ONE TEAM」への意識変革と柔軟で創造的な支援プログラムによる、誰も取りこぼさない進路・就職支援へ

これからの新卒採用を考える〜大学キャリアセンターインタビュー〜

青学は表参道に位置する都心型大学だ。表参道ヒルズは複合商業施設だが、観光スポットでもある隣の渋谷駅周辺は大型再開発が進行中だ。学生にはおしゃれなイメージがあるが、青学生の特徴はファッションセンスだけではない。駅伝競技で圧倒的な強さを見せ、今年の箱根駅伝でも往路と復路の完全優勝を果たしている。そんな青学のキャリア支援はどのような特徴があるのだろうか? 青山キャンパスの進路・就職センターを訪ねてみた。

ゲスト

  • 祖父江 健一 氏

    祖父江 健一 氏

    青山学院大学
    進路・就職センター 進路・就職部長

    1959年名古屋市生まれ。愛知県滝高等学校出身。1977年青山学院大学経済学部入学。大学生活の4年間は縦社会の本学男子寮で、約160名の仲間と暮らしつつ、ヨット部に所属し週末を逗子の合宿所で過ごす。1981年学校法人青山学院入職。男子寮副寮監、情報科学研究センター、進路・就職センター、中等部事務長を経て2018年より現職。日本キリスト改革派新座志木教会員。

6年ぶりの進路・就職センター復帰で感じた変化

2006年10月から2013年3月まで、私は進路・就職課長として学生のキャリアを支援していましたが、その頃の就職状況は大変厳しいものがありました。2008年9月にリーマンショックが起き、立ち直りかけたときの2011年3月、東日本大震災が発生しました。当時の大卒求人倍率は、2011年卒1.28倍、2012年卒1.23倍、2013年1.27倍です。エントリー数は学生1人あたり、平均60〜80社だったでしょうか。超売り手市場の2020年卒1.83倍と比較すると、当時の就職状況がいかに厳しかったか、ご存知の方も多いと思います。

当時、リーマンショックの影響から卒業間際の学生に対して、企業の「内定取り消し」が大きな社会問題となりました。多くの日本企業が経営に窮し、内定を取り消したのです。本学でも内定を取り消された学生への救済処置として、当時の学長にお願いをして「卒業延期制度」を策定いただくなど、学生を救済するための対応に追われました。その頃、本学は首都圏私立大学の就職支援に携わる関係者で構成される「大学職業指導研究会(通称:大職研)」の会長校であったことから、大学就職部の担当職員と頻繁に連絡を取り合い、互いに情報共有をしつつ、助け合いながら乗り切った経験は、私の大きな財産となっています。

2013年4月、私は青山学院中等部の事務長として異動となりました。突然に学生のキャリア支援から離れることになり、初日は何とも沈んだ気持ちで中等部事務室へ出勤したことを憶えています。後日分かったのですが、学院プロジェクトとして中等部校舎建替事業が進行しており、中等部の新校舎竣工を成功に導くことが、私に与えられた使命でした。しかし、中等部事務長としての職務は、これまで大学の世界しか知らなかった私には不安がありました。

青山学院の各設置学校(高等部、中等部、初等部、幼稚園)は大学付属ではなく、各学校が並列した存在であるため、総務・経理・教務・施設など学校経営の根幹に関わる業務は、事務長の視点で理解・対応することが求められたからです。そのとき、あらためて気付かされたことは、(1)規則理解の大切さ、そして、(2)一緒に働くメンバーの意識 でした。

それから、満5年間を中等部で過ごし、ほぼ本校舎が出来上がった昨年6月に、再び進路・就職センターに、今度は進路・就職部長として戻ってきました。結果的に、中等部事務長としての職務経験は、私にとり本当に良い学びの場となりました。

進路・就職センターへの復帰早々、就職活動に大きな変化が起きていることを感じました。キーワードで言えば、「早期化」「インターシップ」「複線化」です。これまでは年間スパンで計画していた就活イベントを抜本的に見直し、現在は半期6か月のスパンで従来のキャリア支援を根本的に見直し、新しいプログラムをスタートさせようとしています。

形骸化している就活スケジュール。3月の学内企業説明会に学生が集まらない

まず、「早期化」についてです。経団連は採用指針を廃止しましたが、政府がこれまでの日程を守ることを言明、新卒採用は、採用広報開始日(3月1日)と採用選考開始日(6月1日)が定められています。

しかし現在、このルールは事実上の形骸化に至っており、採用活動は年々早期化し続けています。3年生の3月時点ですでに就活を終えている学生や、最終面接の段階に入っている学生も多く、3月1日以降に学内で合同企業説明会を開催しても、近年では学生が集まらないのが現状です。

こうした現状を踏まえ、従来型スケジュールを基準とした就活支援ではなく、低学年からの就活直結型ではない、キャリア教育プログラムの実施を決めました。

年内の11月〜12月に「学内企業研究会」を開催

従前の縦割りの業界研究会に変わり、本年11月〜12月の毎週水曜夕方と土曜午後、授業に支障が出ない時間帯に、計11回開催したのが、「学内企業研究会」です。

この「学内企業研究会」には2つの特徴があります。1点目は、全学年を参加対象としたこと(学生にはスーツではなく私服で参加しても大丈夫としています)。2点目は、「働く楽しさ、面白さを知ってもらうこと」に重点を置いている点です。これまでの「業界・企業研究会」などでは、今後の就活に直接役立つ情報を得てもらうことを目的にしていました。

しかし、「学内企業研究会」では1・2年生からも認知度が高く、仕事内容をイメージしやすい有名企業やB to C企業に敢えてご参加をお願いし、仕事の魅力・楽しさ、仕事を通じた社会への貢献を説明していただいています。低学年の学生には、こうした活きたお話を聴くことや、企業と学生との双方向でのディスカッション・質疑応答などを通して、低学年からキャリアの意識や社会で働くことへのモチベーションに繋げ、高めていってほしいと願っています。世の中には多様な仕事が存在するということを、学生には知っていただきたいです。

1・2年生が興味・関心を持つトレンドキーワードでキャリア教育へ繋げる

企業様の御協力をいただき、新しい切り口でのキャリア支援プログラムにも取り組みを始めました。某航空会社の協力で実施した「ホスピタリティ」講座では、航空業界だけではなく、東京〇〇〇ランド、外資系の外食産業と外資系ホテル、対して、石川県の超高級旅館などの事例などを通じて「おもてなし」を比較研究するという内容です。全8回の出席を必須条件で募集をしましたが、40名の募集に対して倍の80名近い応募があり、単位取得には関与しないにも関わらず、学生の関心の高さが伺えました。一方向的な講座ではなく、学生が楽しく学びとれる講座という視点で、時間の半分をワーク形式による双方向講座で企業様にはお願いをしています。
また、新年度4月からは、某大手シンクタンクの若手社員が講師を務めるビジネスキャリア講座を、8〜10コマで実施予定です。「2030年の未来予測」「環境問題」「高齢化社会」「電子マネー」など、若い学生であれば誰もが興味・関心を持つキーワードを切り口として、ビジネスとの接点を語っていただきます。講座・ワークを通して本学の若い学生ならではの視点・発想から、ビジネスチャンスの可能性を含む話題が溢れ出てくれば、企業・大学・学生の「三方よし」の取り組みになるのではと、大いに期待をしています。

世の中の全てのことがらが、仕事に繋がっているということを学生には知っていただきたいです。

1年間の相談件数は、計 約17,000件(青山・相模原)

次に、学生の「複線化」についてです。以前は就職ナビサイトを利用する学生が大半でしたが、近年は逆オファー型、新卒エージェント、リファラル採用など、学生と企業との接点は多様化しています。

また、応募数にも大きな変化が起きています。リーマンショックの時期から、3.11東日本震災までの2011年頃は、1人平均約80社にプレエントリー、そこから最終選考までは、ようやく約10社程度に辿り着き、最終選考を受けて内定は1社か2社というのが一般的な就活スタイルでした。現在では、エントリー数を最初から10〜20社に絞り込んでしまうスタイルも増えているようです。そして、学生だけではなく、企業側の選考手法も多様化・細分化が進んでいます。

このように、就職活動・採用活動の個別化の流れから、進路・就職センターでは一人ひとりの学生と接する個別相談に、これまで以上に力を注いでいます。年間の相談件数は、青山と相模原キャンパス、併せて約17,000件。本学の1学年当たりの学生数は、文系主体の青山キャンパスが約3,000名、理系・文理融合主体の相模原キャンパスが約1,500人、合計約4,500人です。就活している3年と4年の学生数は7,000人ほどなので、1人平均約2〜3回は進路・就職センターの相談窓口を利用していることになります。他大学と比較してもかなり高い利用率です。

あくまで授業優先で。授業日と重なるインターシップは学生に情報提供をしない

最後に「インターシップ」です。約10年前、インターンシップは数自体が少なく、あっても1カ月以上の長期インターシップでした。現在のような1dayインターンシップは皆無でした。しかし、この数年で1dayインターンシップが主流になっています。数年前までは、サマーインターンシップ、ウィンターインターンシップは授業を阻害しない、長期休暇中に実施されていましたが、現在では授業実施日でのインターンシップが、当たり前のようになってきています。

大学は、就職活動の場ではなく、あくまでも学問を追求する場、部活・ボランティア活動を通して、学生自身が考え方を深め、自身を成長させる場です。こういう状況から、授業日に実施するインターンシップについては、進路・就職センターのWEBページに掲載しないことにしました。学業を優先とする大学の一部署である進路・就職センターとしては、授業期間に実施されるインターンシップを学生に告知・推奨することはできないからです。

本学学生の良さは、素直さと社会人基礎力を兼ね備えたバランス

本学の学生の特徴を私なりに整理してみると、まず素直なことです。私自身も卒業生の1人ですが、相手の話しを聴ける素直な学生が多く、社会人になっても、まだ伸び代があると感じています。

また、ここ数年で急激にシェアを伸ばしている新卒採用のエージェント会社が、大学別に学生の能力を調べた結果、青学生の社会人基礎力は国内でもトップクラスのレベルであることが分かりました。社会人基礎力とは、その表示のとおりに社会人として必要な、「前に踏み出す力(アクション)」「考え抜く力(シンキング)」「チームで働く力(チームワーク)」のことです。青山・表参道というキャンパスの立地から、本学学生が華やかで人目を引くとうイメージが1人歩きをしている感があります。素直さと社会人基礎力とを兼ね備えたバランスの良さ、意外と泥臭く知らないところで努力している姿は、本学学生の素晴らしい特徴といえるでしょう。

「来訪企業」は「青学生Welcome企業」として積極開示

本学学生に採用の機会を与えていただける企業様は、恐れ入りますが、まず進路・就職センターを訪ねてみてください。ご来校いただければ、私たちより企業理念、事業内容、卒業生の活躍など、ヒアリングをさせていただきます。

また、学生に公開する求人企業票には、「来訪企業」というスタンプを押し、「青学生Welcome企業」として、掲示板はもちろんのこと、学内の就職支援システムに積極的に情報開示をさせていただきます。わざわざキャンパスまで足を運んでくださる企業は、「本気で青学生を採用したい」企業様との考えから、そのような対応を取らせていただいております。

学内セミナーにお招きしている企業は、3月の学内合同企業説明会(1週間)が約300社、11月、12月の学内企業研究会(本年は11回)が約110社です。これまでの採用実績と、何度かお目にかかってのお互いの信頼を深めることができました企業様を、優先的にお招きしておりますが、これも毎年の固定ではありません。

今後とも、本学学生との良きご縁を賜わりますこと、心より願っております。ありがとうございました。
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著者プロフィール

キャンリクフォーラム事務局

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