AIの活用は応募意欲を減退させる

今回の調査では、「AIの活用の是非」だけでなく、志望企業が「選考にAIを活用していることが分かったら、応募に影響するか」という質問も投げ掛けてみました。恐るべき結果となりましたので、ご紹介します。
まずは、「エントリーシートの書類選考にAIを活用していることが分かった場合」です[図表5]。「応募意欲がより高くなる」あるいは「変わらない」とする学生は、文系で62%、理系で73%を占めますが、「応募意欲が低くなる(応募はする)」とする学生が文系で32%、理系で23%、さらには「応募をやめる」とする学生が文系で5%、理系でも4%となりました。導入の是非では、「賛成である」とした学生が文理ともに2割ほどいましたが、「応募意欲がより高くなる」ほどのプラス要因にはならないばかりでなく、「反対である」とした学生よりも多くの学生が「応募意欲が低くなる(応募はする)」「応募をやめる」と回答していることになります。
第88回 “AI採用”を実際に導入した企業は?そして気になる学生の声は
もう一つの「面接にAIを導入していることが分かった場合」では、もっと深刻な結果となっています[図表6]。「応募意欲がより高くなる」あるいは「変わらない」とする学生は、文系で53%、理系で60%に対し、「応募意欲が低くなる(応募はする)」とする学生が文系で34%、理系で29%、さらには「応募をやめる」とする学生が文系で13%、理系でも10%となりました。
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エントリーシートの書類選考にAIを活用しているかどうかは、学生にその旨を告知しない限り分からないことですが、面接でのAI活用はそういうわけにはいきません。通常の面接であれば生身の面接官が対峙するわけですが、AIを活用した面接の場合には、PCやスマホに向かってAI面接官の機械音に対して応答することになりますから、もはや隠しようがありません。地方学生の場合には、時間や交通費の面でメリットを感じることもあるでしょうが、都市部の学生にとってはあまりメリットを感じることもなく、評価基準も不明確なまま、ただAIに選別されるという味気なさだけが残ることになります。
採用活動におけるAIの活用は、先進的な企業のイメージを醸成することにはなるかもしれませんが、志望学生の応募意欲を減退させる危険性をはらんでいることをよく認識しておく必要がありそうです。

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