AIは学生にどう受け止められているのか

一方の学生はこれらの動きをどう捉えているのでしょうか。HR総研が楽天「みん就」会員を対象に6月下旬に実施した「2019年卒就職活動動向調査」の結果を基に見ていきましょう。
最初に、エントリーシートの書類選考にAIを活用することの是非についての意見です[図表3]。文系・理系ともに半数以上の学生は「どちらともいえない」と態度を保留していますが、「賛成である」と回答した学生は文系で20%、理系で21%にとどまり、いずれも「反対である」とする学生のほうが上回っています。
それぞれの理由を抜粋して紹介します。
第88回 “AI採用”を実際に導入した企業は?そして気になる学生の声は
【賛成】
・コピーアンドペーストなどをふるい落とす効果があると思うため(京都大学、理系)
・エントリーシートを確認する時間などが平等になると思う。ただしAIが落選させたESは人の目でもう一度見てみる必要はあると思う(九州大学、理系)
・人間の偏見や偏った知識より、客観的なデータに基づいて適職を判断するほうが安全だと思うから(大阪大学、理系)
・採用に限らず、限られたマンパワーで仕事をするに当たって自動化はどの分野でも進めていかなければならないから(名古屋大学、理系)
・正直なところ、エントリーシートをすべて読んでいるとは思えないので、AIに頼ってもいいと思う(九州大学、理系)
・エントリーシートの精査に時間をかける必要はないと思うし、社員は実際に学生と接触する時間を増やしたほうが学生側も企業の雰囲気を感じ取りやすくなると思うから(早稲田大学、文系)
・企業の選考が効率良くなることで、面接などの選考に時間を掛けられるメリットがあると思ったから(上智大学、文系)
・早く判定が出そうだから(日本大学、文系)
・今後AIが筆頭する社会になり人々とAIの共存は不可避で、うまく活用することは現実的であると思うから(二松学舎大学、文系)

【どちらともいえない】
・何を判定するか分からないから、良いかどうか何とも言えない(名古屋大学、文系)
・AIに評価されるのは気持ちいいことではないが、AIに落とされるようなESを書く側にも問題があると考えるため(京都大学、文系)
・全員を一律に見ることができるし、スピードアップにはつながると思う。ただ、現在のAIが質問の一つに対する答えが素晴らしかったから、他が悪くても合格、といった判断ができるかは疑問(京都大学、理系)
・エントリーシートを足切りと捉えている企業であれば、AIを利用するのも選択肢の一つであると思う(早稲田大学、理系)
・大勢の学生から、自社に合う学生を見つけ出したい人事の気持ちも分かるが、そのような人と人のつながりを大事にしていない企業を私は受けたいとは思わないため(筑波大学、理系)
・企業にとっては効率的だとは思うが、学生からすると本当に評価されているのか疑う(南山大学、文系)

【反対】
・社員の方がしっかりと目を通して、企業に合う人材を選定してほしい(大阪大学、文系)
・AIには志望度は伝わらないと思う。そもそもこちらが手間をかけて書いたエントリーシートを読みもせず、機械に通して終わり、とはあまりにも失礼(大阪大学、文系)
・何を判断基準にしているのか分からないし、こちらが一生懸命書いているものをないがしろにされた気分だから(早稲田大学、理系)
・膨大な量のエントリーシートに目を通すのは大変だと思うが、人生の大きな転機をAIにより判断されるのは納得がいかない(静岡大学、理系)
・受ける側からすると、熱意を持って書いた思いがそこの社員に届くことすらなく落とされてしまうかもしれないと考えると、あまりにもひどい(立教大学、文系)
・やはり就活は出会いなので人間らしい感情を持ってしっかり判断すべきだと思う(日本女子大学、文系)

学生の書いた理由を読むと、それぞれに納得してしまいます。「こちらが手間をかけて書いたエントリーシートを読みもせず、機械に通して終わり、とはあまりにも失礼」とのコメントには、「学生にしてみればそうだよね」と思わずにはいられません。企業の採用担当者との接点が多い仕事柄、どうしても企業側の視点でものを考えがちではありますが、学生の「気持ち」にも配慮することも極めて大切であると思います。
今年のゴールデンウィーク中に、ある企業のエントリーシート提出者への対応がネット上で話題になっていたのを読まれた方も多かったのではないでしょうか。ある企業とは、カゴメです。これは今年に始まったことではなく、10年以上前から行われていることではありますが、同社にエントリーシートを提出した全員に、エントリーに対する感謝のメッセージとともに同社の商品を送付しているというものです。「就職先として興味を持っていただきましたこと、想いをこめてエントリーシート・履歴書を作成いただいたことに心から感謝いたします」というメッセージは、就活生の心に響いていることでしょう。

学生に不評な面接でのAI活用

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