冬期インターンシップは1dayタイプが圧倒的

 ここからは2018年新卒採用へ向けた動きを見てみましょう。まずはインターンシップについてです。インターンシップの実施時期には二つの山があります。8月・9月のサマーインターンシップと1月・2月のウィンターインターンシップです。これまでの調査では実施企業の割合比較にとどまっておりましたが、今回はそれぞれの時期に実施するインターンシップのタイプ(期間)を聞くことで、その違いを明らかにしました[図表]。

第70回 大変革する人事の世界、2017年新卒採用の反省と今後
 サマーインターンシップの実施期間を見てみると、最も多いタイプは「1週間(5日間)タイプ」で35%もあり、「2週間タイプ」も25%と4分の1の企業が実施しています。経団連が指針の手引きにおいてインターンシップの期間を「5日間以上」と規定していることや、大学で単位認定されているインターンシップの多くが「2週間タイプ」であるためです。約2カ月にわたる夏期休暇を利用するということももちろんあります。

 実施している内容を見ても職場体験型が多くなっています。
・開発部門に配属して、社員を実際の指導者に付けて、社員が行う開発・実験を担当してもらいました(1001名以上、メーカー)
・新規エンジンの開発体験(1001名以上、メーカー)
・マナー研修、コンプライアンス研修、開発演習、プロジェクト実習、成果発表会(1001名以上、情報・通信)
・職場体験、OBによる業務説明、会社・工場見学、製品試食会(1001名以上、サービス)
・1日目:業務概要の説明および施設見学、2~4日目:現場実習、5日目:質疑応答、親睦会(301~1000名、サービス)
・建築設計実習・測量(2日間)、建築工事作業所施工管理補助(3日間)(301~1000名、建設)
・グループワーク→成果発表、就職活動に向けた日次イベント、営業体験等(301~1000名、メーカー)
・社内各部門に実際に配属し、業務サポートまたはシステムをさわって簡単な疑似業務を行う(300名以下、情報・通信)
・プログラム未経験者向け:androidアプリ制作、プログラム経験者向け:IoTで居住空間を豊かにするシステムの開発(300名以下、情報・通信)
・営業同行、現場見学、オリエンテーション(目的と目標の違いなど)(300名以下、運輸・倉庫)
・1週間の就業体験。打ち合わせや企画会議への参加、顧客訪問への同行など、営業職の体験をしてもらった。半日型、1日型では仕事の疑似体験を、ワークを通してやってもらった(300名以下、サービス)

 これに対して、ウィンターインターンシップの予定を見てみると、「1週間(5日間)タイプ」は13%、「2週間タイプ」に至ってはゼロという結果になりました。圧倒的に多いのが「1日タイプ」で50%、「半日タイプ」も40%に達します。本来のインターンシップは、学生のキャリア支援のための社会貢献活動であり、採用活動とはリンクさせないとされているものの、サマーインターンシップとウィンターインターンシップでは、同じ「インターンシップ」をうたいながらも全く異なるものであることが分かります。
 当然、実施予定の内容も変わってきます。「1日タイプ」や「半日タイプ」では、業界研究、企業研究、座談会、ワークなど座学が中心となり、職場体験の要素はなくなってきます。採用活動での会社説明会やセミナーに近いものが増えています。
・品質管理の演習を少しやって、後は会社のアピール(1001名以上、メーカー)
・ワークショップ形式(ディスカッション)(1001名以上、メーカー)
・先輩社員との座談会、職場見学(1001名以上、情報・通信)
・業界動向、自社PR、社会人の基本など(1001名以上、商社・流通)
・会社説明、ストアコンパリゾン(競合店比較調査)(301~1000名、サービス)
・業界研究、企業研究、ワーク、若手社員との座談会(301~1000名、商社・流通)
・仕事の疑似体験をワーク形式で実施する予定(300名以下、サービス)
・業界説明、コーディネート体験(300名以下、商社・流通)
・マーケティングをテーマにしたワークショップ(300名以下、マスコミ・コンサル)

インターンシップをめぐる新たな動き

 こうした中、1月11日の日本経済新聞の報道によると、文部科学省、厚生労働省、経済産業省は、これまで採用と切り離すべきとしていたインターンシップでの学生の評価を採用に生かせる案を検討しているとのこと。これは極めて大きな動きです。これまでも内閣府を中心に、中小企業の採用支援を目的として、中小企業に限定してインターンシップの採用活動への利用を認めようとする案が検討されたりしたことはありましたが、今回の改革案は企業規模を限定してのものではなく、すべての企業が対象となります。改革案は、経団連、日本商工会議所、経済同友会への提示も済んでおり、各団体との調整を急ぐとされています。
 実際には、現在でもインターンシップはすでに採用活動に何らかの形で利用されているケースが大半であり、単に現状を追認しただけではないかと思われる方もいるかもしれません。しかし、今回の改革案が意味するものはそれだけにとどまりません。公に採用活動への利用を解禁するとなると、インターンシップの開催時期に制限がないこと、インターンシップ参加者はその年度の就活学年の学生だけではないことを考えれば、現在の経団連の指針は実質的に無力化し、「採用活動時期の完全自由化」「採用活動の通年化」につながるものになります。現に経団連は、インターンシップ採用が解禁になった場合には、指針の廃止を検討するとしています。

 採用活動も民間企業の経済活動の一部であると考えれば、「指針の廃止=採用活動時期の完全自由化」は本来あるべき姿かもしれません。規制があること自体がおかしいわけですから。ただ、「守られないスケジュールであったとしても、何らか目安となるべき期日は必要である」と考えている採用担当者のほうが多いのが現実です。採用活動時期の完全自由化は、採用活動のヤマ場とされる時期もなければ、現在10月1日以降とされている内定解禁日すらも当然なくなります。採用活動が前倒しされ、長期化することは必至ですし、内定者フォローに至っては入社式まで続ける必要も出てきます。また、複数年次(複数年度の入社者)の採用活動が並行して行われることにもなります。採用担当者の負荷は現在の比ではなくなるでしょう。体力のある大手企業はまだしも、中堅・中小企業にとっては大変な変革になります。
 昨年12月、経団連は、毎年のようにスケジュールが変更されると混乱を招くとの判断から、2018年卒採用同様、2019年以降も「3月1日 広報開始、6月1日 選考開始」の採用スケジュールを数年は続ける意向であると報道されたばかりだというのに、今回の3省による改革案は、早ければ2019年入社の採用から適用になるとの報道になっていました。仮にそうだとすると今年のサマーインターンシップから採用連動が解禁ということになってしまいますので、それは少しばかり短兵急かと思われます。

 こういった報道があってあらためて考えてみると、経団連による指針や、かつての倫理憲章、就職協定というのは“必要悪”と言ってもいいかもしれませんね。

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