その考え方や今後の可能性などについて、即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」や若手向けレコメンド型転職サイト「キャリアトレック」を運営する株式会社ビズリーチの執行役員、関 哲氏にお聞きしました。
3回シリーズの第1回となる今回は、採用マーケティングが注目されている背景について、お考えを伺います。
(インタビュアー:HRプロ編集部)
今後さらに難しくなっていく優秀人材の確保
————少子高齢化、グローバル化などの影響により、企業の人材採用は、今後ますます重要かつ難しいものになると見られています。自社の採用に関して課題があると捉え、何らかの手を打つ必要があると考える企業も多いようです。企業の採用を取り巻く最近の状況をどのようにご覧になっていますか。関:このところ、キャリア採用の市場が非常に伸びており、優秀な人材が転職することが日本でも徐々に定着しつつあります。そうした中で、企業経営にとっても、「待ちの姿勢」ではなく「攻めの姿勢」つまり、求職者にこちらからアプローチすることで優秀な人材をいかに獲得できるのかが、非常に重要になりつつあり、積極的に取り組まれる企業が増えていると感じています。
————企業が主体的に採用活動に取り組む、ダイレクト・リクルーティングが広まってきているということですね。
関:はい、国内でも急速に広がっていると感じています。ただ、その中でも「優秀な人材を採用するために何をすべきか?」というプロセスの見直しを常に行っていかないと、組織全体として採用力を発揮しつづけることが難しくなっていくと考えています。
例えば、会社としてのビジョンが組織に浸透しておらず、個々人から発せられるメッセージなどに統一性がない場合、人によって異なる情報を発信してしまったり、面接が進んで会う人が変わると言うことも違ってしまったりということも起こります。
また同時に、求職者が仕事に対するニーズの多様化や、転職活動における情報源の多様化していますので、企業側も情報発信のしかたを変化させて行く必要があると感じています。
マーケティング発想による採用から成果が生まれている
————優秀な人材を採用するためのプロセスをあらためて見直す必要性が認識されてきたと。関:そうした背景から、最近、海外ではマーケティングの考え方に基づいた「採用マーケティング(Recruitment Marketing)」というキーワードが注目を集めています。これは自社の商品やサービスを顧客に購入してもらい、使い続けていただくためにマーケティング活動を行うのと同様に、採用活動においてもマーケティング発想による採用戦略の立案や組織づくり、オペレーション、ツールの導入などを行おうというもので、今後、日本にもその動きが広がっていくと見ています。
————日本の企業で人事・採用に携わる方々には、マーケティングというと「畑違いではないか」と、少しとっつきにくい印象があるかもしれませんが。
関:そうかもしれません。しかし、実は採用活動にはマーケティング活動と似た部分が多いのです。
マーケティングは、自社の製品やサービスを使ってくださる可能性のある方、満足していただける方は誰かと考え、その方々に振り向いていただくためのメッセージを様々な手段で届ける活動です。
一方、採用活動では、世の中のビジネスパーソンの方々の中で、自社に入社すると活躍できそうな方に、いかに正しくメッセージを伝え、こちらを振り向いていただくかが重要です。
ターゲットとすべき人にいかに適したメッセージを届けるかという意味では、非常に似通った活動だと思います。特に母集団形成のプロセスに関しては、マーケティングの考え方や手法を取り入れたことで、これまでの課題が改善できたという例をよく聞きます。
私自身、ビズリーチや「キャリアトレック」のマーケティングに関わってきましたが、その経験からもマーケティングと採用活動には似通った部分、採用活動に活かせる部分が多いと感じています。
採用マーケティングは海外HRの注目トレンド
————採用マーケティングへの取り組みが先行しているという海外では、今、どんな状況なのですか。関:HRテクノロジーに関する世界最大級の国際会議・展示会として知られる「HRテクノロジー・カンファレンス」がアメリカで毎年開催されています。昨年は特に、「採用マーケティング」というテーマが盛んに取り上げられ、注目が集まっていました。
そこで感じたことは、採用活動のターゲットが、今転職を考えている「顕在層」から、いわゆる「潜在層」に拡がってきていると言うことです。優秀な人材をぜひとも採用しようとすると、現在転職を考えている人だけではなく、「まだ具体的に考えていないけれど、今後のキャリアを考えると、もっとやりがいのある仕事があれば話を聞いてみたい」という人にも、自社のメッセージを届けられるようにしなければならない。
となれば、リーチする手法の再考や効率性の向上が必要です。
そのため、潜在層まで含めた採用のターゲットに対し、「どの様な手段を使ってアプローチするのか?」「どこにどれだけ予算をかけ、本当に必要な人材の採用に繋がっている部分により効率的にリソースをかけるにはどうするか?」という視点から、採用活動のプロセス全体の可視化が必要になります。
「HRテクノロジー・カンファレンス」では、そうしたことにうまく対処できる切り口として、採用マーケティングに基づく手法が数多く紹介されていました。
————人事・採用に携わっている方々に向けてメッセージをお願いします。
関:ぜひ、採用マーケティングと聞いて、よくわからないと敬遠したり、一過性の流行だろうと見逃したりしないでいただきたいですね。採用に力を入れていらっしゃる企業は、求職者の応募を待つのではなく、こちらからアプローチしていく取り組みをすでに行っている場合が多いと思いますが、まだ優秀な人材が採用しきれていない、あるいは、応募して面接には来ていただけるけれども、なかなかそこから採用に至らないというとき、それまでの取り組みをさらに推し進める一つの方法として採用マーケティングの効果を期待できると考えています。
————HRサミット2016では、採用マーケティングをテーマにご講演をいただきます。どのような内容になりますか?
関:海外の採用トレンドをはじめ、採用マーケティングの考え方や手法について詳しくお話しするほか、採用マーケティングに基づいた事例についてもご紹介します。面白そうだなと思われた方は、お気軽にご参加いただきたいと思います。
————今日はありがとうございました。
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