激化する人材獲得競争に勝ち抜くため、先進的な採用戦略を推進する多くの海外企業が取り入れている「採用マーケティング」。日本企業の中でも、消費者マーケティングの考え方を採用に応用する採用マーケティングを実践し、攻めの採用を積極的に行っているのが、インターネットサービスを中心に多様な事業をグローバルに展開する楽天です。

注目されるこれからの採用手法、採用マーケティングを掘り下げてきた3回シリーズ最終回の今回は、即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」や若手向けレコメンド型転職サイト「キャリアトレック」を運営する株式会社ビズリーチの執行役員、関哲氏をインタビュアーとして、楽天株式会社のグローバル人事部採用推進課アシスタントマネージャー、田平和之氏にお話を伺いました。
第3回 攻めの採用を国内・海外で展開する楽天

世界規模でのビジネス展開を目指し、グローバル採用を推進

関:昨今、企業のキャリア採用においては、職種を問わず人材獲得競争の激しさが増していますが、その中で、新しい採用の手法として採用マーケティングがクローズアップされてきています。

その背景には、これまでなら現時点で転職を考えている「顕在層」のみをターゲットとして採用活動を行えば優秀な人材を獲得できていたのが、次第に難しくなり、将来、転職を考えるかもしれない「潜在層」までターゲットが広がってきたことがあると思います。潜在層まで含めた広いターゲットに対し、いかに働く場としての自社を知っていただき、採用していくかが重要になり、そこを効率化するため、消費者マーケティングの考え方を取り入れた採用マーケティングの手法を使おうとされる企業が増えていると感じています。

今日は、日本企業の中でも数少ない、これだけの規模まで成長されたベンチャーであり、かつグローバルで採用を行っていらっしゃる楽天さんにおいて、どのように採用マーケティングを実践されているのかをお聞きしたいと思っています。まず、採用のアウトラインから教えていただけますか。

田平:当社では、ビジネス職とエンジニア職に分けて採用活動を行っており、ビジネス職の新卒と中途の採用人数の比率は約4対6となっています。エンジニア職では2015年に新卒採用の枠組みを廃止したため、新卒・中途に拘らず通年採用を行っています。また、当社は「グローバルイノベーション カンパニー」をビジョンに掲げ、世界規模でビジネスを展開することを目指しているため、採用活動もグローバルに行っています。現在、ビジネス職の新規採用に関しては、外国籍社員の比率が10〜15%ですが、エンジニア職の新規採用では8割以上が外国籍社員です。

採用ブランディングや採用チャネルの見直しと強化を図る

関:採用において、グローバル化のプライオリティが非常に高いと。そこで、採用マーケティングの考え方を取り入れ、どのような採用活動を展開していらっしゃるのですか。

田平:常々、採用は営業やマーケティングに似ていると感じています。採用したいターゲットにどのような手法でアプローチし、採用候補者数を増やしていくか、その候補者が採用決定に結び付くよう、いかに内定者の確率を高めていくかという施策やプロセスは、営業やマーケティングと共通ですね。

近年では、採用ブランディングを強化しています。具体的な施策としては、リファラルや外部の転職サイト・メディアを活用したダイレクトリクルーティング、各採用チャネルにおける採用実績の最大化を目指したエージェント利用が挙げられます。

関:今おっしゃったように、ファネルで捉えていく考え方は採用マーケティングの柱となっているものです。ターゲットがどういう方々で、そのうちどの程度の方々にどういうチャネルを使ってリーチできているか、そこからどうすれば選考を受けてみようというところに来ていただけ、採用につながるのか、転職の潜在層から顕在層、候補者、従業員へと至るステップごとに最適なアプローチを、数値で管理しながら行っていくのが採用マーケティングです。

御社では採用のグローバル化を推進する中で、リーチしていくべき採用ターゲットも変わってきたと思いますが、今、キャリア採用において求めていらっしゃる人材の共通要件はどのようなものですか。

田平:第一に、楽天主義と呼ばれる当社の行動規範と価値観に共感いただける方です。そして、自分が活躍するフィールドを果てしなく広げたいと思っている人、それを実現するための具体的な努力を自発的にできる「自走する人」であることです。また、当社は、事業サイクルが非常に早いので、既存の仕組みではなく新しい仕組みを作ることができ、早いスピードでそのPDCAサイクルを回せる能力も必要とされます。当社の社内公用語は英語のため英語力も必要ですが、求められる英語力は、 「社員同士でビジネスに関わる情報共有が円滑にできる」レベルであり、何もネイティブ並みの流暢さを求めているわけではありません。
第3回 攻めの採用を国内・海外で展開する楽天
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