PwCコンサルティングとHR総研(ProFuture株式会社)は、日本企業約200社を対象に人材データ分析の活用状況およびエンプロイーエクスペリエンスの認知度や重要度、取り組み状況に関する共同調査を実施しました。それぞれの速報版を公開しましたのでご案内します。

【調査結果の概要】
人材データの活用・分析状況に関する調査「ピープルアナリティクス調査2020」では、人材データ分析にすでに取り組んでいる企業の割合は増加傾向にあり、従業員5,000名以上の大企業に限れば、2016年の34%から15ポイント増の49 %とほぼ半数に達していることが分かりました。活用しているデータとしては「従業員意識調査」と「ストレスチェック情報」がともに前年から10ポイント以上増加しました。また、BIツールの導入、データレイクおよびデータマートの構築により、社内でさまざまなデータを分析・活用しやすい環境整備も進んでおり、BIツールの活用企業は前年から全体で5ポイント、5,000名以上の大企業で14ポイント増加しています。新型コロナウイルス感染症の流行を契機として働き方の多様化が進む中で、ワークスタイルやパルスサーベイなど頻繁にアップデートされる“動的な”データや、意識・志向などの“定性的な”データが重視される傾向が表れていると考えられます。

エンプロイーエクスペリエンス(EX)の認知度や重要度、取り組み状況に関する調査「エンプロイーエクスペリエンス調査2020」では、EXという言葉を認知している企業は73%となっており、2018年の49%から比較すると認知度が急速に高まっていることが分かりました。また、重要度に関しても高い結果を示しており、ほぼ9割の企業が「EXの向上を人事部門の重要課題」だと認識していることが分かりました。取り組みについては、一部の企業においてEXの施策実行ステージに移行し始めているものの、まだ多くの企業は各領域に対して体系的な施策まで実行できていないことも分かっております。従業員のエンゲージメント向上が人事部門の抱える最重要課題の一つとなる中、EX向上に向けた体系的な活動が今後ますます重要となってくると考えられます。

二つの調査結果の詳細につきましては、以下よりご覧ください。

ピープルアナリティクス調査2020【速報版】

PwCコンサルティングは日本企業202社を対象に、人材データ分析の活用に関する成熟度や取り組みの現状、さらなる活用の課題などについて、HR総研(ProFuture株式会社)と共同調査を行い、その結果を取りまとめました。

今回の調査結果、および過去にPwCコンサルティングが実施した同様の調査結果(「人材データの分析活用度調査」)から、人材データ分析をすでに取り組んでいる企業の割合は2016年の20%から4ポイント増の24%、従業員5,000名以上の大企業に限れば34%から15ポイント増の49%とほぼ半数に達していることが分かりました。このことから、人材データを分析し、活用する流れは大企業がけん引していることがうかがえます。

ピープルアナリティクス、エンプロイーエクスペリエンス に関する実態調査速報版

また、人材データを分析するにあたって現在活用しているデータの種類、および将来の展望について調査を行いました。回答結果からは、各企業が人事システムによって管理する基本的データだけでなく、より広範なデータを活用しようとする積極的な姿勢が見てとれるとともに、先進企業ほどその傾向は強いことが明らかになりました。

コロナ禍においてリモートワークの導入をはじめとする働き方改革が一気に進んだことが影響したのか、「従業員意識調査」と「ストレスチェック情報」の活用がともに10ポイント以上増加しました。また、「採用時情報」「育成情報」の項目も10ポイント近く増加するなど、ケイパビリティに対する関心の高まりが見られます。新型コロナウイルス感染症の流行を契機として働き方の多様化が進む中で、今後も定性的な人材データのより積極的な収集、活用が見込まれます。

コロナ禍以前に主流だったデータ、ユーザー、プラットフォーム、ガバナンスに頼るようでは、刻々と変化する働き方の実態をタイムリーに捉え、適切な対策は打つことは困難でしょう。

こうした状況下においては、多くても年に数回アップデートされるだけの人事システムで管理する基本的な人事データだけでなく、ワークスタイルやパルスサーベイなど頻繁にアップデートされる“動的な”データや、意識・志向などの“定性的な”データが重要となるでしょう。同時に、人事担当者のみならず現場マネージャーや一般従業員がこれらのデータを活用しながら、マネジメントや仕事に役立てていくことが求められます。実際に、BIツールの導入、データレイクおよびデータマートの構築により、社内でさまざまなデータを分析・活用しやすい環境整備も進んでおり、BIツールの活用企業は昨年から全体で5ポイント、5,000名以上の大企業で14ポイント増加しています。企業にとって、今後ますますBIツールの導入や、分析を行う人材の採用・育成ならびに組織の構築が必要となってくるでしょう。

ピープルアナリティクス、エンプロイーエクスペリエンス に関する実態調査速報版

エンプロイーエクスペリエンス調査2020【速報版】

PwCコンサルティングは日本企業197社を対象に、エンプロイーエクスペリエンス(EX)*の認知度や重要度、各社の取り組みの現状などについてHR総研(ProFuture株式会社)と共同調査を行い、その結果を取りまとめました。

今回の調査結果によると、「EX」という言葉の認知度は2018年から24ポイント上昇して73%となり、その認知度は急速に高まっていることが判明しました。

言葉の認知度だけでなく、その重要度も上昇しています。2018年の調査では84%の企業が「EXは人事部門の重要課題の一つである」と回答していましたが、今回はさらに5ポイント上昇して89%に達しており、ほぼ9割の企業がEXの向上を人事部門の重要課題であると認識しているということが分かりました。

ピープルアナリティクス、エンプロイーエクスペリエンス に関する実態調査速報版

さらに従業員5,000人以上の大企業に絞ると、認知度は93%となり、ほとんどの大企業でEXという言葉が認知されていることが分かりました。また、大企業の22%はEXを向上させるための施策を検討、または既に実施しており、2019年の10%から2倍以上の増加となっています。このことから、大企業においてはEX向上を人事部門の重要課題として捉え、そのための施策を検討・実行するステージに移行しつつあることが分かります。

ピープルアナリティクス、エンプロイーエクスペリエンス に関する実態調査速報版

PwCではEXを6つの領域に分けて定義しており、各領域におけるサーベイ回答企業の「EX成熟度」を計測しました。

ピープルアナリティクス、エンプロイーエクスペリエンス に関する実態調査速報版

今回の調査結果から、EX成熟度と従業員エンゲージメント(満足度)や退職率といった各種指標に正の相関がみられることが分かりました。特に従業員エンゲージメント(満足度)においては強い正の相関がみられ、「体系的なEX施策を実施することで従業員エンゲージメント(満足度)に好影響を与える」ことが明らかになりました。

ピープルアナリティクス、エンプロイーエクスペリエンス に関する実態調査速報版

さらに領域ごとに成熟度を分析したところ、6つの領域の内5つの領域において成熟度が昨年から上昇していることが分かりました。中でもワークスタイルオプション領域においては約16%の企業がレベル3となっており、一部の企業において働き方の選択肢を広げる施策に積極的に取り組んでいることが伺えます。昨年から比較すると、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大したため、働く“場所”と“時間”の両面において柔軟な施策を設けた企業が増えたことが推察されます。

しかし、2020年の結果全体を俯瞰して見ると、半数以上はレベル0またはレベル1の「未成熟企業」の範囲にとどまっており、EXの各領域に対して体系的な施策を実行できている企業は多くないといえます。

特にネットワーキング領域に関しては昨年から成熟度が最も上昇している領域であるものの、未だ77%の企業がレベル0(施策が十分にとられていない)であり、ITツールを活用した社内ネットワーキングの促進(志向性の似ている社員のレコメンドや属性に基づく社員検索機能)、退職者(アルムナイ)との交流といった先進的な取り組みまでは広く実施されていません。

ピープルアナリティクス、エンプロイーエクスペリエンス に関する実態調査速報版

今回の調査結果を踏まえると、日本におけるEXの認知度や取り組み状況については「認知度・重要度は大企業を中心に急速に高まっており、一部の企業では施策実行のステージに移行しつつあるものの、まだ多くの企業では先進的な取り組みまでには至っていない」とまとめることができます。

人材獲得競争の激化やリモートワークの拡大などにより、従業員エンゲージメントの向上は人事部門の最重要課題の一つとなっています。また、従業員の志向性や価値観が多様化する今日においては一律的な施策ではなく、従業員のタイプごとにEXを設計し、EX向上に向けた体系的な活動として取り組むことが必要になるでしょう。
*EX=Employee Experience(従業員の体験価値):従業員が企業組織との間で体験・経験することの内容や価値を指す概念

【調査の実施概要】

アンケート名称:PwCコンサルティング合同会社・HR総研(ProFuture株式会社)共同調査
        「ピープルアナリティクスサーベイ2020」および
        「エンプロイーエクスペリエンスサーベイ2020」
調査主体:PwCコンサルティング合同会社、HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2021年1月6日~3月5日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者、人事担当者

  • 1