今回は、「社内コミュニケーション」に関する調査の結果を報告する。
本調査は例年実施している調査であり、コミュニケーションに関する課題は、以前から企業において強い課題感を持ちつつも効果的な解決策を見つけることが非常に難しく、悩ましいテーマとなっている。また、働き方の多様化やコロナウィルス感染予防対策、東京オリンピック・パラリンピック等により、急激にリモートワークの普及が広まることで、今後はさらに社内コミュニケーション対策が必要になってくることも予測される。
ここでは、社内コミュニケーションの業務への障害、コミュニケーションを阻害している要因、課題を感じる社内関係、実施施策や効果を感じる施策など、フリーコメントを含めて以下に紹介する。

<概要>
●「社員間のコミュニケーション不足は業務の障害になる」と認識する企業は9割超
●特に障害を受ける業務は「部門間・事業所間の連携」が7割超で最多
●社内コミュニケーションの現状に課題を感じる企業は8割、企業規模によらず
●「部門間」と「経営層と社員」の関係に課題を感じる企業が6割
●4分の1の企業は「社内の情報共有ができていない」
●コミュニケーションを阻害している要因は「管理職・社員・経営層のコミュニケーション力不足」と「組織風土・社風」
●最も多い社内コミュニケーション手段は「メール」が8割
●実施している施策は「従業員アンケート」が最多、中小企業ではイベント系の施策に積極的
●「効果を実感した施策」は「経営層との定期面談・ミーティング」で4割
●新たに実施したい施策は「特にない」が4割、課題を感じるも行き詰まり感が漂う

「社員間のコミュニケーション不足は業務の障害になる」と認識する企業は9割超

今回改めて、そもそも「社員間のコミュニケーション不足が業務の障害になるか」という問いをしたところ、「大いにそう思う」が72%、「ややそう思う」が23%となっており、これらを合計すると95%で、ほとんどの回答企業において、「(社員間のコミュニケーション不足が)業務の障害になる」と認識している。この認識は、いずれの企業規模においても同様の傾向が見られる(図表1-1,2)。

 ※「業務の障害になる」:「大いにそう思う」と「ややそう思う」の合計

【図表1-1】社内コミュニケーション不足が業務の障害になるか

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート調査 結果報告

【図表1-2】企業規模別 社内コミュニケーション不足が業務の障害になるか

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート調査 結果報告

特に障害を受ける業務は「部門間・事業所間の連携」が7割超で最多

「社員間のコミュニケーション不足が業務の障害になる」と回答した回答者に対して、「どのような障害になるか」と聞いたところ、「部門間・事業所間の連携」が73%で最多であり、次いで「迅速な情報共有」が66%、「目指す方向への認識の統一」が51%などとなっている。この傾向は、企業規模別に見ても大きな差異はない(図表2-1,2)。

【図表2-1】社内コミュニケーション不足による業務障害の内容

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート調査 結果報告

【図表2-2】企業規模別 社内コミュニケーション不足による業務障害の内容

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート調査 結果報告

社内コミュニケーションの現状に課題を感じる企業は8割近く、企業規模によらず

次に、「自社において社内のコミュニケーションに課題があるか」という問いに対して、「大いにそう思う」が23%、「ややそう思う」が53%などとなっており、「課題がある」とする割合が76%を占めている(図表3-1)。
中小企業は大企業等よりコミュニティーがコンパクトであるため、比較的コミュニケーションを取りやすいイメージを持ちがちだが、企業規模別に見ると、実情としては企業規模に関係なく、社内コミュニケーションに課題があると感じていることが分かる(図表3-2)。
では、具体的に社内のどのような関係において課題を感じているのだろうか。

 ※「課題がある」:「大いにそう思う」と「ややそう思う」の合計

【図表3-1】自社の社内コミュニケーションに課題が有るか

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート調査 結果報告

【図表3-2】企業規模別 自社の社内コミュニケーションに課題があるか

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート調査 結果報告

「部門間」と「経営層と社員」の関係に課題を感じる企業が6割

課題があると認識されている関係は、昨年と同様に「部門間」が65%で最多であり、次いで「経営層と社員」が58%、「部署内の課長とメンバー」が41%などとなっている(図表4-1)。上位2位までの項目は全社的スケールの関係性であり、半数を大きく超える企業で課題として認識されているということが分かる。「部門間」のコミュニケーション不全は、前述のとおり「部門間・事業所間の連携」に支障をきたしかねない問題が生じるが、部門ごとの立場や内情等の解決しづらい実情により、お互いが望むコミュニケーションを取りづらいという特徴があるのではないだろうか。
一方、現在、特に首都圏においては普及が進むテレワークの導入により、テレワーク社員とのコミュニケーションについても実態が気になるところであるが、調査時点(2020年1月末)においては、大きな課題は認識されていないようである。今後、テレワーク社員が増えることにより、新たな課題が浮かび上がってくる可能性もあるだろう。
また、例年、若手社員との世代間ギャップに悩むベテラン社員の様子が、各種メディアにより取り沙汰されているが、業務に支障をきたすかという観点では、「年代間」のコミュニケーションに対する課題は、それほど重要視されていないことがうかがえる。

企業規模別に見ると、「経営層と社員」については、従業員数1,001名以上の大企業では50%で、301~1,000名の中堅企業では58%、300名以下の中小企業では62%となっており、企業規模が小さいほど課題として認識する割合が多くなっている。中小企業では経営層からのトップダウンによる経営方針が社員の業務に直結しやすいからこそ、社員との十分な意思疎通が社員との信頼関係の構築に欠かせないのだろう。逆に「事業所間」については、大企業では4割を超えるのに対し中小企業では2割程度にとどまり、企業規模が大きいほど課題として認識している割合が多い。大企業では、国内外の様々なエリアに分散する事業所同士の円滑なコミュニケーションにハードルを感じていることがうかがえる(図表4-2)。

【図表4-1】コミュニケーションに課題を感じる関係性

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート調査 結果報告

【図表4-2】企業規模別 コミュニケーションに課題を感じる関係性

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート調査 結果報告

4分の1の企業は「社内の情報共有ができていない」

「社内の情報共有」については、「十分に共有できている」が3%、「ある程度は共有できている」が48%であり、半数が「共有できている」と認識している。一方、「あまり共有できていない」が18%で、「ほとんど共有できていない」が4%であり、両者を合計すると「共有できていない」という認識の割合は4分の1程度となっている。企業規模別に見ても同様である(図表5-1,2)。
「情報共有」という比較的シンプルなコミュニケーションであっても4分の1の企業が不十分であると感じている現状であるが、コミュニケーションを阻害する要因はどこにあるのだろうか。

【図表5-1】社内の情報共有の状況

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート調査 結果報告

【図表5-2】企業規模別 社内の情報共有の状況

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート調査 結果報告

コミュニケーションを阻害している要因は「管理職・社員・経営層のコミュニケーション力不足」と「組織風土・社風」

「コミュニケーションを阻害している要因」として、こちらも昨年同様に「管理職のコミュニケーション力」が48%で最多であり、次いで「組織風土・社風」と「社員のコミュニケーション力」がともに40%、「経営層のコミュニケーション力」が31%などとなっている(図表6-1)。これらを見ると、各層のコミュニケーション力不足と、それにより不協和音が生じる組織風土等に集中しており、一朝一夕に解決されるとは言い難い状況にあるようだ。

企業規模別に見ると、上位3項目の傾向は同様であるが、「経営層のコミュニケーション力」については特に企業規模による差異が大きく、中小企業の38%に対して、大企業では19%と、19ポイントもの差をつけて中小企業で高くなっている(図表6-2)。これもやはり、中小企業では経営層と社員の距離が近いからこそ、良くも悪くも社員の業務やモチベーション、エンゲージメント等に対する経営層の影響力が大きいことに起因していると推測される。

【図表6-1】コミュニケーションを阻害している要因

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート調査 結果報告

【図表6-2】企業規模別 コミュニケーションを阻害している要因

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート調査 結果報告

最も多い社内コミュニケーション手段は「メール」が8割

社内コミュニケーションの手段については、「メール」が77%で最多であり、次いで「対面」が72%、「対面での会議・ミーティング」が66%などとなっている(図表7-1)。働き方の多様化やインターネットの普及など様々な社会の変化により、いつの間にか対面より利便性の高いメールでのコミュニケーションが主流となる中、誤解なく円滑にコミュニケーションを取り良好な関係を保つため、より高いコミュニケーションスキルが必要になっていることがうかがえる。

企業規模別に見ると、特に企業規模による差異が大きいのは「テレビ会議・ミーティング」である。企業規模が大きくなるほど事業所間の距離も大きくなるとともに、いち早くテレワークの推進が進む大企業においては、中堅・中小企業に比べて高くなっているのだろう(図表7-2)。

【図表7-1】利用の多い社内のコミュニケーション手段

HR総研:「社内コミュニケーション」に関するアンケート調査 結果報告

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HRプロとは

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】「社内コミュニケーション」に関するアンケート調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2020年1月31日~2月7日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者・人事全般の担当者
有効回答:331件

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