新卒採用で、企業が学歴フィルターを行う理由はいくつかある。まず応募者の数だ。人気の高い大企業の場合は万単位の学生がエントリーする。ところが対応する人事の数は限られている。
 そこでなんらかのフィルターをかけて学生数を絞り、まともに選考できる数にする必要がある。いちばんわかりやすいフィルターが学歴である。
 では学生は、学歴フィルターの存在を感じているのだろうか。HR総研が今年6月に楽天「みんなの就職活動日記」と共同で行ったアンケート調査がある。2018年卒業予定の就活生に対して、「企業の学歴フィルターを感じたことがあるか」を聞いた。その結果は・・・

旧帝大・早慶クラスは学歴フィルターを実感

2018年卒業予定の就活生に対して、「企業の学歴フィルターを感じたことがあるか」を聞いたところ、文系では全体の57%、理系では51%があると回答している。
約半数なので、それだけでは大した数字に見えないかもしれない。ただ大学のランクを見るとかなり大きな違いがある。旧帝大クラスと早慶クラスでは「ある」と答えた学生がきわだって多い。とくに文系では両クラスとも7割を超えている。そして下位校になるほど「ある」という回答は減る傾向にある。旧帝大や早慶クラスでは選考が進んでいき、その過程で優遇されていることを実感するようだ。

[図表1]企業の学歴フィルターを感じたことがあるか(文系)

「学歴フィルター」をせざるを得ない採用の実情

[図表2]企業の学歴フィルターを感じたことがあるか(理系)

「学歴フィルター」をせざるを得ない採用の実情

学歴フィルターを感じた上位校学生のコメント

学歴フィルターが存在し、上位校の学生が優遇されていることは、就活生のコメントを読むとよくわかる。以下は優遇された学生のコメントだ。

「集団面接や座談会、内定後の懇親会で会った周りの子の大学が似たようなところ(早慶や旧帝大など)ばかりだったから」(慶應義塾大学、文系)
「エントリーシートが通過しやすかった。リクルーターが大学別につく」(一橋大学、文系)
「同時刻でも座談会の予約が既に満席表示の人と余裕がある人がいた」(東北大学、文系)
「抽選で参加できる見学会が、高学歴者しかいなかった」(大阪大学、文系)
「全くwebテストができなかったが、次の選考に進むことができた」(早稲田大学、文系)
「プレエントリー後即リクルーター面談の連絡が来た」(名古屋大学、理系)
「説明会の抽選に漏れたが、わざわざ空き日程を案内された」(早稲田大学、文系)
「自分は東大なのでESが通りやすいと感じた(インターン含める)」(東京大学、理系)
「自身が参加した企業の説明会、面接には旧帝大東工大早慶が殆どであった」(東北大学、理系)
「残っている学生が上位校しかいなかった。その場で、食事に誘われたり、遠回しに合格と言われたりした」(東京理科大学、理系)
「適当に予約した説明会が、特定の大学限定の開催だったこと。学生側は誰もそれを知らなかったことより、秘密裏に集められたと感じた」(早稲田大学、文系)

友人と同時に説明会予約したのに・・・私の画面は満席

上記コメントとは逆に、冷遇されていることに気付く学生もいる。

 「マイページから説明会の予約が全く取れないが、他の大学の子は取れると言っていた時」(同志社大学、文系)
「メールが届いてすぐに採用ページにログインしたのにセミナーが満席だったこと」(東京女子大学、文系)
「説明会への予約が常に満席の状態で表示されている」(九州工業大学、理系)
「友人と同時刻に説明会予約をしようとしたが、わたしの画面ではすでに満席になっていた」(聖心女子大学、文系)

ターゲット大学でもっとも多いのはGMARCH・関関同立クラス

企業側のデータも紹介しておこう。今年3月に行った調査結果である。HR総研では学生向け調査で「学歴フィルター」という言葉を使い、企業向けでは「ターゲット大学」という言葉で質問している。ターゲット大学を設定しているのは全体の39%の企業だが、「1001名以上」に限ると56%と過半数に達している。ターゲット大学の数は「1~10校」が67%ともっとも多い。

 「学歴フィルター」の学生調査では、旧帝大・早慶クラスの学生の「ある」という回答が多かったが、企業調査の「ターゲットとする大学グループ」では旧帝大・早慶クラスは2割台と少なく、もっとも多いのはGMARCH・関関同立クラスだ。学生のレベルが安定しているので評価されているようだ。
 ただし「1001名以上」の企業規模では、旧帝大クラス、上位国公立クラス(筑波大、横国大等)、中位国公立クラス(埼玉大、横市大等)、地方国公立大クラス(秋田大、山形大等)、早慶上智クラスが目立って多い。
 また企業調査では大学ランクで質問しているが、中堅・中小では地元大学の学生を採用したいと考えている企業も多い。その点も留意する必要がある。

[図表3]採用戦略におけるターゲット大学の設定(全体)

「学歴フィルター」をせざるを得ない採用の実情

[図表4]ターゲット大学の校数(全体)

「学歴フィルター」をせざるを得ない採用の実情

中堅・中小企業はターゲット大学へのアプローチに地道な努力

「学歴フィルター」は学生が一部の人気企業に殺到して起こる出来事だが、知名度の低い中堅・中小企業は学生の応募の少なさに悩んでいる。
 そういう企業のターゲット大学の目的は学生の足切りではなく、応募学生を増やすために対象大学を絞り込む採用施策であることが多い。そして下記のような地道な努力をしている。

 「研究室への定期的な訪問」(1001名以上、メーカー)
「学内セミナー等への参加」(1001名以上、情報・通信)
「キャリアセンターを訪問し、学内セミナー参画要請」(301~1000名、サービス)
「就職センターとの関係強化。特に採用実績を毎年作ることによって、強化を図っている」(301~1000名、メーカー)
「大学および研究室の訪問回数を増やしている」(301~1000名、メーカー)
「キャリアセンター訪問」(301~1000名、情報・通信)
「学校へ直接訪問を実施」(301~1000名、商社・流通)
「キャリアセンターだけでなく、ゼミや部活等との接点を増やす。」(300名以下、金融)
「大学教授、研究室との直接的な接点強化」(300名以下、マスコミ・コンサル)

【調査概要】

◆学生調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査協力:『楽天みん就』
調査対象:2018年卒業予定の就活生(学部生、院生)
調査方法:webアンケート
調査期間:2017年6月19日~6月26日
有効回答:2,513名(文系 1,566名、理系 947名)

◆企業調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査対象:上場および未上場企業人事責任者・担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2017年3月21日~3月29日
有効回答:184社(1001名以上:14%、301~1000名:34%、300名以下:52%)


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