「社内コミュニケーションに関する調査」結果報告有効なコミュニケーション促進施策は何か

コミュニケーション不足は組織に種々の機能障害を引き 起こし、逆に社内コミュニケーションが良好であれば、 組織が活性化し、生産性も向上するといわれている。HR総研では、8月に社内コミュニケーションに関する調査を実施し、企業ではどの(誰と誰の)コミュニケーションが不足しているのか、コミュニケーションを阻害している原因は何か、社内コミュニケーションを活性化させるためにどんな取り組みが有効なのかを探った。

コミュニケーションに課題を感じている企業が約8割

「社内のコミュニケーションに課題があると思うか」を聞いたところ、企業規模を問わず、8割近い企業が社内コミュニケーションに課題を感じている。企業規模が大きくなるほど、コミュニケーションの取り方がは難しくなることは容易に想像できるが、中小企業と中堅企業の比較では、決して中堅企業の方に課題感が強いわけではなさそうである。ただ、大企業では「大いにそう思う」と現状のコミュニケーションの状態に危機感を抱く企業が多く、4割近くに上る。

【図表1】社内のコミュニケーションに課題があると思うか

部門間・事業所間のコミュニケーションに課題ありが7割近い

「課題のあるコミュニケーションはどこか」を選択式で聞いたところ、セクショナリズムが課題となる「部門・事業所間」がトップで、全体では68%に上った。事業所は物理的に離れていることから、対面でのコミュニケーション機会が限られていることが大きい。「経営層と社員間」の壁を挙げる企業も半数以上に上る。部門内では、「部長とメンバー」の間に距離がありそうだ。

【図表2】課題のあるコミュニケーションはどこか(全体)

大企業では「課長とメンバー」間に課題感が強い

大企業では、部門や事業所の数も多くなることから、全体よりもさらに多い79%の企業で「部門・事業所間」が課題だと回答。大企業で特徴的なのは、部門内の「部長とメンバー」よりも「課長とメンバー」に課題があると感じている企業の割合が多いことである。コミュニケーション自体が「課長とメンバー」の方が「部長とメンバー」よりも稀薄であるということではなく、「課長とメンバー」間に期待されるコミュニケーション量やレベルに達していないと感じているものと思われる。かつてと比べればプレイングマネージャーの比率もく、理想的なコミュニケーションはとれていない現実がありそうだ。

【図表3】課題のあるコミュニケーションはどこか(大企業)

コミュニケーション不全の内容に、企業規模による差異は少ない

具体的にコミュニケーション不全の内容を見てみよう。

【大企業】
●自然なコミュニケーション(何気ない会話)ができていない。(サービス)
●経営層が社員に会社の方向性や社員に期待していることを伝える機会がない。(サービス)
●会社の今後に関し、役員同士が自身の考え方を相手(役員)に「しっかりと」伝えず、その結果、下位職が板挟みになっている。(サービス)
●縦割りの組織のため部門間のコミュニケーションが希薄だと感じている。(メーカー)
●「空気」を読んで自己業務の効率性を優先し、他人との健全なぶつかり合いを避ける。特に役職者等に傾聴力、謙虚さが欠けていた場合、「言っても無駄」、「思考停止」に陥り易い。 (情報・通信)
●仕事上最低限のコミュニケーションに留まっている。(運輸・不動産)

【中堅企業】
●組織の縦割り意識が強く、経営層含めて情報の共有化ができていない。(サービス)
●見た目ではメンバー間でのコミュニケーションは取れているように感じるが、表面的な話が多い。業務を進める上でのコミュニケーションに物足りなさを感じる。(サービス)
●ベテランから若手への暗黙知の継承が少ない。 (サービス)
●殆どの会議が報告会と化している。 (サービス)
●お互いの問題点や課題を指摘し合わない。感じたことを口にしない。直接言わない。 (サービス)
●仕事を任せっぱなしして、関わろうとしない。(メーカー)

【中小企業】
●他部門の業務分担、体制が分からず、部門長に作業依頼を行っても誰が担当するか不明で、期日までに実施されないことがある。(サービス)
●部の課題を共有しようとしない。そのため、持っている情報が活かされない。(サービス)
●“言えない”文化の浸透。コミュニケーションの機会づくりが、意図されていない。 (サービス)
●経営層が社員、特に若手社員や女性社員の本音を聞きだそうとする姿勢が見られない。上辺だけのきれいごとを並べており、社員もしらけている空気がある。 (サービス)
●セクショナリズムの強さ(会社風土)。対話の量、質の低下。 (メーカー)
●連帯感がなく、個々に仕事をしている。責任を他部門へ転嫁している傾向がある。(メーカー)

こうしてみると、どの企業規模でも似たような課題感が挙げられている。中小企業においても部署間のコミュニケーション不全がすでに発生している。

コミュニケーション不足は業務の障害なると認識

「コミュニケーション不足は業務の障害になるか」と聞いたところ、ほぼ全員が「コミュニケーション不足は業務の障害になる」と認識している。だからこそコミュニケーション不足、コミュニケーション不全に対する危機感が強い。企業規模による差異はほとんどない。

【図表4】コミュニケーション不足は業務の障害になるか

6割の企業が情報共有は「できている」と回答するが・・・

「社内の情報共有は十分にできているか」を聞いたところ、「十分に共有できている」「ある程度は共有できている」とする企業は60%もあるものの、「十分に共有できている」と自信をもっている企業はわずか4%にとどまる。企業規模による差異はほとんどない。
「情報共有=情報発信」はITツールを活用することで表面的にはできているものの、それがちゃんと浸透しているかどうかはまた別問題と言えるのかもしれない。

【図表5】社内の情報共有は十分にできているか

「メール」が「対面」を上回る

コミュニケーション手段として利用の多いものを聞いたところ、コミュニケーションの基本である「対面(会話)」よりも「メール」のほうが多くなっている現状が確認できた。大企業においては実に30ポイント以上もの差になっている。大企業では「イントラネット」の利用も約6割と多く、「対面」と大差がないほどになっている。
中小企業のみは、「対面」が「メール」を上回ってトップとなっている。

【図表6】社内のコミュニケーション手段で利用の多いもの

阻害原因の1位は「組織風土・社風」

「コミュニケーションを阻害している原因」を聞いたところ、トップは「組織風土・社風」の54%。「組織風土・社風」を変えていくのは一朝一夕でできるものではなく、トップが自らコミットしての風土改革が求められる。「対面の減少(=ITツール依存)」を挙げる声も多い。今後、SNS世代が増えてくるにつれて、「コミュニケーションスキルの低下」対策は、より重要になってくる。

【図表7】コミュニケーションを阻害している原因
コミュニケーションを阻害している原因を具体的に見てみよう。

●メールでのやりとりに慣れてしまっているため、相手の反応を見ながらやりとりをするという機会が現象しているためにスキルも低下している。(サービス)
●風土として、管理職の意識が低く、部下との対話の必要性を感じていない(教育されていない)。(サービス)
●メールのccが多用され、ccに入れていれば直接報告の必要がないかのような風潮がある。(サービス)
●効率を重視した結果、職場での雑談が減り仕事以外の関係がなくなってきている。自然発生的な飲み会も減り、いざというときに頼れる人の存在が感じられない組織になりつつある。 (メーカー)
●イントラに掲載しておけば伝わる、見ていないほうが悪いという環境が進んでいる。 (メーカー)
●仕事が特定の個人に張り付いているので、他人に無関心となっていること。 (メーカー)
●電話では履歴が残らないので、重要な指示や報告には(文書化された)メールが重要なコミュニケーション手段となる。しかし、発信者のリテラシーが低いと、意味が伝わらなかったり、誤解を招く局面が多々ある。(情報・通信)
●コミュニケーションスキル不足、メンタルの余裕のなさが原因だと思っている。(情報・通信)
●いわゆる「わいがや」文化がなくなっている。 (運輸・不動産)

メール依存が進み、「送りっぱなし=相手の反応はおかまいなし」という風潮が原因だとする声が多い。また、かつてと比べて、他人を気遣う精神的余裕がなくなってきているとの声も。

コミュニケーション不全の防止・抑制策のトップは今も「社内報」

「コミュニケーション不全の防止・抑制策」を聞いたところ、トップは昔ながらの「社内報」で全体の3分の1の企業が実施している。次いで「レクリエーション」「従業員アンケート」「自己申告制度」といった施策が3割前後となっている。「経営層との定期的なミーティング」も多い。

【図表8】コミュニケーション不全の防止・抑制策(全体)

大企業では研修の活用も多い

「コミュニケーション不全の防止・抑制策」を大企業だけで見てみると、「レクリエーション」や「キックオフ」「社員旅行」「飲み会補助」といった項目では全体よりも低い実施割合となる反面、「従業員アンケート」「自己申告制度」「コーチング研修」「コミュニケーション研修」「メンター制度」「社内公募制度」といった、制度や研修を実施する企業の割合が極めて高くなっている。

【図表9】コミュニケーション不全の防止・抑制策(大企業)

効果のあった具体的な施策は・・・

社内コミュニケーション活性化において、実際に効果のあった施策をフリー記述で回答してもらったものを整理してみたところ、大きく4つに分類できる。

【トップとの直接対話】

●経営トップを交えたラウンドテーブルミーティング(メーカー)
●経営層との定期面談・ミーティング(メーカー)
●社長と管理職、社長と組合員の直接対話の場を設定すること(メーカー)
●社長による車座(メーカー)
●社長と社員のミーティング:経営層の思いを直接社員が聞く機会。毎回6-7人の小グループで行うため、一人ひとりの顔が見えるミーティングの場となっている。経営者が何を考えているのかを直接知ることは、モチベーションアップにつながっている(情報・通信)

【研修】

●管理者層のチーム力向上研修(サービス)
●次世代リーダーを対象にしたマネジメント研修の中で「コミュニケーション」研修実施(メーカー)
●職場全員で同じ研修を受け、話さざるを得ない状況をつくることが、大きな成果に繋がった(メーカー)
●全社員対象の対話型の理念研修(メーカー)
●定期的かつ内容的にライトな研修の実施。(真剣に楽しめるようなアクションラーニング的なもの)(メーカー)
●マネージャ研修(情報・通信)
●社内研修時に懇親会を設け フリーな雰囲気の中意見交換を出来る環境を持っている(商社・流通)

【プロジェクト】

●社内プロジェクトの立ち上げを行い、様々な部署、年代連携で実施(サービス)
●ダイバーシティ推進プロジェクト、働き方改革推進活動、イベント企画など(メーカー)
●部門横断プロジェクト・委員会活動(業務を通じた”同じ釜の飯を食う”修羅場体験の共有(情報・通信)
●展示会運営への社員参加(商社・流通)

【レクリエーション】

●全社旅行や幹部旅行(サービス)
●スポーツ大会や納涼祭による親睦を高める社内行事(サービス)
●一定の補助を会社から支給して部署ごとの社内レクリエーションを定例化(サービス)
●駅伝大会を部署対抗で実施した。部署内の団結が図れた(メーカー)
●運動会は一定の効果があった(メーカー)
●日帰り社員旅行は、普段会話をしない、役員と従業員の距離、他部門の従業員同士の距離を縮めるにはある程度の効果はあった(メーカー)
●社内レクリエーション大会(ソフトボール・ソフトバレー・ボーリング)の実施(メーカー)

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】社内コミュニケーションに関するアンケート
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2016年8月10日〜8月23日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:上場及び未上場企業の人事担当者
有効回答:229社