「認知的徒弟制(Cognitive Apprenticeship)」とは、アメリカの認知学者ジョン・S・ブラウンやアラン・コリンズが提唱した概念で、親方(熟達者)と弟子(学習者)の間で古くから行われてきた徒弟制の職業技術訓練に着目し、その学習プロセスを認知的な観点から理論化したものです。

認知的徒弟制では、学習者と熟達者は

(1)モデリング(modeling)
(2)コーチング(coaching)
(3)スキャフォールディング(scaffolding)
(4)フェーディング(fading)

の4つのステップを踏むことで、効果的かつ効率的に知識・技能の修得・継承ができると考えられています。

まず第1段階のモデリングでは、熟達者が学習者に模範を示し、学習者はそれを観察して視覚的に把握します。次に第2段階のコーチングでは、熟達者が学習者のレベルに合った課題を与え、ヒントや助言を与えながら模範の通りにできるよう指導します。学習者は何度も失敗しながら上達していくわけです。

そして、ある程度のことができるようになったとき、第3段階のスキャフォールディング(足場づくり)に進みます。この段階で行うのは、今後、学習者が自分自身でさらに上達の道を歩んでいけるようにするための支援。熟達者は学習者に適度な課題の達成を求め、支援し、できるようになるにつれて足場を外していきます。最終段階のフェーディングに至ると、熟達者は学習者が独り立ちできるように少しずつ関わりを減らし、退いていきます。

日本でも、かつて職人の世界などで「仕事は見て盗め」と言われましたが、認知的徒弟制は、「教えすぎない」ことを旨とする教育法です。現在の日本の企業の人材育成においては、自ら考え、学び、行動できる人材をいかに育てるかが大きな課題。それだけに、認知的徒弟制の考え方やノウハウは、OJTを中心とした企業の人材育成に応用できるとして注目されるようになってきています。