常にLGBTが身近にいるという前提で話す

この問題は、「本人が隠していて、いるかどうか分からないのだから、仕方ない」で済ませられない問題だ。

そもそも、自身がLGBTであることを大っぴらに言えないのは、この社会に偏見や差別があるからだ。仮に、あなたの職場にLGBTが存在しなかったとしても、人権を侵害するような発言が「冗談だから」で見過ごされてよいということはない。では、どうしたらよいのだろうか。

LGBTがあなたの職場にいるかどうか分からなくても、“いるという前提で”話をすればよい。

からかったり、侮辱しない、というだけではなく、人間は多様なものであり、「恋愛や性の対象が異性である人ばかりではない」、「生まれた時の性別を当然だと受け止めている人ばかりではない」、と常に頭の隅に置いておくことだ。

「男らしく」、「女らしく」という規範は、まだまだこの社会に根強い。あなたがそのような信念をもつことは自由だが、職場では男女の役割や外見等を決めつけるような話題はふさわしくないと考えておこう。いるかもしれないLGBTが傷つくというだけでない。伝統的な性別の役割にこだわることは、性差別に結びつきやすく、セクハラの温床になるからだ。

また、職場の誰かがLGBTを笑いものにしているような時に、すぐにその場で、そのような発言は適切ではない、と意思表示することも大切だ。

「そういう言葉を使うと傷つく人がいるので、やめておきましょうよ。私も聞いていて、いい気持ちがしません」と言える人が職場に1人でもいるだけで、生きる勇気を得る人だっているかも知れない。

世の中には偏見に凝り固まり、差別することにためらいを感じない人が一定数いる。残念ながら、そのこと自体はどうしようもない。

しかし、偏見・差別に対して、その場にいる人全員が、当然のように受け止めたり、同調して笑うことは、防ぐことができる。

LGBTへのセクハラ防止を考える時に、まずできることは、このような“視点”を身につけることである。
李怜香(り れいか)
メンタルサポートろうむ代表
社会保険労務士/ハラスメント防止コンサルタント/産業カウンセラー/健康経営エキスパートアドバイザー
http://yhlee.org
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