2024(令和6)年度から、いよいよ「健康日本21(第三次)」が始まります。「健康日本21」とは、「健康増進法」第7条の規定に基づき、“国民の健康の増進を図るための基本的な方針”を厚生労働省が定めるもので、第一次が2000(平成12)年、第二次が2013(平成25)年から行われており、今回は11年ぶりの改訂ということになります。本稿では、この改訂された指針について紹介します。
企業は従業員の健康を守る取り組みを。2024年度より「健康日本21(第三次)」が開始

2013年から実施中の「第二次」。その結果は?

2013(平成25)年から行われている第二次では、全体を「(1)健康寿命の延伸と健康格差の縮小」、「(2)生活習慣病の発症、重症化予防」、「(3)社会的生活を営むために必要な機能の維持・向上」、「(4)健康を支え、守るための社会環境の整備」、「(5)栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒及び歯、口腔の健康に対する生活習慣や社会環境の整備の改善」の5つの大目標に分け、さらにそれを53項目の小目標に分けました。小目標については“10年後の数値目標”が掲げられ、その結果を評価しています。

これら53項目の中で、目標値に達したのは下記の8項目となります。

(1)健康寿命の延伸
(2)75歳未満のがん死亡率の減少
(3)脳卒中・心筋梗塞などの死亡率の減少
(4)糖尿病の程度が悪い人の減少
(5)小児科医・児童精神科医の増加
(6)認知症サポーター数の増加
(7)低栄養高齢者の減少
(8)一人で食事を食べる子供の減少

ちなみに、小目標「健康づくりに関する活動に取り組み、自発的に情報発信を行う企業等登録数の増加」は、「現時点で目標値に達していないが改善傾向にある」と評価されています。

一方、下記の4項目は、この10年間の取り組みで悪化しました。

(1)メタボリックシンドロームの減少
(2)痩せすぎでも太りすぎでもない子供の増加
(3)適度な睡眠
(4)飲酒が過度な人の減少

なお、ここでいう適度な飲酒というのは、男性で1日40g(ビールならロング缶2杯、日本酒なら2合、ストロング缶なら500mlで1本)程度で、女性の適量はその半分とされています。また、これら以外にも、一部の年齢・性で悪化した目標がありました。

これらの悪化の原因としては「(1)データの見える化や活用が不十分であったこと」、「(2)PDCAサイクルの推進が不十分であったこと」が挙げられました。

「第三次」の目標は?

そこで、今後10年間にわたる「健康21(第三次)」のビジョンは、「すべての国民が心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」とされ、51項目の目標を設定しています。以下に主なものをご紹介します。

●食生活

主食・主菜・副菜が揃った食事を1日2回以上とること、また野菜や果物については今後10年に野菜350g(現280g)、果物200g(現100g)にすることが目標です。これにより、高血圧・肥満・糖尿病が減ることが期待されます。

日本人で一番問題となるのは食塩量です。食塩は高血圧・脳卒中・心筋梗塞だけでなく、がんのリスクも上げることが示唆されています。日本人が平均1日10g取っているのを、7gまで減らそうというのが目標になっています。

●運動

1日8,000歩(65歳以上では6,000歩)歩くこと、1回30分以上の運動を週2回続けることが推奨されています。高血圧、糖尿病などの生活習慣病にたいする予防効果があります。

●睡眠

「睡眠により十分休養が取れているか」といった主観的な評価、「6時間の睡眠」、「雇用時間を週60時間以内にすること」の3つが目標値として採用されました。

●飲酒

1日当たり男性40g、女性20g以上のアルコール摂取者を10%とするのが目標です。

●喫煙

「喫煙率の減少」、「妊娠中の喫煙の減少」の2つが目標です。特に喫煙は、がん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病などの生活習慣病に関連した重要なリスク要因です。

●歯・口腔の健康

ここでの目標は「歯周病の前段階である歯周炎の防止」、「なんでも噛んで食べることができると答える50歳以上の人の増加」、「歯科検診」の3つです。特に歯科検診は、現在受けている人が50%であるところ、2032(令和14)年度には95%まで増やすことを目標にしています。

●疾患の発症予防・重症化予防

「がん検診の受診率の上昇」、「高血圧の者の減少」、「糖尿病有病者の増加の抑制と治療継続」、「LDLコレステロール高値のものの減少」等が挙げられています。

一方、企業そのものの取組みとしては、「メンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合の増加」、「健康経営®の推進」、「スマート・ライフ・プロジェクト活動を行っている企業の数」などが指標に組み込まれています(「スマート・ライフ・プロジェクト」は健康寿命の延伸を目的とした厚生労働省のプロジェクト)。

2000年から始まった「健康日本21」は、この20年間で解決できなかった目標にチャレンジしようとしています。企業は「働く人を守る」という立場から取り組めること、例えば福利厚生としてがん検診を行うなど、柔軟に対応していくべきでしょう。

※ 健康経営®は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

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