前回の記事(※)では、私たちが考える「スター社員」の形成について、3つの公式を紹介しました。公式Aによれば、当人による顕著な成果と、その成果を漏れなく発見し、それをローカルな場での成功に留めることなく全社的に広める仕組み、さらには、早くして成果をあげた社員が陥りがちな各種のトラップ(罠)に対処する仕組みとが合わさることで、「スター社員」の形成が可能になります。今回は、この公式Aの「複数の顕著な成果」を具体的に説明した公式Bについて、説明していきます。

【前回の記事】
第2回:3つの公式から考察する「スター社員」を形成する要素とは
第3回:「スター社員」を形成するうえでカギとなる“経験と学習”の具体的な中身とは
服部 泰宏
著者:

神戸大学大学院経営学研究科 准教授 服部 泰宏

2009年神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了(経営学博士)。滋賀大学経済学部専任講師、准教授、横浜国立大学大学院国際社会科学研究院准教授を経て現職。「組織と個人の関わりあい」をコアテーマに、人材の採用に関する研究,人事評価や社内の評判に関する研究,圧倒的な成果をあげるスター社員の採用・発見・育成と特別扱いに関する研究などに従事。著書に『採用学』(単著、新潮社)、『日本企業の採用革新』(共著、中央経済社)、『組織行動論の考え方,使い方』(単著、有斐閣)、『コロナショックと就労』(共著、ミネルヴァ)など。

著者:

神戸大学経営学部(調査時点) 山下 莉沙

服部研究室に所属し、自律的人材やアルムナイに関する調査に従事

【再掲】「スター社員」の形成に関する(暫定的な)3つの公式

第3回:「スター社員」を形成するうえでカギとなる“経験と学習”の具体的な中身とは

人々を大きく成長させる4つの経験

リーダーシップ開発研究の金字塔といえるのが、米国ノース・カロライナ州に拠点を置く国際的なリーダー育成機関(非営利組織)、センター・フォー・クリエイティブ・リーダーシップ(以下CCL)による一連のプロジェクトです。これは、米国企業6社に所属する「成功している」経営幹部191名を対象に、キャリアにおいて自身が「量子力学的に成長した経験(quantum leap experience)」を3つ以上語ってもらい、合計616の「量子力学的な成長経験」を抽出するという、大規模なプロジェクトです。抽出された経験のリストは、元CCL幹部であり現在は南カルフォルニア大学に所属しているモーガン・マッコールによる著書『The Lessons of Experience』(未邦訳)や、『High Flyers』(邦訳は『ハイ・フライヤー』プレジデント社)などに、集約された形でまとめられています。また我が国においては、この調査の日本版が、神戸大学(当時。現在は立命館大学)の金井壽宏先生と関西経済連合会の共同による「一皮むけた経験プロジェクト」として行われており、著書『一皮むけた経験(光文社新書)』の中にその成果がまとめられています。

表1をみれば、両国の「ハイ・フライヤー(空高く飛ぶ鳥のように、周囲の人々よりも高い成果を出し、かつそれを維持している人)」たちがくぐり抜けてきた経験には、かなりの程度、オーバラップがあることがよくわかると思います。
第3回:「スター社員」を形成するうえでカギとなる“経験と学習”の具体的な中身とは
表1によれば、人々を大きく成長させる経験は、大きく分けて、下記4つのカテゴリーに分類することができます。

(1)業務上のアサインメントに関わるもの
(2)他者との繋がりによってもたらされるもの
(3)特定の業務そのものではなく、業務(あるいは業務以外の個人的な部分)において遭遇する失敗やミス、不遇、トラウマや不快感といった修羅場というべき経験
(4)研修プログラムなどその他の経験


それぞれのカテゴリーには、「初期の仕事経験」「最初の管理経験」といった、様々な具体的経験が含まれています。私たちの調査においては、このリストを出発点として、サイバーエージェントのスター社員たちがこれらのうちどれを経験しているか、また、このリストにはないどのような経験をしているか、ということを調べました。

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