こうした状況のなかで、人事は採用におけるリスクマネジメントをどのように行えばいいのでしょうか。注目を集めているのは、内定前に候補者の経歴や人物像などを確認する採用前調査です。今回、「バックグラウンドチェック」「リファレンスチェック」といった採用前調査サービスを提供する、株式会社イーストアンドウエスト 代表取締役 手塚氏に、採用前調査の位置付けや重要性について話を伺った。(以下:敬称略)
プロフィール
株式会社イーストアンドウエスト
警視庁にて勤務後、2003年に株式会社イーストアンドウエストを設立。採用前調査に特化した同社は、バックグラウンドチェックで国内処理件数4年連続1位(東京商工リサーチ調べ※2018年~2022年)を誇る。
代表取締役 手塚 賢一 氏
採用前調査は、公正な選考と企業防衛につながる
――採用選考の過程で行われる「バックグラウンドチェック」「リファレンスチェック」の概要について教えてください。手塚:
バックグラウンドチェックは、履歴書や職務経歴書の内容が本人の経歴などと相違がないのか、どのような勤務態度だったのか、犯罪歴や反社会的勢力との関わりがないのかを、本人の同意を得たうえで確認します。企業がその人材を採用しても問題ないのかをスクリーニングする位置付けですね。
リファレンスチェックは、前職の上司や同僚など候補者本人が指定した人にインタビューを行い、候補者の仕事ぶりや能力などについて確認します。候補者と懇意にしている相手が多いため、長所について細かく聞くことができます。
手塚:
ひとつは、情報の正確性の担保です。企業が行う書類選考や面接だけでは、その経歴が本当なのかどうか見極めることは困難です。そこで、採用前調査を行うことで、正確な情報のもとでジャッジを行うことができます。
また、企業防衛のために活用されるケースも増えています。過去に犯罪や大きなトラブルを起こした経歴や、反社会的勢力との関わりなど、採用後に問題が発覚してしまうと企業イメージの棄損にもつながりかねません。また、代わりの人材を採用するにはコストも時間もかかってしまいます。そこで、リスク回避のためにも事前に確認をしたいというお問合せをいただくことが増えています。
――コロナ禍によるニーズの変化はありますか?
手塚:コロナ禍による影響はあまりないと感じています。それよりも、企業のコンプライアンス意識の変化による影響が大きいですね。不適切な方法で情報収集を行うことは、今の世の中で許容されるものではありません。そのため違法性のない調査を行うにはどうすればいいのか、ご相談をいただくことが増えています。外資系企業では、以前よりバックグラウンドチェックは当たり前のこととして行われてきましたが、最近では国内企業でも本人の同意を得たうえで調査を行う動きが増加しています。
もうひとつは、採用市場の変化です。ビジネス環境が変化するなかで、企業は新しい取り組みを始めています。それに伴い、これまでとは異なる人材を採用する必要が出てきました。例えば金融業界では、これまで同業界内での転職がほとんどでしたが、昨今はM&AやDX人材など異業種の人材が求められています。業界内での転職であれば、横の繋がりでその人材の評判を聞くこともできましたが、異なる業界からの人材ではそれができません。そうした背景での活用もありますね。
この後、下記のトピックが続きます。
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●バックグラウンドチェックの3つのステップ
●バックグラウンドチェックの実施により
候補者が辞退する可能性
●業界・職種によって異なる
バックグラウンドチェックの調査結果
●質の高い調査サービスを見極める方法
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