今後も続くであろうVUCAの時代を生き残るため、必要な意思決定とアクションをとれるデータドリブンな人事が不可欠となっており、企業が持続的な成長を果たすために「人的資本経営」の推進が重要となっている。また、有価証券報告書での開示義務化から1年経過し、企業ではどのような動きが出ているのだろうか。
HR総研では、企業の特徴により異なる人材データの把握・活用・開示、人的資本経営の捉え方や取組みの実態を把握するアンケートを実施した。第1報では「人的資本経営」に関する調査結果について報告する。

人的資本経営を重視する企業が7割、昨年より微増の傾向も

まず、人的資本経営の重視度について前年と比較して見てみる。
本年(2024年)調査では「重要だと認識している」が最多で43%、次いで「やや重要だと認識している」が26%となり、これらを合わせて「重視派」(以下同じ)は69%とほぼ7割に上っている。一方、前年(2023年)調査では「重視派」の割合は69%で、2024年と同じ割合となっている。ただし、「重要だと認識している」の割合は昨年調査時(36%)より7ポイント増加していることから、やや重視度が高まっていると捉えられる(図表1-1)。

【図表1-1】「人的資本経営」の重視度(昨年比較)

HR総研:「データドリブンな人事と人的資本経営・開示の現状」に関するアンケート 結果報告(第1報)

これを企業規模別に見ると、従業員数1,001名以上の大企業では「重視派」の割合が75%と8割近くにも上っており、そのうち「重要だと認識している」は48%と半数近くにも上っている。301~1,000名の中堅企業では「重視派」は75%と大企業と同じで、そのうち「重要だと認識している」は41%と4割程度に上るものの、大企業よりやや低くなっている。300名以下の中小企業では、「重視派」は62%と6割程度で大企業・中堅企業より低くなっている。ただし、「重要だと認識している」に注目すると40%で、中堅企業と同等となっている(図表1-2)。
いずれの企業規模でも「(あまり)重要だと認識していない」の割合は2割にも満たず、大企業においては僅か5%にとどまっている。これらの結果から、人的資本経営の重要性が企業規模を問わず、ある程度浸透していることがうかがえる。

【図表1-2】企業規模別 「人的資本経営」の重視度

HR総研:「データドリブンな人事と人的資本経営・開示の現状」に関するアンケート 結果報告(第1報)

エンゲージメントレベルが高い企業ほど、取組みが進む傾向が顕著

人的資本経営への取組み状況を前年と比較しながら見てみる。
まず、本年調査の結果では、「取組みを開始した段階」が22%、「安定的に取組みを継続中」が16%となっており、これらを合計した「取り組み中」(以下同じ)の割合は38%と4割近くに上っている。この「取り組み中」について前年調査の結果でも38%で、取組み状況に前年から大きな変化は見られていないことがうかがえる。また、「取り組む予定はない」の割合は今年と昨年ともに28%で、前向きに取り組んでいる企業の割合も前年と大きな変化は見られていない(図表2-1)。

【図表2-1】「人的資本経営」の取組み状況(昨年比較)

HR総研:「データドリブンな人事と人的資本経営・開示の現状」に関するアンケート 結果報告(第1報)

これを企業規模別に見ると、大企業では「取り組み中」の割合は56%、うち「取組みを開始した段階」は35%に上り、開始したての企業が多くを占めていることが分かる。「取り組み中」について中堅企業では30%、中小企業では28%となり、いずれも3割前後となっている(図表2-2)。
このように、特に大企業で取り組み始めた割合が高い背景には、2022年8月30日に内閣官房より公表された「人的資本可視化指針」により、2023年度より上場企業には有価証券報告書で複数項目の開示が義務化され、対象となる企業で取組みが進んでいることが、少なからず影響しているものと考えられる。

【図表2-2】企業規模別 「人的資本経営」の取組み状況

HR総研:「データドリブンな人事と人的資本経営・開示の現状」に関するアンケート 結果報告(第1報)

さらに、エンゲージメントレベル別に「人的資本経営」の取組み状況を比較すると、エンゲージメントレベルが「高い/やや高い」とする企業群では「取り組み中」が66%と7割近くに上る一方、「低い/やや低い」企業群では「取り組み中」が32%と3割程度にとどまっている。エンゲージメントレベルが高い企業群の方が、人的資本経営への取組みが顕著に進んでいることが分かる。

【図表2-3】エンゲージメントレベル別 「人的資本経営」の取組み状況

HR総研:「データドリブンな人事と人的資本経営・開示の現状」に関するアンケート 結果報告(第1報)

取組み期間は「2年以内」が7割、エンゲージメントレベルが高いほど長い傾向も

人的資本経営の取組み期間について見てみると、最も多いのは「1~2年以内」で43%、次いで「5年より前から」が15%、「半年~1年以内」が14%などとなっており、「2年以内」(「3ヶ月以内」~「1~2年以内」の合計)が69%と約7割に上っている(図表3-1)。

【図表3-1】人的資本経営の取組み期間

HR総研:「データドリブンな人事と人的資本経営・開示の現状」に関するアンケート 結果報告(第1報)

エンゲージメントレベル別に人的資本経営の取組み期間が「5年間以上」の割合を比較すると、エンゲージメントレベルが「高い/やや高い」企業群では30%、「どちらとも言えない」企業群では10%、「低い/やや低い」企業群では0%となっており、エンゲージメントレベルが高いほど人的資本経営に「5年間以上」取り組んでいる割合が高い傾向にあることがうかがえる(図表3-2)。取組みの継続期間だけがエンゲージメントレベルの高さにつながるものではないものの、ある程度継続して取り組むことの重要性を示していると捉えられるだろう。

【図表3-2】エンゲージメントレベル別 人的資本経営の取組み期間が「5年間以上」の割合

HR総研:「データドリブンな人事と人的資本経営・開示の現状」に関するアンケート 結果報告(第1報)

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HRプロとは

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】「データドリブンな人事と人的資本経営・開示の現状」に関するアンケート        
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2024年4月15~26日
調査方法:WEBアンケート
調査対象: 企業の人事責任者・担当者
有効回答:185件

※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照いただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
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