心理学の大家、アルフレッド・アドラーが対人支援において重視したのが、相手に困難を克服する活力を与える「勇気づけ」だ。アドラー心理学を解説したベストセラー『嫌われる勇気』の著者である哲学者の岸見 一郎氏は、ビジネスにおいても「自分には価値があり、仕事を成し遂げることができる」という勇気を持つことができれば、成果が出せるようになると話す。本講演では、岸見氏が従来からの職場で見られがちな対人関係に関する問題を指摘した上で、アドラーが説く「勇気づけ」がなぜ重要なのか、そしてどのような言葉が有効なのかを解説した。
アドラー心理学における「勇気づけ」の効果とは?  部下の自発的な行動や挑戦を促す「叱らない、ほめない、命じない」というマネジメント
岸見 一郎 氏
講師:

哲学者 岸見 一郎 氏

著書に『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』(古賀史健と共著、ダイヤモンド社)『ほめるのをやめよう』『叱らない、ほめない、命じない。』(日経BP)『人生は苦である、でも死んではいけない』(講談社)、『今ここを生きる勇気』(NHK出版)『不安の哲学』(祥伝社)『怒る勇気』(河出書房新社)『絶望から希望へ』(大和書房)。訳書に、アルフレッド・アドラー『個人心理学講義』『人生の意味の心理学』(アルテ)、プラトン『ティマイオス/クリティアス』(白澤社)など多数。
オフィシャルサイト

「自分には価値がある」という思いが成果につながる

リーダーの立場であれば教育をします。教育というのは、「働きかける」ということですが、リーダーからの働きかけを受けて、部下が自分で判断し、自分で納得し、行動しなければいけません。多くの人はそういう過程をそれほど重視せず、部下を叱りつけたり、ほめたりすることで、操作して動かそうとします。しかし、そのような対人関係のあり方は、これからの時代に通用しないと考えています。

なぜかというと、「人と人の関係は対等だから」です。これは言ってみれば当たり前の話です。上司と部下の関係も対等だということをしっかり押さえておかなければ、対人関係を損ねてしまいます。アドラーは、教師と生徒の関係について厳しいことを言っています。「私は生徒の能力、無能力というものを信じない。あるのは教師の能力、無能力だけである」。部下が成績を上げられないとすれば、それは教育者として上司が役割を果たせていないからである、という意味です。上司と部下は役割が違うだけであって、人間としては全く対等の関係であるということを、アドラーは基本に置いています。
気になる続きは、下記をダウンロードの上ご覧ください!

  • 1

この記事にリアクションをお願いします!