テレワークやキャリア自律で注目の「セルフマネジメント」の意味とは
「セルフマネジメント」とは、「自己管理」の意味で、目標の達成や自己実現のために自分自身を管理することを指す。管理する対象は、時間や感情、体調、仕事のタスク、仕事に対するモチベーション・集中力など多岐に渡る。ここでは、まずセルフマネジメントが注目されている理由とセルフマネジメントを構成する要素について見ていこう。●「セルフマネジメント」が注目されている理由
まずは「セルフマネジメント」が注目されている3つの理由を解説する。(1)テレワークの普及
テレワークの普及に伴う働き方や人事評価制度の変化が、「セルフマネジメント」が注目されている理由の1つだ。新型コロナウイルス感染症の流行により、多くの企業がテレワークを導入した。テレワークでは生活空間と同じ場で働くことになるため、集中力の維持やオン・オフの切り替えが重要になる。また、テレワークの導入を機に、より成果主義に基づいた人事評価制度に変えた企業も増えてきている。普段の働きぶりが見えないテレワークであれば、自然な流れと言えるだろう。こうした働き方や人事評価制度の変化により、タイムマネジメントや集中力の維持といったセルフマネジメントの重要性が増しているのだ。
(2)自己成長ができる
企業が自己成長のできる人材を求めていることも、「セルフマネジメント」が注目されている主な理由だ。日々めまぐるしく変化するビジネスの世界において、自己成長のできる従業員は企業にとって大きな戦力になる。自己成長なくして、時代の変化に対応することはできないからだ。そして、自己成長をするにはセルフマネジメントが重要になる。外部からの誘惑・娯楽に負けずに自己研鑽したり、仕事のモチベーションを維持したりといったセルフマネジメントをすることで、自己成長を加速させることができる。
(3)働き方改革の推進による、生産性向上のため
働き方改革の推進により、企業が生産性向上を目指し始めたのも「セルフマネジメント」が所以だ。現在、多くの企業が働き方改革の一環として、長時間労働の是正に取り組んでいる。長時間労働を是正するためには生産性向上がマストだが、その生産性の向上にはセルフマネジメントが欠かせない。限られた時間の中で最大のパフォーマンスを発揮するためには、タスクや体調などの自己管理が重要だからだ。今後も企業が生産性向上を目指す限り、セルフマネジメントはますます注目されていくだろう。
●「セルフマネジメント」を構成する要素とは
「セルフマネジメント」を構成する要素として、例えば以下の5つが挙げられる。・メンタルヘルスケア
メンタルヘルスケアには「ラインによるケア」や「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」などがある。セルフマネジメントでは、従業員が自分自身で心のケアを行う「セルフケア」が重要だ。
・レジリエンス
「回復力」や「復元力」とも訳される。困難やストレスに対して柔軟に適応・回復し、すぐに立ち直ることができる「しなやかな強さ」のことを指す。
・マインドフルネス
今この瞬間の自分の状態に意識を集中させた状態のこと。瞑想をすることで、マインドフルネスの状態に到達することができる。
・アンガーマネジメント
「ムカッとしても6秒待つ」、「感情を記録する」など、怒りの感情と上手く付き合うための心理トレーニングの1種だ。
・キャリアデザイン
将来なりたい自分を実現するために、キャリアを主体的にプランニングしていくこと。
上記はいずれもこれからの時代に高めていきたい要素ばかりだ。
「セルフマネジメント」は企業や組織に何をもたらすか
「セルフマネジメント」の好影響は、従業員個人にとどまらない。ここでは、従業員がセルフマネジメント能力を身につけることにより、企業や組織へもたらす以下3つのメリットを解説する。(1)業務の効率化
「セルフマネジメント」は、タスク管理やタイムマネジメントも対象だ。そのため、従業員がセルフマネジメント能力を身につけてタスク管理・タイムマネジメントをすることで、業務の効率化が進むだろう。そしてそれは、企業全体の生産性向上へと繋がっていく。逆に考えると、企業が生産性を向上させるには、セルフマネジメント能力の高い従業員を育成することが重要になる。(2)自分の感情や行動のコントロール
「セルフマネジメント」能力を高めることで、従業員は自身の感情や思考をコントロールし、その場に合った適切な行動をとれるようになる。感情的になると、極端な思考・行動に走ってしまいそうになるもの。ただ感情に任せて行動していては、人間関係の悪化や仕事の質低下を招きかねない。言い換えれば、セルフマネジメント能力を身につけ、自分の感情や行動をコントロールできる従業員が増えれば、人間関係が良好で、質の高い仕事をする企業になれる可能性が高まる。(3)体調やメンタルの安定化
「セルフマネジメント」には、メンタル面や体調面のセルフケアの要素も含まれる。メンタルと体調を管理・ケアできる力=セルフマネジメント能力を従業員に身につけてもらえれば、例えば仕事でミスをしたときにも、「次は頑張ろう」とすぐに切り替えられる従業員が増えてくるだろう。また、急な体調不良で休む従業員も少なくなることが期待される。こうした従業員が増えることは、企業にとっても大きなメリットになるだろう。できる人とできない人の間にはどのような能力の差があるのか
「セルフマネジメント」が重要なのは間違いないが、セルフマネジメントができる人とできない人がいるのも現実だ。両者には一体どのような能力の差があるのだろうか。それぞれの能力や特徴を列挙して確認してみよう。●セルフマネジメントができる人の特徴
・自分のキャパシティを把握している自分のキャパシティを把握している人は、「できるタスク」と「できないタスク」を区別し、場合によってはできないタスクを得意な人に任せられる。
・タスクの優先順位をつけられる
本当にやるべきタスクから取り掛かることができるため、適切なタスク管理やタイムマネジメントができる。
・前向きな考え方ができる
仕事をしていれば予期せぬアクシデントは付きものだ。前向きな考え方ができる人は、アクシデントが起こったとしても必要以上にストレスを抱えず、すぐに解決へと動き出すことができるだろう。
●「セルフマネジメント」ができない人の特徴
・完璧主義で物事にこだわり過ぎてしまう傾向がある完璧なアウトプットをしようとするあまり、時間やタスク管理が疎かになってしまう。
・人にお願いするのが苦手
人に任せるのが苦手なため、自分でタスクを抱えてしまう。
・ストレス発散方法を持っていない
ストレス発散方法を持っておらず、ストレスを溜め込んでしまいがち。メンタル面の管理が行き届かない。
セルフマネジメントが苦手な人は、まずは「少しずつ苦手なタスクを得意な人にお願いしてみる」、「ストレス発散方法を探してみる」など、自分が取り組みやすいことから着手し、改善を目指してみてはいかがだろうか。
「セルフマネジメント」を身につけるためのポイントとは
「セルフマネジメント」は一朝一夕で身につくものではない。セルフマネジメントをできるようになるには、普段から意識して考えることが必要だ。ここではセルフマネジメントを身につけるためのポイントを3つ解説する。●自分自身の行動の癖や特性を分析
「セルフマネジメント」を身につけるにあたり、自分自身の行動の癖や特性を分析することは非常に重要だ。例えば、自分に以下のような行動の癖・特性があるとする。・30分に1度、5分間休憩を細かく取ると集中力が続く
・一度長い休憩を取ってしまうと、仕事再開まで時間がかかる
・1日6時間以下の睡眠では、翌日の昼に必ず眠くなり、仕事に支障が出る など
この場合、長い休憩は取らずに、細かい休憩を取った方が仕事の進みが早いことがわかる。そのため「休憩を細かくとる」というセルフマネジメントが効果的だろう。このように行動の癖や特性を分析し、理解しておくことはセルフマネジメントを身につける上で重要だ。
●定期的に自分の思考や感情と向き合う
定期的に自分の思考や感情と向き合うことも、「セルフマネジメント」を身につける上で大切だ。仕事・プライベートを問わず、自分がとった行動について、「どのような思考・感情でそのような行動をとったのか」を振り返ってみる。そうすることで、自分が抱く思考・感情とそれらに起因する行動パターンを理解することができる。思考・感情と行動パターンをいくつも把握しておくことで、仕事で同じような思考・感情に陥った際にも、自分の行動をコントロールする参考になるはずだ。●楽しいと思えることもコントロールできるようにする
盲点なのが、「セルフマネジメント」は「楽しいこと」も対象である点だ。セルフマネジメントでは、好きなゲームをする時間や漫画を読む時間、飲酒の時間・量など、自分が楽しいと感じることもコントロールしなければならない。ゲームをして夜更かしをしてしまい、翌日の仕事に支障が出てしまえば、それはセルフマネジメントができているとは言えないからだ。楽しいと思えることでも時間や量をあらかじめ決めておくなど、意識してセルフマネジメントをしてみよう。変化が激しい現代社会において、セルフマネジメントはますます重要になると予想される。
しかし、セルフマネジメントは容易に身につくものではなく、従業員自身の継続的かつ能動的な姿勢が求められる。人事担当者は、長期的な目線でセルフマネジメント能力の高い従業員を育成することで、従業員ひいては企業全体の能力を底上げすることができるだろう。
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