「障害者雇用促進法」が2020年4月に改正されて、約1年になります。2020年度の改正の中では、「もにす認定制度」(中小企業の障がい者雇用推進のため一定の基準をクリアした企業を認定)と「特例給付金」(20時間未満で働く障がい者を雇用した企業への給付金)という制度が創設されました。今回は、この2つの制度について解説していきます。もにす認定制度は、昨年から各都道府県で認証が進んできていますし、特例給付金の申請・支給は、今年度からスタートします。それぞれが、どのような制度なのかを見ていきましょう。
「改正障害者雇用促進法」(2020年4月改正)の新制度、「もにす認定制度」と「特例給付金制度」の内容とポイントとは?

障がい者雇用の取り組みで優良な中小企業を認定する「もにす認定制度」

「もにす認定制度」とは、障がい者雇用の促進および雇用の安定に関する取り組みの実施状況などが優良な中小事業主を厚生労働大臣が認定する制度のことです。この「もにす」という愛称は、企業と障害者が共に明るい未来や社会に「共に進む(ともにすすむ)」ことを期待して名付けられました。

この制度が創設されたのは、大企業と比べて中小企業の障がい者雇用は進んでいないという状況を打破したいという背景があります。障がい者雇用の取り組みに優秀な中小事業主を厚生労働大臣が認定し、企業にメリットとなるインセンティブをつけることによって、中小企業の障がい者雇用を活性化していくことが目的とされています。そのため2020年4月施行の障害者雇用促進法改正の中に、障がい者雇用に関する優良な中小事業主認定制度が含まれることになりました。

令和2年の障害者雇用状況の集計結果を見ても、中小企業の障害者雇用は大企業よりも難しい状況が見られています。従業員が1,000人以上の企業では、法定雇用率を達成していますが、従業員数が少なるごとに法定雇用率達成の割合は低くなっており、従業員45.5~100人未満で1.74%となっています。

「もにす認定制度」に認定されると、次のようなインセンティブがあります。

・自社の商品・サービス・広告などに「認定マーク」を表示することができる
・日本政策金融公庫の低利融資対象となる
・厚生労働省、労働局、ハローワークなどのホームページへの掲載など、周知広報の対象となる
・公共調達などにおいて加点評価が受けられる場合がある(基準は公共調達を実施する公共団体によって異なります)


また、他社が参考にし、中小企業全体で障がい者雇用を推進させられるよう、「もにす認定制度」の認定企業は、障がい者雇用における地域のロールモデルとして公表されます。
「もにす認定制度」認定マーク

「もにす認定制度」認定マーク

■申請方法と評価基準

障害者雇用優良中小事業主の申請ができる事業主は、従業員が 300 人以下の事業主となっており、認定を希望する場合には、申請書類一式を管轄する都道府県労働局に提出します。認定の審査には、概ね3ヵ月程度かかるようです。

資料の詳細については、下記を参照ください。

「もにす認定制度」の評価項目は、大きく次の3つの点にわけられています。
◆取組(アウトプット)
◆成果 (アウトカム)
◆情報開示(ディスクロージャー)


それぞれの項目の中項目、小項目は次の点です。

◆取組(アウトプット)
・体制づくり
 -組織面
 -人材面
・仕事づくり
 -事業創出
 -職務選定・創出
 -障がい者就労施設等への発注
・環境づくり
 -募集・採用
 -働き方
 -キャリア形成
 -その他の雇用管理

◆成果 (アウトカム)
・数的側面
 -雇用状況
 -定着状況
・質的側面
 -満足度
 -ワーク・エンゲージメント
 -キャリア形成

◆情報開示(ディスクロージャー)
・取組(アウトプット)
 -体制
 -仕事
 -環境づくり
・成果(アウトカム)
 -数的側面
 -質的側面

認定を受けるには、評価基準以上の点数を得ること、実雇用率が法定雇用率を下回っていないこと、障がい者を雇用していること、障害者雇用促進法などの法令に違反していないことなどが求められます。

今までの障がい者雇用の取り組みでは、障がいへの配慮や人材面の育成などの環境づくりに注目されていることが多かったように感じますが、評価基準の中には、組織づくりや事業創出などの点も重視されており、企業としての組織づくりや雇用について、意識されていることがわかります。

週20時間未満の障がい者を雇用するときに支給される「特例給付金制度」

■特例給付金制度とは

「特例給付金制度」は、週20時間未満の短時間就労を希望する障がい者の雇用機会をつくり、企業が取り組みやすいものとすることを目的に創設された制度です。週20時間未満の短時間労働者を雇用する事業主に対して、特例給付金が支給されます。

企業が障がい者雇用としてカウントできるのは、週30時間以上働く障がい者1人に対して1カウント(重度は2カウント)、週20時間以上働く障がい者1人に対して0.5カウント(重度は1カウント)となっています。現在の障害者雇用率制度では、障がい者の職業的自立を目的としていることから、障がい者雇用としてカウントできるのは、週の所定労働時間 20 時間以上となっているためです。

なお、精神障がいについては、時限措置で、週20時間以上の勤務で、0.5カウントが1カウントにすることもできます。詳細は、以下の関連記事を参照ください。


そのため企業では、週20時間未満で働く障がい者を雇用することは、障がい者を雇用しても雇用率のカウントにならない、また、助成金の対象にもならないということで、なかなか取り組みづらいものとなっていました。

しかし、就労希望している障がい者の中には、障がいの特性から週所定労働時間 20 時間未満を希望する人がいます。近年、精神障がい者の雇用が増えていますが、その中には週20時間の労働は厳しいものの、全く働けないわけではなく、ごく短時間であれば働ける人も少なくありません。特例給付金制度では、このような障がい者が働く機会を広げることが期待されています。

支給対象となる障がい者は、障害者手帳等を保持し、1年を超えて雇用されること(見込みを含む)、また週の所定労働時間が10時間以上20時間未満となっています。なお、週所定労働時間が10時間以上20時間未満であっても、実労働時間が10時間未満であった障がい者は対象に含まれません。また、週所定労働時間が20時間以上であっても、実労働時間が10時間以上20時間未満であった障がい者は、対象に含まれることになります。

■申請方法と支給金額

「特例給付金制度」は、障害者雇用納付金制度に基づくもので、「障害者雇用納付金」、「障害者雇用調整金」、「報奨金」などと一緒に申請できます。制度自体は、令和2年度から始まっていますが、申請・支給は令和3年度からです。

●申請方法
「特例給付金制度」は、申請しやすいよう「障害者雇用納付金」、「障害者雇用調整金」、「報奨金」と同じ時期に、同じ方法で実施されます。申請手順にそって申請書を作成し、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構のホームページから電子申請するか、機構都道府県支部へ郵送もしくは持参して提出します。

●申請手順
(1)常用雇用労働者の人数を把握
(2)雇用している障がい者の人数を把握
(3)申請書を作成
(4)申請書を提出

●申請対象期間と申請期間、支給時期
基本の申請方法、申請期間は下記のとおりですが、年度のカレンダーによって、日にちが若干変更前後します。必ず、該当年度の特例給付金支給申請書を確認し、申請するようにしてください。

・申請対象期間
申請年度の前年度の4月1日から翌年の3月31日まで
・申請期間
従業員100人以上の企業 申請年度の4月1日~5月15日
従業員100人以下の企業 申請年度の4月1日~7月31日
・支給
申請年度の10月1日~12月31日

●支給金額
支給金額は、以下の通りです。

・従業員が100人以上の企業
7,000円/人月
・従業員が100人未満の企業
5,000円/人月

申請手続きの詳細については、下記を参照ください。


障がい者雇用の制度は年々変化しつつあります。障がい者雇用の促進をはかるために、いろいろな施策が準備されていますので、上手に活用しながら進めてください。
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