新型コロナ禍で人やモノの流れが様変わりする中、働き方改革やビジネスモデルの変革に取り組む企業も多いことと思います。多くの日本企業がさまざまな経営改革に着手しており、「改革の目的を予定通りに達成するのは容易ではない」と感じている経営者が多いのではないでしょうか。この度、EY Japan ピープル・アドバイザリー・サービス(以下、EY)が産業能率大学 経営学部 小出琢磨教授(経営学博士)の支援を受け実施した調査では、過去3〜5年間に開始された経営改革のうち、完全に成功した改革は19%にとどまることが判明しました。では、この「19%の成功した改革チーム」は、成功に導くために何を行ったのでしょうか?

調査概要

現在、多くの日本企業が大きな転換期を迎えています。経済や社会の急激な変化は、企業の経営改革を加速させますが、経営改革を「成功」へと導くことは容易でなく、企業はその成功方法を模索しています。このような企業を支援すべく、EYでは「経営改革の成功要因」を明確にすることを目的とした市場調査を、日本において行いました。

本調査では250以上の企業から得た回答をもとに、さまざまな範囲(既存事業改善・拡大、新規事業立ち上げなど)や、規模(全グループ会社、1社単体、複数部門、単体部門など)の経営改革の日本特有の状況について分析を行っています。

調査結果は、改革がより複雑化しており、改革の導入を加速させ、成功させるためには、「専属のチェンジマネジメント要員と活動」が鍵であることを反映しています。ここでの「チェンジマネジメント」とは、改革において「ヒト」と「組織」に着目した、改革をスムーズに進めるための手法です。経営層から一般社員に至るまで改革の受容度を測定し、改革によるヒト/組織・業務・システムへの影響を詳細に分析して、改革を成功に導き、定着させるための施策を実行していきます。

日本における経営改革の傾向

企業が経営改革を実施する目的はさまざまですが、本調査によると、過去5〜7年間において最も多く実施されたのは「既存事業の拡大・強化」(65%)、2番目は「経営効率の向上」(59%)でした。

また、最も困難な種類の改革に挙げられたものには、「新規事業開発・既存事業の大幅な方針転換」(33%)と「部門横断的テーマ」(27%)が含まれました。

一方で、将来計画している、または、未定だが実施したいと考える経営改革は、「新規事業開発、既存事業の大幅な方針転換」(78%)や、「部門横断的テーマ」(76%)であり、現行との違いが見られました。

将来目指しているこれらの改革は、関係者が多く、複雑で、難易度が高いという特徴があります。

経営改革を推し進めることは容易ではないと考えられていましたが、やはり成功率は高いとは言えず、「当初予定していた目的・期間・予算をすべて達成した」という「完全なる成功」となったのはわずか「19%」という結果になりました。また、45%は、「目的・期間・予算のいずれも達成できなかった」ということが判明しました。

経営改革の成功要因

一方、改革の一環として、チェンジマネジメントの活動を行えば行うほど、改革の成功率は向上するという結果が見られました。では、どのようなタイプのチェンジマネジメント活動と、どのようなプロジェクト体制が、より成功しやすいのでしょうか?

●1.プロジェクト体制
改革におけるチェンジマネジメントは、さまざまな部署やチームが担当しており、特定の組織に偏る傾向は見られませんでした。チェンジマネジメントの主な担い手としては、経営企画部門(61%)、改革対象部門(62%)、プロジェクトチーム(54%)がより多く選ばれています。

また、チェンジマネジメントを担う部門・チームごとの改革成功率については、大きな差は見られませんでした。ここから言えるのは、「成功の要因は、どの部門・チームが担当するかというよりも、明確な役割を定義し専門の部隊を任命することが重要だ」ということになります。

●2.リーダーシップ

改革以前から保持する「リーダーシップの強さ」も、ビジネスの変化への適応に影響します。「改革前から保有していた能力や文化」のうち、経営改革の成功に寄与した要因として最も多く選択されたものの中には、リーダーシップや改革の目的を明確に示すこと、経営層とミドルマネジメントの合意形成がなされていること、そして、機能をまたいで協力し協業する強い文化などが含まれます。

これらの要素は、改革への貢献を高めることにつながるリーダーシップへの信頼を高めることに貢献します。

●3.従業員の巻き込み

改革では、上記で述べた企業が平常時から保有する力や文化に加えて、「積極的に関与する従業員」の存在が、変化をより早く受け入れる鍵となります。成功した改革の63%が改革期間中従業員の賛同を得ており、失敗した改革の30%と大きな差があります。

また、チェンジマネジメントを実施した企業は、従業員の賛同を得ていた割合がチェンジマネジメントを実施しなかった企業より19%も高いことが確認されました。従業員の関与を高めることに貢献する特定のチェンジマネジメント活動があります。
チェンジマネジメントを行うことで、改革に賛同する従業員を増やし、より早く変化に適応することができます。具体的には「改革について、従業員に十分に説明され、良く理解されている」、「改革の背景、ビジョン、ゴールは明確に定義されている」、「改革を推進するのに必要となるリソース(ヒト・モノ・カネ・情報)は十分に確保されている」が上位としてあげられます。

プロジェクトチームの計画の際には軽視されがちですが、このような活動を計画し実行するには時間と集中が必要です。

まとめ

経営改革の成功は、目的・期間・予算の達成により判断する場合が多いですが、これは表面上の成功です。改革の効果が持続し、企業成果へとつながっていくには、トップやミドルマネジメントだけでなく、関係する全従業員の賛同を得ることで、改革導入後、中長期にわたり持続的な成長をもたらす「真の成功」を得ることができます。

今後求められている改革は、これまで行ってきた改革より複雑で難易度が高いことがわかりました。すなわち、改革を成功させるためには、日本においてもチェンジマネジメントを部分的ではなく包括的行う要員を定めることが今まで以上に重要となります。

【追記】
(1)チェンジマネジメントにおける人事の役割に関する調査結果については、後日、別の記事でご紹介いたします。

(2)本稿の調査全般、改革・組織・組織能力に関する監修および学術的専門知識の提供:産業能率大学 経営学部 教授 小出琢磨(経営学博士)
【英語版の記事】
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English translation, Please click here to see the English version of this article.
「What are the key factors for a successful transformation? -Trends and importance of change management」
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