ベネッセグループ有志組織「One Benesse」は、7月25日(土)、アルムナイ交流会「ソーシャルセクターに関わる魅力とは? 人生100年時代の多様な働き方に迫る」をオンラインで開催した。社内外問わず多様な人々との交流を通じて、既存のタテ・ヨコの関係性ではない“ナナメ”の関係性を築く活動をしている「One Benesse」。同組織は、現職とアルムナイ双方の新たな価値創造に繋げるべく、ベネッセグループのアルムナイと現職の社員が交流するイベントを定期的に開催している。今回のテーマである「ソーシャルセクター」とは、社会課題の解決を目的としたNPOやNGOのことを指す。年齢は問わない、本業の傍らに取り組めるといった特徴を持っているため、ソーシャルセクターは人生100年時代のキャリアや副業・兼業を考えるうえでのヒントになる働き方と言えそうだ。今回の交流会では、実際に「ソーシャルセクター」に関わるベネッセのアルムナイと現職の社員が登壇した。本記事では、登壇者が語ったソーシャルセクターに関わったきっかけや、ソーシャルセクターに関わるうえでのポイントについて紹介する。
アルムナイ交流会に登壇したのは株式会社ベネッセホールディングスCEO補佐兼直島統括 三木 貴穂氏、一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ 運営統括マネージャー 佐川 久美子氏、NPO法人チャイボラ代表 大山 遥氏、公益財団法人ベネッセこども基金 青木 智宏氏の4名。

いずれもソーシャルセクターで働いている、または関わった経験を持っている方々だ。このうちベネッセグループの現職からは三木氏と青木氏が参加、アルムナイは佐川氏と大山氏の2名がそれぞれ参加している。

今回のイベントは、「ソーシャルセクター」がテーマとなっている。ソーシャルセクターとは、社会課題の解決を目的としたNPOやNGOのことを指す。年齢やキャリアに関係なく始められ、本業の傍らで取り組む社会人も多く、人生100年時代の働き方や副業・兼業を考えるうえでのヒントになる働き方と言えそうだ。

モデレーターを務めるのは、今回のアルムナイ交流会を企画した、NPO法人e-Education副代表 坂井 健氏。坂井氏もベネッセを卒業し、ソーシャルセクターに関わるアルムナイの一人だ。坂井氏は冒頭、「ベネッセの卒業生の多くは、社会の課題解決に取り組むソーシャルセクターに関わっています。そんな素晴らしい取り組みを多くの方に紹介したい、人生100年時代の働き方のヒントにしてほしい。そんな思いから、今回のイベントを開催しました」とイベントの主旨を語った。

「ソーシャルセクター」に関わったきっかけは、体験や問題意識から

前半のパートでは、まず登壇者の4名が、どのような形でソーシャルセクターに関わっている(関わった)のか、きっかけを説明した。

●一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ 運営統括マネージャー 佐川 久美子氏
同法人は、「対等な対話の場をつくる」をコンセプトに、完全に光を遮断した暗闇の中で、視覚障がい者の案内で視覚以外の様々な感覚やコミュニケーションを楽しむ「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の他、現在は3つのソーシャルエンターテインメントを運営している。ある時、その「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」を体験する機会があったという佐川氏。「体験中に、案内人の視覚障がい者の方から『大丈夫ですか』と、暗闇の中でサポートを受けたことに衝撃を受けた」ときっかけのエピソードを語った。障がい者はサポートされる立場にあると思い込んでいたことに気づき、見方を変えると他者との関係性が変わる素晴らしさに感動したそうだ。性別や肩書、年齢に関係なく、人が信頼し合い、助け合う社会を実現することを目指す同法人のコンセプトに共感し、ダイアローグ・ジャパン・ソサエティに現在勤めている。

●NPO法人チャイボラ代表 大山 遥氏
NPO法人チャイボラの代表を務める大山氏は、職員不足の解消に向けた児童養護施設の情報サイト運営や施設見学会のサポート、個別相談会などを行っている。ソーシャルセクターに関わったきっかけについては、「リニューアルで破棄されるベネッセの教材を、児童養護施設に寄付しようと思い、施設に問い合わせをした際に、施設の深刻な職員不足の現状を知り退職を決意した」と話す。ベネッセ卒業後は、児童養護施設で働くための資格を取得するため、夜間の保育士の専門学校に入学し、日中は施設の非常勤職員として働き始める。施設に関心を持った専門学校のクラスメイト達が施設と接点を持てず、施設のことを正しく知る前に別の道に進んでしまう。人手不足ゆえ、満足に子どもへの対応ができていない施設もある。学生と施設の両面から見ることで課題が明確になり、そこで大山氏は入学後の翌年、クラスメイトとともにチャイボラを設立した。

●公益財団法人ベネッセこども基金 青木 智宏氏
青木氏はベネッセの現職として、公益財団法人ベネッセこども基金に携わっている。同法人では、「子どもの貧困や重い病気、障がいを抱える子どもなどの支援活動をするNPOなどと連携して、自主事業や助成事業に取り組んでいる」という。青木氏は、同法人に携わる前から、本業とは別にソーシャルセクターの分野に関わった経験を持つ。以前は、こども英語教室の事業に携わり、学習塾とのアライアンスを担当。そのなかで直面した課題について、「地方の塾長達、本業の傍らで、地域の子どもの貧困や虐待の重要なストッパー役を担っている一方、資金や人手の不足で貧困や虐待を防ぐ活動が持続できなくなる現実を知りました」と話す。そこで、青木氏は、東京でソーシャルセクターのマッチングをサポートする食事会「ソーシャルごはん」を開催。これまで約70のNPO団体とコラボしてきた。

●株式会社ベネッセホールディングスCEO補佐兼直島統括 三木 貴穂氏
三木氏は、「2012年よりグローバルソーシャルイノベーション部の部長として2年間、ベネッセでソーシャルセクター分野に関わりました」と話す。ベネッセの新たな事業の立ち上げに関わり、アジアの新興国等における教育、保育関連等の社会的課題を解決する企業に出資するためのファンドを設立した実績を持つ。「ちょうど2010年前後は、ソーシャルセクターの分野でイノベーションが活発に起きている時でした。私は元々銀行員からベネッセに入社したのですが、ソーシャルセクターについての知識は持っておらず、ビジネスモデルを構築する難しさや、イチから学んでいく大変さがありました」と苦労を振り返った。

魅力は本業への原動力、ライフステージに合わせた働き方

後半のパートでは、人生100年時代のキャリアや副業・兼業を考えるうえで、ソーシャルセクターに関心を持つ方がいることに坂井氏は言及し、登壇者にアドバイスやポイントを尋ねた。

●青木氏
青木氏は、「ソーシャルセクターと言えば、壮大な社会課題を探しがちですが、自分の半径5メートルでいいので、社会のルールや常識に疑問を持ってみることが大事です。身近な問題は辿っていくと、社会課題に繋がっています」と話す。ソーシャルセクターは、社会課題の解決という比較的重いテーマの仕事ではあるが、始めるうえではそこまで気負わなくていいということだ。また、ソーシャルセクターに関わっていくポイントについて、「SNSやクラウドファンディングの活用することが重要です」と明かした。個人では、そう簡単に社会課題を解決することはできないため、周囲を巻き込んでネットワークを作っていくことが重要になる。例えば、副業・兼業として始めた際に、本業にはない新たなコミュニティに属すことができるのも魅力の一つだろう。

●佐川氏
佐川氏は「青木さんがおっしゃるように、私も最初は壮大な課題を持っていたわけではない」と語る。自身のエピソードに触れ、「今の仕事を一緒にしている視覚障がい者の同僚がコンビニに行くたびに店員の対応が変わっていきました。店員から声をかけられるようになったり、雪の日には点字ブロックが雪かきされていたり。自分の身近なところで、社会が変わっていくのを目の当たりにして、今の仕事の意義を感じていけるようになりました」と話す。自分の身近な周囲と社会課題がつながっている場合、やりがいをダイレクトに感じられるのもソーシャルセクターならではの醍醐味である。「最初から大きな課題を持つ必要はなく、自分の身の回りで気になったことから、活動を始めてみてください」とソーシャルセクターに関わるうえでのアドバイスを送った。

●大山氏
大山氏は「自分が一番興味あるものじゃないと、社会課題の解決に向けて人はそう簡単に行動できない」と語る。ただ全員が初めから社会課題に関心があるというわけではないことをうけ、「興味があるテーマがなくても、今はオンライン上でソーシャルセクター分野のセミナーが多く開催されているので、積極的に参加してみるのがいいと思います」という。セミナーに参加する効果について、「知ることから始めることで、問題発見につながるかもしれません。また、共感できたテーマは、どのように自分の力を活かせるのかを真剣に考えるので、解決すべき課題も見つけやく、前のめりに活動に参加していける。また仲間を見つけられるのも魅力です」と話す。青木氏とは別の観点から、セミナーを通じて新たなネットワークを構築でき、社外のコミュニティに参加できる魅力が語られた。

●三木氏
三木氏は、「例えばボランティアや兼業などでソーシャルセクターに関わって、新たなやりがいを見つければ、本業の原動力になると思います。社外で培った経験は、本業にも還元できます」と、本業とは別で取り組むことによるソーシャルセクターのメリットについて言及した。また、「ライフステージに合わせて、ソーシャルセクターに関わればよいのでは」という。ソーシャルセクターに関心があったとしても、出産や育児など、大きくキャリアの舵をきれない時がある。ライフイベントにあわせて、ソーシャルセクターへの関わり方を変えることは可能。また、人生100年時代と呼ばれる昨今、定年後やシニアでもソーシャルセクターにはいくらでも関われるし、役に立てる範囲は広い。三木氏は「例えば、子どもの手が離れてから関わっても、全く遅くない」と提言し、イベントは幕を閉じた。
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