「就職活動を大学4年4月解禁へとの政府提言」に関する緊急アンケート調査結果報告スケジュールの変更では解決しない日本の新卒採用

3月15日付の日本経済新聞によると、政府は2015年卒から企業による大学生の採用活動の解禁時期を現在の「3年生の12月」から「4年生の4月」に、選考活動開始を現在の「4年生の4月」から「4年生の8月」にそれぞれ遅らせることを経済界に提言する方針を固めたとのこと。
「学生が学業に専念する期間が延びる」「海外で学ぶ留学生の就職活動機会が広がる」が主な理由だ。
倫理憲章に加わらない外資系企業など、早期に活動する企業に優秀な学生を今以上に囲い込まれること、中小企業の採用活動はさらに遅れて制約を受けることなどが懸念されている。
HR総合調査研究所では、人事担当者を対象に緊急アンケートを実施した。企業側は、今回の政府方針をどう受け止めたか?

政府方針を「よい」と評価したのは4社に1社

政府の方針について「よい」と評価する企業は全体で25%しかなく、「よくない」とする企業が43%と大きく上回っている。特に中小企業では、「よい」20%に対して「よくない」49%と圧倒的に否定的な意見となっている。
「就職活動が春休みにできないということは、結果的に学業に影響が出てくる」「一昨年、企業の採用活動の解禁時期を2カ月遅らせただけでも、学生の情報収集面での弱体化が話題になった」「学生も企業側も二極化が顕著になる。そもそも人生を左右する問題に政府が介入すること自体がナンセンス」「現状を時期の問題にしていることが、そもそも可笑しい」と手厳しい。

図表1:政府方針をどう思うか

時期を変更しても「学業に専念すると思わない」が過半数

今回の方針の目的のひとつである「学生の学業に専念」については、「専念すると思う」企業は15%しかなく、「専念すると思わない」企業が54%と過半数を占める。中小企業の意見はもっと厳しい。 「専念すると思う」は11%に対して「専念すると思わない」は60%に達する。時期の問題で解決するような単純なものではなく、大学教育の在り方や個人の問題であると指摘する声が多い。

図表2:学生は学業に専念すると思うか

就活時期の変更で海外留学が増えると評価するのは2割以下

「海外への留学生増加」についても、「増加すると思う」企業は19%しかなく、「増加するとは思わない」企業の方が35%と多くなっている。企業規模別にみると、こちらも中小企業ほど厳しく見ており、「増加すると思う」はわずか8%に止まり、逆に「増加するとは思わない」は46%に上る。
「留学生が減り続けている要因は採用時期の問題だけではない」「3年時までに留学すればよい」「数%の留学生のために全体のスケジュールを変更する必要があるのか」などの意見がある。

図表3:海外への留学生は増えると思うか

スケジュールは「守られる」と考えるのはこく少数派

仮にこのスケジュールになった場合に、企業は「守れると思うか」を聞いたところ、「守れると思う」はわずか6%しかなく、過半数の53%は「守られなくなると思う」と回答している。
「現状の護送船団的な採用/就職方法は、全く合致しない」「日本独自の採用形態が国際的に合わないのであれば、早晩守る企業も減少する」「学生・企業とも自由競争にするべし」「インターンシップという名の選考は現状でも実質執り行われている。そういう例外がある限りどこも事前の活動は行い続ける。結果形骸化する」と、様々な意見が寄せられた。

図表4:4月解禁、8月選考は守られると思うか

倫理憲章に賛同しない企業の採用活動はより有利に

外資系などの倫理憲章に賛同しない企業の採用活動がより有利になるかを問うたところ、「どちらともいえない」との声も多いが、「より有利になる」と考える企業43%と、「変わらない」(18%)とする企業を大きく上回った。
「優秀な学生程、早くから活動しているから」「ほかの企業が選考を行っていない状態で選考ができるから」「早く内定を受ければ、活動をやめてしまう学生は出てくると思う」なとが有利になる主な理由だ。

図表5:外資系などの倫理憲章に賛同しない企業の採用活動が有利になると思うか

中小企業の過半数が「中小は不利になる」と認識

今回の方針は「中小企業に不利になるか」との問いには、全体の48%が「不利になる」と回答し、特に中小企業では56%と過半数が「不利になる」との危機感を抱いている。
「採用方法の独自性が発揮しにくくなる」「ズルズルと活動が後ろ倒しになり,翌年の春まで活動が続くのではないか」「時間の短縮は中小に目をむける時間を奪うことが多い」との悲鳴が上がっている。

図表6:中小企業は不利になると思うか

「学業に専念」「留学生増加」の目的達成にはきわめて否定的

政府方針を「よい」と評価する企業が、今回の方針の目的である「学生の学業に専念」「海外への留学生増加」を「解決できる」と考えているわけではない。「解決できる」と考える企業は全体でわずか10%に過ぎない。大手企業では6%、中小企業では7%しか解決できるとは考えていない。逆に「解決できない」と考えている企業は全体で63%に及んでいる。
「そんなに単純なものではない」「選考期間よりも、教育制度や留学に対する奨励制度の整備が必要」「学生の意識次第であり、就職活動時期は結局言い訳でしかない」「教育システム全体の問題であって、採用だけの話ではない」と、本来の目的の解決には程遠いとの厳しい意見が続く。

図表7:採用活動の時期を変更することで解決する問題だと思うか

現在の新卒採用についての改善提案

現在の新卒採用についての意見や改善提案が多く寄せられたので、ご紹介したい。

・終身雇用の廃止、新卒一括採用の廃止、契約社員・派遣社員の原則禁止、同一労働同一賃金の徹底など雇用の流動化と労働者の権利保護を徹底すべき。
・『解禁日』なるものは撤廃し、学生がいつでも、企業と接点を持てるようにすることが望ましい。1〜2日や1週間程度ではなく、数年にわたるインターンシップ制を広めることで、学生に企業を良く知る機会を提供し、お互いに選択し合える環境を築きたい。
・大学での教育に「社会で仕事をすることとはどういうことか」を加えて、企業での就労経験等をもっと取り入れた方が良いと思う。就職活動が在学期間において特別な期間で、その間は学業ができないという前提にたっていること自体に違和感を感じる。
・採用活動時期の変更より学生が大企業に片寄らないよう中小企業の新卒採用への支援事業等を進めるべきである。
・3年生〜4年生の春休み期間を有効に活用する仕組み(業界研究、インターンなど)がもっとあっても良いと思う。
・大学4年生の秋ぐらいから就職活動スタートぐらいが良いと思う。4月から開始は中途半端。しっかり勉強してからということであれば、卒業してからの活動がベストかと思います。
・すべて卒業後に実施すべき。在学中はインターンシップやワークプレイスメントのような就業体験を積極的に取り入れ、学業と実践をうまくコラボレートすればいいと思う。
・大学生の採用開始と選考開始の時期の問題は、高校生の求人開始と選考開始の時期と重ならないように判断してほしい。
・新卒を競い合って採用する時代ではないと考える。必要なときに必要な人材を採用し、活用するジャストインタイムの考え方が必要と考える。
・企業も学生ももっと自由にやれれば良いと思う。なんでも規制する時代ではない。
・一定のルールが存在することで、学生や企業にとって都合のいいこともある。基本的にはルールは必要であるが、過度に前倒しや後ろ倒しにすることは、結局、学生や企業、双方にとっていいものではなくなる。
・学業に専念させたいのならば、就職活動の見なおしというよりも学生自身の進路選択・社会人との接触時期を早め、学業の1つとして就職を学ぶべき。
・人材の送り手側である、大学のシステム変革がまず必要。長期の休暇(夏・春)を短縮し、受験実施時期などを見直すことなど。
・就職ナビサイトの廃止。企業はターゲット大学に求人票を送り、学生もそれを見て応募する形式に戻す。
・新卒一括採用ではなく多様な就職機会の提供、ライフステージでの転職が当たり前となる社会システムの構築(就労20年定年制を社会システムとして構築し、40歳就職、60歳就職を義務化する)。
・就職難と企業ばかりが叩かれる中、学生の質が落ちている事を把握して頂きたい。企業だけに問題があるのではなく、就活学生にも問題がある方が増えております。大学側での指導に疑問です。
・社会の動向にもっと学生が関心を持ち、問題意識を持たせることが大切。それがないままに就職活動に追いたてることが問題である。

【調査概要】

調査主体:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2013年3月18日〜3月21日
有効回答:195社(1001名以上 51社, 301〜1000名 59社, 300名以下 85社)