様々な産業の分野でデジタル化が進む中で、その変化にスムーズに対応し、事業やサービスを構築していくことは多くの企業にとって急務であると言える。そのためにも、時代の流れを見据えて今後必要とされるスキルや知識を、新たに習得する「リスキリング」の取組みは重要性を増している。
特に、近年DX推進に取り組む企業が増える中で、高度な専門性を持ったデジタル人材を獲得する戦略としてリスキリングが語られることが多くなっている。こういったDX人材を育成するためには社内での研修のみでなく、社外の研修プログラムの活用や、他社・外部機関との連携等、多方面からの取組みが必要となる。
HR総研は、各企業のリスキリングの取組み実態と課題について最新動向を調査した。調査結果をフリーコメントも含めて以下に報告する。

社員のリスキリングに「既に取組んでいる」大企業は5割、中堅・中小企業は2割

まず、企業がリスキリングの推進に取り組む必要性についてどのように認識しているかを見てみる。
企業規模別に見てみると、従業員数1,001名以上の大企業では「取り組む必要がある」が90%となっており、301~1,000名の中堅企業では73%となっている。300名以下の中小企業では、「取り組む必要がある」は58%となっており、企業規模が大きいほど取り組む必要性があると感じている企業が多いことが分かる(図表1-1)。

【図表1-1】企業規模別 リスキリングに取り組む必要性に対する認識

HR総研:社員のリスキリングに関するアンケート 調査報告

また、実際の社員のリスキリングへの企業の取組み状況について、企業規模別に見てみると、「すでに取り組んでいる」の割合は大企業では47%であるのに対し、中堅企業では20%、中小企業では19%となっており、大企業で顕著に取組みが進んでいることが分かる。「今後も取り組む予定はない」は、大企業では15%であるのに対し、中小企業では40%と4割が取り組む必要性を感じていない、もしくは必要性を感じていながらも優先順位が低く取り組めない状況にあることが分かる(図表1-2)。

【図表1-2】企業規模別 リスキリングへの取組み状況

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デジタル・IT関連で習得してほしいスキルは「データ分析・統計」が最多で7割

続いて、企業がリスキリング推進に取り組む目的や、育成のターゲットとしているスキルについて見てみる。
まず、「リスキリング推進に取り組む目的」については、「業務効率化のため」が最多で75%、次いで「既存事業のビジネスモデルの見直しのため」が45%、「社内のITリテラシーの底上げ」が40%などとなっている(図表2-1)。これらの上位項目を見ると、社員のリスキリングは新規分野へ進出する企業に限らず、既存事業の中で成長を志向する企業においても必要性が認識されていることが分かる。また、8割近くが挙げている「業務効率化」をすることでコストや人的負担の削減に繋がり、さらには企業の生産性向上や業績向上へと繋がることも期待できるだろう。

【図表2-1】社員のリスキリング推進に取り組む目的

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「リスキリングの取組みにより社員に習得してほしいスキル」については、「IT・デジタルリテラシー・スキル」が最多で75%、次いで「ロジカルシンキング」が52%、「マーケティングスキル」が43%などとなっている。2022年に実施した前回調査と比較すると、「IT・デジタルリテラシー・スキル」がトップになっている点など上位に挙がる項目は概ね同様であり、ITリテラシーの向上やDX人材の確保を念頭に置いている企業が多いことが分かる。ただし、ほとんどのスキルについて今回調査の方が高い割合を示しており、社員のリスキリングに対する関心が高まっていることがうかがえる。特に「マーケティングスキル」は前回の33%から9ポイント増加している(図表2-2)。

【図表2-2】リスキリングの取組みにより社員に習得してほしいスキル

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IT・デジタル関連に限定して「リスキリングの取組みにより社員に習得して欲しいスキル」を見てみると、「データ分析・統計」が最多で67%、次いで「ITリテラシー」が56%、「AI・ブロックチェーン等の先端技術」が24%などとなっている。こちらも前回調査から、上位に挙がる項目について大きな変動はないが、多くのスキルについて今回調査の方が高い割合となっており、特に「サイバーセキュリティ」については前回の10%から13ポイント増加している(図表2-3)。

【図表2-3】リスキリングの取組みにより社員に習得してほしいスキル(IT・デジタル関連 )

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社内人材のスキル可視化ができている企業は4割

社員のリスキリングに関する具体的な取組み状況について、まず社員が持つスキルなどの前提情報の把握や、会社方針の整理状況について見てみる。
「習得してほしいスキルの明示」については、「できている」(9%)と「ややできている」(39%)との合計が48%と5割ほどとなっているが、「社内人材のスキルの可視化」については、「できている」(7%)と「ややできている」(32%)との合計が39%と、約4割にとどまっている。また、「キャリアパスの明示」については、「できている」(6%)と「ややできている」(37%)との合計が43%と、こちらも約4割となっている(図表3-1)。

【図表3-1】社員のリスキリングに関する具体的な取組み状況(現状把握・方針整理)

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次に、計画の作成や実行体制の整備状況について見てみる。「育成計画の作成」については「できている」(6%)と「ややできている」(32%)との合計が38%と約4割となっている。「明確な目標設定(人数・期限等)」については「できている」(6%)と「ややできている」(25%)との合計は31%、推進の中心となる人材や学習環境等の、「リスキリング推進体制の整備」については合計が40%となっている(図表3-2)。「明確な目標設定」については最も取組みが進んでいない傾向にあるものの、人的資本経営の「人材版伊藤レポート」において提唱されている「動的な人材ポートフォリオ」と密接に繋がる重要な項目といえる。データドリブンな人材戦略を推進していくためにも、社員のリスキリングの明確な目標を設定して育成計画に連動させていくことが望まれる。

【図表3-2】社員のリスキリングに関する具体的な取組み状況(計画・体制)

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リスキリングの取組みが事業上の成果に繋がっている企業は5割

社員のリスキリング推進に既に取り組んでいる企業を対象に、成果の状況について、いくつかの観点から見てみる。「社員のスキル向上」については、「成果が出ている」(7%)と「やや成果が出ている」(49%)を合計した「成果が出ている派」(以下同じ)は56%となっており、6割近くの企業において、概ね期待通りにスキル向上が進んでいることが分かる。「成果が出ている派」の割合について「自発的な学びの習慣」では58%となっており、こちらも約6割近くの企業が成果を実感しているが、「事業上の成果」では51%と、成果を実感している企業の割合は比較的低い状況にある(図表4)。社員のリスキリングを新規事業の創出や既存事業の改革等の事業上の成果に繋げるためには、学んだことを活かす場の提供や、学んだことを積極的に活かす組織文化等、もう一段ステップが必要であることが分かる。

【図表4】社員のリスキリング推進に関する成果

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社員のリスキリングの成果が出ている企業の特徴は?

社員のリスキリングの成果と取組み状況との相関関係を見てみる。
相関関係とは、二つ以上の事象について一方の数値が増加すると、もう一方の数値が増加または減少するような関係のことである。一方の数値が増加したときに、もう一方の数値も増加する関係にある場合、「正の相関がある」といい、反対に減少する関係にある場合には「負の相関がある」という。相関関係を数値で表す「相関係数」(r)は-1.0~1.0の範囲で値をとり、この相関係数の値が大きいほど強い正の相関があり、0に近づくほど相関が弱い関係であることを表している。
図表5-1は、図表3-1~3-2で示した取組み項目と、図表4で示した3つの成果項目との相関関係を示した表である。
例えば、成果項目の「事業上の成果」と、取組み項目の「リスキリングを推進する体制」との相関係数は、0.68で、他の取組み項目と比べて「事業上の成果」との正の相関関係が最も強いことが分かる。一方、最も低い相関関係であるのは、「自発的な学びの習慣」と「習得してほしいスキルの明示」で相関係数は0.2となっている。したがって、社員のリスキリングを体系的に推進できる体制を整えることは、社員の学んだ成果を事業(ビジネス)にまで反映するために重要なポイントであることが分かる。また、取得してほしいスキルを会社から明示するだけでは、社員に学びの習慣を付けることは難しいということがうかがえる(図表5-1)。

【図表5-1】社員のリスキリングに関する取組み状況と成果の相関関係

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ここからは、成果項目ごとに各取組み項目との相関について詳しく見ていく。まず、「自発的な学びの習慣」に関する成果と各取組み項目との相関について見てみると、「リスキリングを推進する体制」との相関係数は0.64となっており、他の取組み項目と比べて最も高い値となっている。次いで「社内人材のスキル可視化」は0.50、「計画の作成」は0.49となっている。一方で「習得してほしいスキルの明示」は0.20と低い値となっている。相関関係が無いわけではないが強い関係性は示されておらず、企業が習得してほしいスキルや、社内でのキャリアパスを示すだけでは社員の自発的な学びを促すことは難しいことが読み取れる。したがって、社員の「自発的な学びの習慣」を付けるためには、実際に学ぶための一貫した環境を整備し、各社員のスキルレベルの可視化までデータドリブンに推進できている企業において、成果が出ていることがうかがえる(図表5-2)。

【図表5-2】「自発的な学びの習慣」に関する成果との相関

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新規事業の創出や既存事業における改善などの「事業上の成果」に関する成果と、各取組み項目との相関について見てみると、「リスキリングを推進する体制」との相関係数は0.68と最も高い値となっており、次いで「社内人材のスキル可視化」が0.58となっている(図表5-3)。「リスキリングを推進する体制の整備」と「社内人材のスキル可視化」はいずれの成果項目との相関係数も0.50以上と比較的高い値を示しており、社員の学びを促し、事業上の成果に繋げるまでのステップ全体において重要な項目であることが分かる。

【図表5-3】「事業上の成果」との相関

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リスキリングの成果が出ていない企業では従業員のモチベーションに課題感

「社員のリスキリングを進める上での課題」について、企業規模別に見てみると、いずれの企業規模においても「業務多忙で教育のための時間を確保できない」が最多となっており、時間的なリソース不足が取組みを進める上でのハードルになっていることが分かる。また、「スキル獲得に対する従業員のモチベーションが低い」は大企業では36%であるのに対し、中堅企業では54%、中小企業では48%と、大企業に比べて中堅・中小企業の方が社員のモチベーションに関する課題感を持っている企業の割合が高くなっている(図表6-1)。

【図表6-1】企業規模別 社員のリスキリングを進める上での課題

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次に、リスキリングの取組みにより「事業上の成果が出ている企業」と、「事業上の成果が出ていない企業」について、それぞれ課題感を見てみると、成果が出ていない企業の方が、成果が出ている企業よりも全ての項目において課題感を感じていることが分かる。中でも、「スキル獲得に対する従業員のモチベーションが低い」については成果が出ている企業では20%となっているのに対し、成果が出ていない企業では44%が課題として挙げており、特に顕著な差が見られた(図表6-2)。どれだけ学ぶための環境を整備しても社員の内発的な動機づけができていなければ、スキル習得やその先の事業上の成果に繋げることは難しい。この点は多くの企業が苦慮していることであるが、成果に繋げるためには避けて通れない課題であるといえる。

【図表6-2】事業上の成果別 社員のリスキリングを進めるうえでの課題

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事業成果が出ている企業は「スキルの可視化」への取組み率が2倍以上

「社員のリスキリング推進のために実施している施策」について、具体的に見てみると、「社内での研修の実施」が最多で74%、次いで「社外の研修・スクールへの派遣」が55%、「外部のe-learningプログラムの利用」が54%などとなっている(図表7-1)。

【図表7-1】社員のリスキリング推進のために実施している施策

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リスキリングの取組みにより「事業上の成果が出ている企業」と、「事業上の成果が出ていない企業」について、それぞれ取組み施策を見てみる。事業上の成果が出ている企業の方が、成果が出ていない企業よりもほとんどの項目について取り組んでいる割合が高かったが、「社内での研修の実施」「社外の研修・スクールへの派遣」「外部のe-learningプログラムの利用」等の学ぶ機会の提供に関する項目については、成果が出ている企業と出ていない企業で顕著な差は見られなかった。一方で、成果が出ている企業と出ていない企業で取組状況に顕著な差が見られる項目もあり、「社員の取得スキルの可視化 」(25ポイント差)や「副業・兼業の容認」(28ポイント差)については、成果が出ている企業の方が顕著に取り組んでいる割合が高かった(図表7-2)。これらの施策は社員が自分自身のスキルレベルを把握し、危機感やスキル習得の必要性を実感することに繋がるなど、社員の「学ぶ動機」にも繋がり得る項目である。学ぶ環境の整備と併せて学びの動機付けのための仕組みづくりにも取り組む必要があるだろう。

【図表7-2】事業上の成果別 社員のリスキリング推進のために実施している施策

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社員がネットワーク構築に積極的な企業、8割がリスキリング成果を実感

図表6‐2や図表7‐2から、学ぶための環境を整備するだけではリスキリングを成果に繋げるためには不十分であり、学びの動機付けなど社員のマインドチェンジが重要であることが分かった。社内で提供されるプログラムからスキルを習得するだけではなく、社内に限らず広く情報を参照する行動や、学んだスキルを業務の中で試行するような行動があって初めてリスキリングが成果に繋がると考えられる。ここでは、社員の行動傾向と、リスキリングの成果との関係性について見てみる。
まず、「新たな職務遂行の方法の探索」については「行動が見られる」(10%)と「やや行動が見られる」(39%)とを合計した「行動が見られる派」(以下同じ)は、49%と半数程度に上っている。「効率的・効果的な方法の試行」については「行動が見られる派」は52%とこちらも半数程度に上っているが、「外部ネットワークの構築」については、「行動が見られる派」は33%と約3割にとどまっている(図表8-1)。

【図表8-1】社員の行動傾向

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図表8‐1で示したような行動傾向が社員に見られる企業と、見られない企業とで、それぞれリスキリングの取組みによる事業上の成果を比較する。「新たな職務遂行方法を探索する行動が見られる」企業では、「成果が出ている」(15%)と「やや成果が出ている」(54%)とを合計した「成果が出ている派」は69%と、約7割となっているのに対して、「行動が見られない」企業では、「成果が出ている派」は僅か10%となっている(図表8‐2)。

【図表8-2】社員行動傾向(新たな職務遂行方法の探索)別 事業上の成果

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同様に「効果的な方法を試行する行動」に関しても成果との関係性を見てみる。「効果的な方法を試行する行動」が見られる」企業では、「成果が出ている派」が65%であるのに対し、「行動が見られない」企業では「成果が出ている派」は11%にとどまり、こちらも顕著な成果の差が見られた(図表8-3)。

【図表8-3】社員行動傾向(効果的な方法の試行)別 事業上の成果

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「外部にネットワークを構築する行動」については、行動が見られる企業では、「成果が出ている派」が80%となっており、8割で成果を実感していることが分かる。行動が見られない企業では「成果が出ている派」は23%となっており、こちらも顕著に成果の差が見られる(図表8‐4)。このように、社員が社内に限らず広く情報を参照し、かつ習得したスキルを業務の中で試行するような行動が見られる企業において、リスキリングが事業上の成果にまで繋がっていることが分かる。

【図表8-4】社員行動傾向(外部ネットワーク構築)別 事業上の成果

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社員のリスキリングに関する自由意見

最後に、社員のリスキリングに関する意見のフリーコメントから代表的なものを抜粋し、以下に紹介する(図表9)。

【図表9】「社員のリスキリング」に関する自由意見(一部抜粋)

「社員のリスキリング」に関する自由意見従業員規模業種
組織のニーズと個人のニーズをどこまですり合わせられるかが課題1,001名以上サービス
世の中的には必要なアクションだと思うが、製造に特化した子会社では、あまり縁がない1,001名以上メーカー
従業員間で、まだリスキリングの重要性を認識できていないと感じる。全社的にリスキリングの箱のようなものはあっても、従業員にそれを活用しよう、成長しようという熱量が無いように思う1,001名以上メーカー
社員の自発性を喚起するのが重要と考えているが、必ずしも上手くいっていない。推進する立場として、未来志向で説明するのか、危機意識を利用するのか、決断しきれていない1,001名以上商社・流通
主体は本人であり、企業はサポートをしていく。301~1,000名メーカー
その必要性と意欲を喚起することが難しいと感じ、言葉だけが先行している印象がある301~1,000名メーカー
社員が自発的に取り組むもので、それを会社が支援するという形式ではないか301~1,000名メーカー
本当に難しさを感じている。 社内の人事リソースが圧倒的に足りていないのが、リスキリング施策が進まない大きな要因。 外部HR系会社から提案は受けるが、どれも正直ピンと来ない。 社内でどうすればフィットするものを選択できるか日々悩んでいる301~1,000名商社・流通
今後の事業の方向性の明確化とそれに必要な人財の具体化が無いとリスキリングの方向が定まらないと考える301~1,000名情報・通信
会社からの要望もそうだが、本人の意志や意識が非常に重要300名以下マスコミ・コンサル
事業体制上、新たに専門性が求められる職務が生まれないためリスキリングのニーズもない。リカレント教育や自己啓発であればニーズを感じる300名以下マスコミ・コンサル
必要とは思うし、やった方が良いとは思うが、時間やコストに対する効果が見えにくく、周囲の理解を得ることは容易ではない300名以下メーカー

【HR総研 客員研究員からの分析コメント】

【HR総研 客員研究員からの分析コメント】

  • 曽和 利光氏

    株式会社人材研究所 代表取締役社長/HR総研 客員研究員 曽和 利光氏

    個々人に必要な「仕事経験」を割り出してアサインできる体制作りを
    リスキリングとは文字通り「再び新しいスキルを身につけてもらうこと」であるが、そもそも人はどのようにしてスキルを身につけるのだろうか。

    有名な米ローミンガー社の人材育成における「70:20:10」の法則では、人が成長する要因は仕事経験が7割、他者からの薫陶が2割、研修が1割とのことだ。実際、多くの人が「仕事が人を育てる」と言う。しかし、今回の調査では「配置転換によるスキル向上」等の仕事経験によるリスキリング施策は3割に満たず、ダントツの1位は74%の研修となっているのはやや気になるところだ。

    もちろん研修がダメなわけではない。仕事から得た経験をスキルとして定着させる「経験学習」の観点からも研修は重要だが、元々の必要な経験がなければ整理する機会ばかり与えても、せっかくの研修効果は最大化しない。また、一斉研修では、個人個人違うはずのスキルに合わせることができず、どうしても過不足が生まれそうだ。

    本質的には、社内人材のスキル可視化(「ややできている」以上の会社はまだ約4割)を行うことで、個々人にとって必要な経験を割り出し、それを補う経験ができる仕事のアサインを「個別に」行える体制を作ることが「リスキリングを推進する体制」ではないだろうか。

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】「社員のリスキリング」に関するアンケート
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2023年9月20~27日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者・担当者
有効回答:246件

※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照いただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
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※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
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