これまで前提とされてきた終身雇用の維持が困難であるとされ、一つの会社に勤め続けるというキャリアを描きにくくなる中、人材の流動化の動きが、今後、長期的視点で進展していくものと考えられる。
優秀な人材ほど転職への抵抗が少なく、転職によるキャリアアップを図るのが当たり前となる時代の中で、企業は優秀人材の離職をどのように捉えているのだろうか。また、定着率向上に対してどのような取組みをしているのだろうか。
HR総研では、定着率向上に関する、各企業の取り組み実態や、その効果について調査した。
以下に、フリーコメントを含めて調査結果を報告する。

<概要>
●離職率が高いと感じる企業は3割以上
●離職の原因「上司との人間関係」「業務内容のミスマッチ」が最多で4割
●企業規模が大きいほど対象を選抜して定着率向上に取り組む傾向
●定着率向上の取り組み「社内コミュニケーションの活性化」が最多で5割

離職率が高いと感じる企業は約3割以上

まず、「新入社員の3年以内離職率」については、「5%未満」が最多で19%、次いで「0%」が18%、「5~10%」が15%などとなっている。約半数の企業では1割未満の離職率である一方、「20%以上」(「20~25%未満」~「50%以上」の合計)の離職率とする企業は21%で、新人の定着に苦戦していることがうかがえる(図表1-1)。
次に、「自社の人材の離職率についての実感」については、「適正な値」は25%、「低い」は18%、「非常に低い」は20%となっており、これらを合計すると、離職率を適正な値以下に抑えられている企業は63%となっている。一方、「非常に高い」は4%、「高い」は29%で、適正値より高い離職率と感じる企業は33%となっている。離職率の適正値は業種や企業によって捉え方が異なると思われるものの、3割以上の企業が、自社における離職率の高さに課題を感じていることが分かった(図表1-2)。

【図表1-1】新卒新入社員の直近3年以内離職率

HR総研:「人材定着の取り組み」に関するアンケート 調査報告

【図表1-2】自社の人材の離職率についての実感(新入社員に限らず)

HR総研:「人材定着の取り組み」に関するアンケート 調査報告

離職の原因「上司との人間関係」「業務内容のミスマッチ」がともに最多で4割

次に、「離職の原因だと感じていること」については、「上司との人間関係」と「業務内容のミスマッチ」がともに最多で38%、次いで「待遇(給与・福利厚生)」が32%、「同僚・先輩・後輩との人間関係」が30%などとなっている。人間関係に関する2項目がともに上位にランクインしており、離職の原因となりやすいことが分かる(図表2-1)。
企業規模別で差異がある項目としては、「社内でのキャリアアップが見込めない」は従業員数1,001名以上の大企業で31%、301名~1,000名の中堅企業で24%、300名以下の中小企業では17%となっており、企業規模が大きいほど離職の原因となっていることがうかがえる。大企業では、「業務量の多さ」(22%)も他の企業規模より多くなっている(図表2-2)。
次に、「離職リスクの早期把握のために取り組んでいること」については、「評価時の面談」が最多で43%、次いで「人事面談」が41%、「サーベイ(社員満足度、エンゲージメント等)の実施」が31%などとなっている。「取り組んでいることはない」は18%であり、残り8割以上の企業は何らかの取り組みをしていることになるが、取り組みとしては面談等がメインであり、サーベイ等によるデータを活用した早期把握に取り組んでいる企業は、未だ3割強にとどまる(図表2-3)。

【図表2-1】離職の原因だと感じていること

HR総研:「人材定着の取り組み」に関するアンケート 調査報告

【図表2-2】企業規模別 離職の原因だと感じていること

HR総研:「人材定着の取り組み」に関するアンケート 調査報告

【図表2-3】離職リスクの早期把握のために取り組んでいること

HR総研:「人材定着の取り組み」に関するアンケート 調査報告

企業規模が大きいほど対象を選抜して定着率向上に取り組む傾向

次に、「定着率向上への取り組み状況」については、「特に取り組んでいない」が最多で40%、次いで「積極的に取り組んでいる」が28%、「一部の人材に対して取り組んでいる」が26%などとなっている。退職リスクの早期把握については8割以上の企業が取り組んでいるが、定着率向上のためのアクションまでを実施している企業は6割未満であることが分かる(図表3-1)。
企業規模別に見ると、「積極的に取り組んでいる」は大企業で19%、中堅企業で21%であるのに対し、中小企業では31%と他の企業規模と比較して高い値となった。一方で、「一部の人材に対して取り組んでいる」は大企業で33%、中堅企業で32%であるのに対し中小企業では21%であり、企業規模が大きいほど、対象を選抜したうえで定着率向上の取り組みを行っていることが分かる(図表3-2)。

【図表3-1】定着率向上への取り組み状況

HR総研:「人材定着の取り組み」に関するアンケート 調査報告

【図表3-2】企業規模別 定着率向上への取り組み状況

HR総研:「人材定着の取り組み」に関するアンケート 調査報告

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HRプロとは

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】人材の定着に関する取り組みの実態調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2021年4月23日~30日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者、担当者
有効回答:164件

※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照をいただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
2)当調査URL記載、またはリンク設定(URL:https://hr-souken.jp/research/2988/)
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  ・目的
Eメール: souken@hrpro.co.jp

※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
詳細につきましては、上記メールアドレスまでお問合せください。

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