ペーパーロジック株式会社は2023年8月8日、企業のペーパーレス推進状況を探るべく実施した「大企業の紙脱却における実態調査」の結果を発表した。調査期間は2023年7月20日~21日で、従業員数1,000名以上の大企業で法務・経理・総務部門に所属しており、電子帳簿保存法改正への対応業務に事務を含めて携わっている111名より回答を得た。本調査より、書類電子化の予定の有無やその理由、現状の課題などが明らかとなった。
2024年1月からの「電子帳簿保存法」義務化に向けた大企業の対策状況とは。“システムコスト”や“セキュリティリスク”を懸念か

書類の電子化を「全面的に予定」が6割超、「一部予定」が3割に

2022年4月、改正電子帳簿保存法が施行され、国税関係の帳簿・書類のデータ保存について抜本的な見直しが行われた。2023年12月31日までに行う電子取引については、「帳簿」や「領収書・請求書・決算書」などの電子データをプリントアウトして保存し、税務調査等の際に提示・提出できればよいとされている。しかし、2024年1月1日からは保存要件に従った電子データの保存が必要となるため、各企業では電子データを扱う準備が求められている。そのような中、大企業ではどの程度ペーパーレス化が進んでいるのだろうか。

はじめにペーパーロジックは、「電子帳簿保存法改正の対応に伴い、スキャナ保存可能な過去のものも含めた書類の電子化を予定しているか」を尋ねた。すると、「全面的に予定している」が64%、「一部予定している」が30.6%で、合計94.6%が、過去のものを含め書類の電子化を行う予定があることがわかった。
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全面的な電子化の理由は「業務の効率化」と「DXの推進」が最多

次に同社は、「書類の全面的な電子化を予定している」とした回答者を対象に、「その理由」を尋ねた。その結果、「業務の効率化」と「DXの促進」がいずれも70.4%で最も多く、次いで、「セキュリティの強化」が47.9%だった。

自由回答からは、「人件費削減のため」や「書類保管場所の削減のため」、「インボイス制度対応のため」の声が聞かれ、中には「紙と電子の両方を管理するよりは、電子データとして一元管理したほうがよいため」といった声も寄せられたという。
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書類の一部を電子化する企業では「領収書」や「契約書」が多数

続いて同社は、「書類の電子化を一部予定している」とした回答者に、「電子化を予定する書類の種類」を尋ね、上位15項目をまとめた。すると、「領収書」(67.6%)、「契約書」(64.7%)、「申込書」(50%)が上位を占めた。

上位15項目以外にも、「伝票」や「契約稟議書」、「社内資料」、「入金全般書類」、「社史」などの声があがったという。
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「電子化は一部」とした理由に、6割以上が「社内での運用ルールが不確立」と回答

また、同社は「書類の電子化を一部予定している」とした回答者に対し、「電子化を一部のみで予定している理由」を尋ねた。その結果、「社内全体での運用ルールを確立していないから」が64.7%と最も多く、以下、「試験的に進め様子を見極めたいから」が41.2%、「システム管理に手間がかかるから」が29.4%で続いた。
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電子化に伴う現状の課題として「コスト」や「リスク」を懸念する声も

最後に同社は、「書類の電子化における現状の課題」を尋ねた。すると、「システム管理のコスト」(50.5%)が最も多く、以降、「セキュリティ漏洩のリスク」(44.1%)、「システムに詳しい人員の確保」(38.7%)が続いた。

自由回答では、「新しい管理体制の整備」や「紙書類の分量が多い」などの声が聞かれたという。書類の電子化に伴う新たな作業が必要となるため、コストやセキュリティ面が懸念される他、担当する人材や時間といったリソースの確保に悩む企業が多い様子がうかがえる。
2024年1月からの「電子帳簿保存法」義務化に向けた大企業の対策状況とは。“システムコスト”や“セキュリティリスク”を懸念か
本調査結果から、9割の大企業では改正電子帳簿保存法への対応として、過去の書類も含めて電子化を予定していることがわかった。しかし、現状の課題として「システム管理のコスト」や「セキュリティ漏洩のリスク」が上位にあがっており、全面的な電子化を難しいとする企業もいるようだ。2024年6月の「全取引の電子データ化」に向けて、今後、企業には必要なシステムの導入や専門的な人員の確保が求められるだろう。

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