『国の年金分』に『基金独自の年金』を上乗せして支払う厚生年金基金。その基金が解散すれば、今まで支払われていた『基金独自の年金』は当然支払われなくなる。ところが、基金消滅後でもそれまでの『基金独自の年金』に相当する年金を受け取り続ける方法があることを、ご存知だろうか。
厚生年金基金が解散した後も「年金」を受け取る方法

企業年金連合会から終身年金を受け取れる?

厚生年金基金が解散をする場合、その基金が支払う予定であった『国の年金分』の支払い原資は全額国に返還される。国に資金を返還した後、基金に財産が残った場合は、基金から年金をもらっていた人、あるいはもらえる予定だった人に、一定のルールに基づいて残った財産が分配されることになっている。これを分配金と言い、基金が解散した後の清算事務を行う団体から一時金で支払いが行われる。つまり、終身でもらえるはずであった『基金独自の年金』が、厚生年金基金の解散により一時金で精算されてしまうことになる。

 しかしながら、この一時金で支払われる「分配金」を使い、企業年金連合会という別団体から終身年金を受け取れることはあまり知られていない。

企業年金連合会とは、厚生年金基金を短期間で脱退した方などに対して年金をまとめて支給することを目的に、昭和42年2月に設立された団体である。設立当初は厚生年金基金連合会という名称であったが、平成17年10月に現在の企業年金連合会という名称に変更され、現在に至っている。

 厚生年金基金が解散する際に年金の受給者などに支払われる分配金は、一時金で直接受け取ることも、直接受け取らずに企業年金連合会に預けることも可能である。もしも、企業年金連合会に預けることを選んだ場合には、預けた資金を元手に企業年金連合会の独自の年金制度である「通算企業年金」が受け取れることになっている。厚生年金基金の清算団体から分配金を直接受け取ることを選んだ場合には支払いを1回受けて終わりだが、企業年金連合会の「通算企業年金」を選べば、終身での年金受取りが可能になるという大きなメリットを享受できることになる。

通算企業年金における注意点

ただし、企業年金連合会の通算企業年金で受け取る場合にも注意点がある。はじめに、「必ずしも、今までと同額の年金がもらえるわけではない」という点である。分配金の額が少なければ、当然、通算企業年金として受け取れる年金額も少なくなる。また、厚生年金基金と企業年金連合会では予定利率が異なるという事情もある。予定利率とは将来の運用利回りのことで、この数値が大きい制度ほど受取り年金額も大きくなる。厚生年金基金では『基金独自の年金』の予定利率は平均で4.38%だが(企業年金連合会平成26年度財政・事業運営実態調査)、企業年金連合会の通算企業年金はそれよりも低い1.50〜2.25%であるため、一般的には今までよりも受け取り年金額は少なくなってしまう。

 また、企業年金連合会に分配金相当額を預ける場合には手数料が発生する。企業年金連合会では「事務費」という名目の手数料を最大で34,000円、預け入れ額から差し引くことになっているため、企業年金連合会に預け入れた資金の“全額”を通算企業年金の支払い原資に充てることはできない。

 さらには、以上のような制度が利用可能なのは、あくまで、厚生年金基金が解散するにあたって『国の年金分』の支払い原資を国に返還した後に財産が残った場合、に限定される。財務状況が芳しくない基金では国に資金を返還した後、財産が残らないケースもあるため、そのような場合にはこの方法を利用することができない。

 企業年金連合会の通算企業年金制度は、残念ながら、解散した厚生年金基金の『基金独自の年金』の支払いを必ずしも100パーセント保証する仕組みではない。しかしながら、「終身で年金を受け取れる」というのは老後の生活設計を考える上で、極めて大きなメリットである。分配金の支払額が決定した厚生年金基金は、分配金の支払い対象者に対して「分配金を直接受け取るか、企業年金連合会に預けるか」の意向確認を行うケースが多いので、どちらが有利かをじっくりと検討したいものである。

コンサルティングハウス プライオ
代表 大須賀信敬
(中小企業診断士・特定社会保険労務士)

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