
新卒者の在宅勤務頻度は「緊急事態宣言下の4、5月」がピーク
2020年度の新入社員は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を入社当初から受けた。早々に在宅勤務(テレワーク/リモートワーク)を余儀なくされた新入社員の成長や定着には、どのような要素が求められているのだろうか。はじめに、人事担当者に「2020年度の新入社員の在宅勤務頻度がどうだったか」を調査した。最も頻度が高かった時期は、1回目の緊急事態宣言下にあたる4月7日~5月中下旬で、「在宅勤務のみ」が36.2%、「在宅勤務週3~4日」が16.8%で、合計53%となった。ここをピークに、10月まで在宅勤務の頻度は下がっている。一方、「出社のみ」とした企業が5割を超えた月は一度もなく、過半数の企業の新入社員は、何らかの形で在宅勤務を継続していることがうかがえる。

在宅勤務の課題は「コミュニケーション」が圧倒的多数に
続いて、新入社員に「在宅勤務の課題」を尋ねると、「社内でのコミュニケーション」を挙げる声が目立つ。「同期」(1位)、「先輩」(3位)、「上司」(6位)とのコミュニケーションが、それぞれとりづらいことを課題に感じており、コミュニケーション機会の創出や工夫などの対応が求められる状況にあるようだ。また、2位には「自律的に業務を遂行する必要性」がランクインしている。そのほか、次の設問では人事担当者が「在宅勤務ではOJTの教育効果が低下する」と考える傾向にあるのがわかるが、新入社員でも同様の傾向が見られ、課題の第4位となった。
新入社員と人事育成担当者の認識にズレ。特にギャップの大きい項目とは?
次に、「在宅勤務によるマイナス影響をどの程度感じているか」を、新入社員と人事担当者に尋ねて比較した。新入社員の方が在宅勤務によるネガティブな影響を感じておらず、いずれの項目も人事担当者の方が高い結果を示した(なお、前述のOJTについては62%が「在宅勤務では教育効果が低下する」と答えている)。特にギャップが大きかったのは「精神的な負担感」や「情報不足」に関する項目となっていた。新入社員のために、何が本当に適切な対策になるのかを見極めることが必要と言えそうだ。

在宅勤務における新卒育成への影響は、企業によって評価が二極化
続いて、人事担当者に「コロナ禍がもたらした育成への影響」を尋ねた。その結果を「在宅勤務を実施した企業」と「しなかった企業」で比較すると、在宅勤務を実施している企業の方が、「業務能力獲得」、「定着」、「心身の健康状態」、「職場適応」のそれぞれの項目において、実施しなかった企業よりも「良い影響」と「悪い影響」の数値割合が共に上回る結果となった。このことから、在宅勤務が「うまくいった企業」と「うまくいかなかった企業」に二極化していると推察される。
配属前研修は「オンライン」が半数以上、配属後のOJTは「対面」が多い
また、「新入社員の受け入れから定着・育成のための施策の実施形態」について、新入社員側に尋ねた。その結果、「(入社式直後の)研修」は55.2%がオンラインで受講していた。一方で、配属後はオンラインの割合が下がっている。「上司によるOJT」が26.7%、「上司以外の育成担当者のOJT」が30.7%で、いずれも対面形式で実施した企業が多いようだ。
新入社員定着のポイントは「コミュニケーションの工夫」
最後に、「在宅勤務でも新入社員の能力開発や定着に良い影響があった」という企業に対して、人事担当者にコミュニケーションの実態を聴取し、分析した。その結果、好影響があった企業の方が、「コミュニケーション機会を増やす施策」を行った割合が約1割~2割高いことが判明した。この結果、入社から定着のオンボーディングには、「コミュニケーションの頻度」が重要な役割を果たすことが示唆された。