「YouTuber(ユーチューバー)」と聞くと、「○○をやってみた」といった子供に受けそうなものや、ゲームの実況動画を配信している人を思い描くことだろう。しかし、今回お伝えする内容は、動画配信が「若者の採用にも効果がある」ということだ。特に、知名度が高くない企業にとっては、低コストで取り組める採用広報となる。
若者に入社してほしければ「社員YouTuber」を立て、社内の雰囲気を伝えよう

なぜ、若者は来てくれないのか

若者が貴社の採用募集に応募してこない理由は何だろうか。「貴社のことをまったく知らない」、もしくは「社名は知っていても、どのような会社かよくわからない」といったことが原因で、応募ができないのかもしれない。

人は、よくわからないものを目の前にすると、恐怖や不安を抱く傾向にある。例えば、よくわからない仕事には手を付けるのが怖くて、ついつい先延ばしにしてしまった経験があるのではないだろうか。しかし、「よくわからない仕事」であっても、「何がわからないのか」や「どのようなゴールを目指すのか」などを書き出して「見える化」すれば、やるべきことが明確になり、すぐに取りかかれるようになるものだ。

つまり、若者から「よくわからない」と思われている会社に関しても、上記と同じように「どういった会社なのか」を「見える化」すればよいのである。その手段として役立つのが「社員YouTuber」による動画コンテンツ配信だ。その理由は2つ。下記のようなものがあげられる。

(1)言葉や文字では伝わらないことを、動画なら伝えることができる
(2)若者の情報入手先が「ネット」へシフトしている

理由1:言葉や文字では伝わらないことを、動画なら伝えることができる

株式会社ディスコのキャリタスリサーチによると、学生が企業研究を行ううえで知りたい情報の「トップ3」は次の通りである(※1)。

(1)実際の仕事内容
(2)社風
(3)給与水準・平均年収
若者に入社してほしければ「社員YouTuber」を立て、社内の雰囲気を伝えよう
【出典】
※1 株式会社ディスコ キャリタスリサーチ:就職活動モニター調査「<確報版>3 月1 日時点の就職活動調査 ~キャリタス就活2021 学生モニター調査結果(2020年3月)」

「仕事内容」や「給与・年収」については、言葉や文字である程度伝えることができるが、「社風」や「人間関係」は言葉や文字で伝えることが難しく、求人活動の課題であった。しかし、「社員YouTuber」による情報動画の発信であれば、その課題が克服できるのではないだろうか。なぜならば、視聴している学生は、目や耳で「社員同士の会話や行動」を知ることができ、さらに文字では伝わりにくい「社内の雰囲気」も感じ取れるからだ。また、映像を通してではあるが、企業を身近な存在に感じてもらえる効果もある。

理由2:若者の情報入手先が「ネット」へシフトしている

総務省 情報通信政策研究所の調査(※2)から、「10~20代はテレビや新聞などではなく、主にインターネットから情報を得ている」ということがわかる。すなわち、「社員」の動画からも、企業のことを十分に認知してもらえる可能性があるということだ。そのうえ、「YouTube」の動画配信は無料であるため、広告コストがかからないことも利点である。

事例:「社員YouTuber」の動画で応募者7倍!

それでは、実際に動画配信によって新卒応募者が激増した、三和交通株式会社の事例をお伝えする。

三和交通株式会社は、新卒採用を行う際「誰も知らない会社に行きたいとは思わない。せめて名前だけでも知ってもらいたい」という思いから、「YouTube」や「TikTok」などでネット動画配信を始めたそうである。その結果、「応募者7倍増」という見事な成果をたたき出したという。

同社の「社員YouTuber」が発信している動画コンテンツは、仕事とはまったく関係がないテーマのものばかりである。「難しい漢字問題」や「激辛早食い」、「おじさんのダンス」など、なんでもありだ。特に、短いネクタイを着けたワイシャツ姿のおじさんたちが、軽快なリズムに合わせて踊る全力笑顔ダンスはとてもコミカルで、見ている方も自然に笑みがこぼれてしまう。視聴した学生は、「こんな楽しい上司や同僚がいる職場なら、ぜひ働きたい」という思いで応募しているのではないだろうか。

【参考】
YouTubeチャンネル「三和交通」

まとめ

若者が求人に応募してこない理由は、会社のことがよくわからなくて怖いからからだと推察される。そのため、会社の良いところを積極的に若者へ伝えることが重要だ。その伝達手段のひとつとして、「社員YouTuber」による動画配信を活用してみてはいかがだろうか。社内で起こる「楽しいこと」を、手持ちのスマホで撮影して、そのまま公開するだけも貴社の雰囲気やイメージを伝える効果はあるはずだ。若者の応募者を増やすには、まずは気楽な気持ちで始めてみること、そして続けることが大切だろう。
佐野浩之
ひと・しくみ研究所
社会保険労務士
採用・定着・教育に強い ひと・しくみ研究所
https://www.hitoshikumi.com/

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