“短時間勤務制度”は「育児・介護休業法」により義務付けられていますので、認知度や利用経験者が増えてきています。ですが、「育児・介護休業法」の短時間勤務制度の対象でなくても、“短時間勤務制度”に興味を持っている従業員はいるのではないでしょうか。例えば、「自己啓発」、「ボランティア活動」、「心身の健康不全」といった様々な事情により、従来のフルタイム正社員としての働き方を望まない、時間に制約がある人材が増加しています。労働人口が減少しつつある中、企業としてはこうした“時間に制約がある人材”も含めて、意欲・能力の高い人材を確保・活用していく必要性が高まっています。
「育児・介護休業法」対象外の人も利用できる「短時間正社員制度」を導入しませんか

「育児休業法」の“短時間勤務制度”とは

事業主は「3歳に満たない子を養育する労働者」について、労働者が希望すれば「所定労働時間を短縮することにより、当該労働者が就業しつつ子を養育することを容易にするための措置」(短時間勤務制度)を講じなければなりません。

短時間勤務制度の対象となるのは、次のすべてに該当する労働者です。

(1)1日の所定労働時間が6時間以下でないこと
(2)日々雇用される者でないこと
(3)短時間勤務制度が適用される期間に、現に育児休業(産後パパ育休含む)をしていないこと
(4)労使協定により適用除外とされた以下の労働者でないこと
――ア その事業主に継続して雇用された期間が1年に満たない労働者
――イ 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
――ウ 業務の性質又は業務の実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者

短時間勤務制度は、「1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置を含むもの」としなければなりません。

厚生労働省が発表した「令和3年度雇用均等基本調査」において、『「育児のための所定労働時間の短縮措置等の各制度がある事業所」における制度利用者の利用内訳』で「短時間勤務制度」を見ると、女性が38.1%(2021/令和3年度)、男性が2.8%(2021/令和3年度)となっています。

「介護休業法」の“短時間勤務制度”とは

事業主は、「要介護状態にある対象家族を介護する労働者」について、「就業しつつ対象家族の介護を行うことを容易にする措置」として、連続する3年間以上の期間における所定労働時間の短縮等の措置を講じなければなりません。また、介護のための所定労働時間の短縮等の措置は、2回以上の利用ができる措置としなければなりません。

働きがいを感じられる「短時間正社員制度」とは

先に紹介した「育児・介護休業法の短時間勤務制度」は法律上の義務ですが、それを運用している企業内で、育児や介護のための短時間勤務制度に不満に感じている社員はいませんでしょうか。実際に、企業の労務相談を受けている私達社会保険労務士には、「育児や介護の方だけ優遇されていて、私達はいつもやりたいことを我慢している」などという不満の声を耳にすることがあります。多様な働き方、そして、多様な生き方を求めている人が増えてくるに従い、「育児・介護休業法」に当てはまらない方には不満の一つになることもあるようです。

それでは、育児や介護のため以外にも短時間で働ける「短時間正社員制度」があってもいいのではないでしょうか。例えば、2年間は「短時間正社員制度」を活用して大学院に通いたい、もしくは資格試験に挑戦したい、などという方もいます。

「短時間労働ならば、アルバイトやパートでいいではないか」と考える方もいるかもしれませんが、短時間正社員は「基幹的業務」に携わり、アルバイト社員やパート社員は主として「補助的業務」に携わるという違いがあります。その他にも、下記の「短時間正社員の要件」に該当すれば、社会保険(健康保険・厚生年金)の被保険者になることも可能です。

●短時間正社員の要件
短時間正社員に係る健康保険の適用に当たっては、当該事業所の就業規則等における短時間正社員の位置づけを踏まえつつ、労働契約の期間や給与等の基準等の就労形態、職務内容等を基に判断するものであること。

具体的には、
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(1)労働契約、就業規則及び給与規程等に、短時間正社員に係る規定がある
(2)期間の定めのない労働契約が締結されている
(3)給与規程等における、時間当たりの基本給及び賞与・退職金等の算定方法等が同一事業所に雇用される同種フルタイムの正規型の労働者と同等である場合であって、かつ、就労実態も当該諸規程に則したものとなっている
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場合は、健康保険の被保険者として取り扱うこと

また、転職活動や賃貸住宅などを借りる際に求められる可能性がある「在職証明書」などに雇用形態を記載する場合にも、「正社員」と記載されるか「アルバイト」と記載されるかでは、印象も違うでしょう。

以上のようなことを踏まえて、働きがいを感じられ、多様な働き方に対応できる「短時間正社員制度」を導入してはいかがでしょうか。


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