仕事を円滑に進めるために必要な技術と知識、経験がある。その組み合わせを「スキルセット」という。それぞれの職種によって「スキルセット」は変わってくるので、従業員は「自分には何が求められるのか」を把握する必要がある。一方、企業側にとっては人材育成や人材配置を効果的に行うためにも、各ポジションにはどのような「スキルセット」が必要になるのかを明確にしておくことが望ましい。本稿では「スキルセット」の詳しい意味や、職種別に求められるスキルについて解説する。
「スキルセット」の意味とは? エンジニアやマーケターなど職種別に求められるスキル一覧の例を紹介

「スキルセット」の意味やスキルの種類とは?

「スキルセット」とは、特定の業務を遂行するために重要となる技術と知識、経験の組み合わせを言う。職種に応じた「スキルセット」を身に付けることで、生産性向上や業務の効率化につながる。「スキル」との違いは、「スキル」が特定のある能力を意味するのに対し、「スキルセット」は必要となるさまざまな能力の組み合わせを指す。

◆「スキルセット」における「コアスキル」と「スペシャルスキル」
「スキルセット」について知るために、「コアスキル」と「スペシャルスキル」の意味も把握しておくといいだろう。まず、「コアスキル」とは「職種に限定されず、仕事に汎用的に活用できるスキル」を意味する。これに対して、「スペシャルスキル」は「特定の職種で活用される専門的なスキル」を指す。人材育成には、両方をバランス良く習得することが重要となる。

◆「スキルセット」における「ソフトスキル」と「ハードスキル」
「スキルセット」におけるスキルは、「ソフトスキル」と「ハードスキル」に大別できる。「ソフトスキル」とは仕事の能力を引き出すために必要となる能力を指し、業界や職種に関わらず求められるものである。具体的には、コミュニケーション能力やマネジメント能力、リーダーシップ、論理的思考力、チームワーク、タイムマネジメント能力、問題解決能力、決断力、傾聴力などが挙げられる。一方「ハードスキル」とは、研修や業務を通じて習得できる専門的な能力だ。プログラミングスキルやデザイン力、語学力、会計処理能力、ライティング能力、デザイン力、データ分析能力、マーケティング能力、営業力、企画能力などが該当する。

ビジネスパーソンに求められる「スキルセット」とは?

次に、ビジネスパーソンにとって主要な4つの「スキルセット」を紹介する。

(1)基本スキルセット

社会人として、どの職種でも必要となるのが「基本スキルセット」だ。仕事をする上で、誰しもが身に付けておくべき「スキルセット」である。例えば、電話応対能力や文章作成能力、ビジネスマナー(挨拶・言葉遣いなど)、基本的なパソコン操作能力、電話応対力、身だしなみ、来客対応能力、報連相などがある。特に、新社会人は入社後の研修でこれらを習得しておくことが求められる。

(2)対課題スキルセット

「対課題スキルセット」は、何らかの課題を解決へと導く際に重要となるスキルの組み合わせを指す。課題の本質を捉え、迅速に解決策を講じるために身に付けるべきものである。具体的には、立案力や分析力、論理的思考力、マネジメント能力、戦略立案力などがあげられる。

(3)対人スキルセット

「対人スキルセット」は、周囲の人との人間関係をスムーズに進めるために必要なスキルを指す。顧客と交渉する、上司に報告・連絡をするなど、ビジネスシーン全般で対人スキルは不可欠である。例えば、営業力やリーダーシップ、コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力、交渉力、人材育成などがこれにあてはまる。

(4)自己スキルセット

「自己スキルセット」は、自分自身を心身共にコントロールしていくために必要となるスキルを指す。この数年、リモートワークの普及により身体と精神のバランスを崩す人が増えているということもあり、一段と重要性が高まっているスキルといえる。例えば、体調管理能力、ストレス対応力、モチベーション管理力、アンガーマネジメント能力などが該当する。

職種別に求められる「スキルセット」の例一覧

続いて、職種別に求められる「スキルセット」をそれぞれ紹介する。

●営業

営業職は、顧客とコミュニケーションを重ねるなかでニーズや課題を聞き出し、それに応える最適な商品やサービスを提供していかなければいけない。営業に必要な「スキルセット」は、「対人スキルセット」を中心として、以下の項目が例としてあげられる。

・コミュニケーション能力
・プレゼンテーション能力
・情報収集能力
・課題解決能力
・論理的思考能力
・プロジェクト管理能力
・ストレス耐性能力

●人事

人事は立場上、社内のさまざまな部署の社員と接点を持つことになる。そのため、人事の「スキルセット」を向上させることで、現場の課題をヒアリングしやすくなり、スピード感を持って改善策を提案しやすくなる。人事の「スキルセット」としては、例として以下の項目があげられる。

・ビジネスマナー能力
・コミュニケーション能力
・マネジメント能力
・課題解決能力

●エンジニア

エンジニア職にはさまざまな種類があり、それぞれに求められる業務内容やスキルがやや異なる。

Webエンジニアの場合、プログラミング言語の理解はもちろん、コミュニケーションやマネジメントに関するスキルが求められる。システムエンジニアには、複数のプログラミング言語の理解のほか、プロジェクト管理能力やリーダーシップなどが必要となる。サーバーエンジニアには、サーバーの知識や課題解決能力、立案力などが問われる。ネットワークエンジニアには、機器やソフトウェアの知識、開発能力、対人スキル全般などがあげられる。

エンジニア職の「スキルセット」をまとめると、以下の例があげられる。

・専門知識(プログラミング言語の理解、開発技術、サーバーやソフトウェアの知識など)
・課題解決能力
・コミュニケーション能力
・プロジェクト管理能力
・プログラミング言語などの専門知識
・マネジメント能力

●デザイナー

UIデザイナー・Webデザイナーにクリエイティブ職も含め、デザイナー職全体として重要になる「スキルセット」の例としては以下の項目がある。いずれも、顧客の課題解決につながる最適なデザインの提案に有用なスキルだといえる。

・専門知識(デザイン力、デザインソフトの技術、コーディングの理解など)
・企画立案能力
・プレゼンテーション能力
・スケジュール管理能力
・コミュニケーション能力(ヒアリングなど)
・企画提案能力
・デザインに関わるソフトの操作技術スキル

●マーケター

マーケターとは、マーケティング活動に関与しながら商品やサービスの魅力・特徴をクローズアップさせ、販売を促進する担当者を指す。必要となる「スキルセット」はさまざまだ。代表的な項目の例は以下の通りとなる。

・マーケティングの基礎知識(マーケティング用語やPCスキル、コーディングの理解など)
・情報収集能力、データ分析能力
・企画立案能力、創造力
・コミュニケーション能力
・プレゼンテーション能力

「スキルセット」向上に有効な方法とは

「スキルセット」の向上には、それぞれのスキルを集中的に習得し、バランスよく伸ばすことが必要である。効果的な方法を紹介しよう。

●まずは「マインドセット」を整える

人材育成を進める上で大切になるのは、「スキルセット」だけではない。実は、「マインドセット」にも着目する必要がある。「マインドセット」とは、「業務を行う際の心構えや思考パターン」を意味する。実際、ビジネスシーンでは予想もしないようなトラブル、アクシデントが生じることがある。そうした場面では、テクニックとしてのスキル以上に、「マインドセット」ができているかどうかが重要である。まずは「マインドセット」を整え、その上で「スキルセット」を身に付ければ、さまざまな事態に対応できる実践的なスキルが定着しやすい。

●研修を実施する

研修を実施するのも「スキルセット」の向上には有益だ。例として、以下の内容が考えられる。

・基本スキルセット:ビジネスマナー研修、パソコン研修、電話応対スキル研修、文章作成研修など
・対課題スキルセット:ロジカルシンキング研修、マネジメント研修など
・対人スキルセット:コミュニケーション研修、プレゼンテーション研修など

●ビジネススクールへの参加

研修やOJT以外に、専門的な知識を身に付ける機会として、ビジネススクールへの参加も有効だ。経営戦略、マネジメント、リーダーシップ、マーケティング、労務管理、会計、財務など、スクールごとに習得できる内容は異なる。どのような「スキルセット」を習得するか明確にし、目的に合ったスクールを選択したい。


「スキルセット」は、特定の業務を遂行する際に不可欠となる技術と知識、経験を組み合わせたものであり、職種によってその内容は異なる。本稿では職種別に「スキルセット」の例をあげたが、業界・業種や会社によって特化させるべきスキルはさまざまだろう。自社にどのような「スキルセット」が求められるのか検討し、洗い出してみることは、人材育成や社員のスキルアップに必ず役立つはずである。
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