新型コロナウイルス感染症の対応に追われたこの1年半。日本でも多くの企業が「新たな働き方」を余儀なくされた。そして「新たな働き方」はこれまでも進行しつつあったパラダイムシフトの加速と共に日本の人材マネジメントの変革を迫っている。そうした中、世界各国では働き方にどのような変化が起こり、そして各企業はどのように対応しているのか。本講演録では、世界の働き方や異文化に詳しい経営コンサルタントのロッシェル・カップ氏の講演と、元日本板硝子執行役員で人材版伊藤レポート作成に参画した梯 慶太氏とロッシェル氏による「ニューノーマル時代の働き方や人材マネジメントの展望」についてのトークセッションの模様をお届けする。

講師

  • ロッシェル・カップ

    ロッシェル・カップ 氏

    ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング 創立者兼社長

    異文化コミュニケ-ションと人事管理を専門とする経営コンサルタントとして、日系と外資系の多国籍企業のグローバル人材育成を支援している。イェ-ル大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営学院卒業。日系大手金融機関の東京本社における職務経験を持つ。日本語が堪能で、朝日新聞globeと日経産業新聞を含めて日本の出版物に多数のコラムを連載している。『日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法』(クロスメディア)、『英語の品格』(集英社インターナショナル)、『外国人部下と仕事をするためのビジネス英語』(語研)や『反省しないアメリカ人をあつかう方法34』(アルク)をはじめ、著書は多数。



  • 梯

    梯 慶太 氏

    HIRAKUコンサルタンシーサービシズ 代表/元日本板硝子株式会社 執行役員

    1985年日本板硝子株式会社入社。2011年に執行役員就任。2012年に人事アジア統括部部長就任。2017年よりグローバルインクルージョン&ダイバーシティ運営委員会議長。2020年3月末に執行役員退任、同10月にHIRAKUコンサルタンシーサービシズ開業。 現在は、人事総合アドバイザー、HR総研上席コンサルタントなどとして活動中。2020年経済産業省「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」委員として「人事版伊藤レポート」作成に参画。

世界の働き方の変化を探り、ニューノーマル時代における日本の人事へ新たな施策を示唆する

ニューノーマル時代における世界最先端の働き方と人材マネジメント
ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング 創立者兼社長 ロッシェル・カップ氏

リモートワークの一長一短と、米国の在宅勤務状況

まずはコロナ禍で多くの企業が導入を余儀なくされたリモートワークの一長一短と、米国での現在の働き方についてお話させていただきます。どの国でも、リモートワークは一長一短があります。良い側面としては、「個人で集中して行う仕事にはプラスに働く」、「個人にとっても企業にとってもコスト節約に繋がる」、「ワークライフバランスを推進できる」、「個人で行う仕事の生産性が上がる」などが挙げられるでしょう。

一方、良くない側面としては、「コミュニケーションやチームビルディングへの障壁」、「Zoom疲れや孤独感に繋がる」、「企業のIT投資とリテラシーが求められる」などが挙げられます。いずれにせよリモートワークは、向いている人(内向的な人)もいれば、向いていない人(外向的な人)もいるということで、人それぞれなのです。

では、コロナ禍におけるアメリカの在宅勤務はどのような状況なのでしょうか。調査によると、2020年10月時点で、自分の仕事のほとんどを家からできると回答する人のうち、20%は「コロナ禍の前から在宅勤務」で、71%は「コロナ禍になって在宅勤務にシフト」しており、また54%は「コロナ禍後も在宅勤務を続けたい」と答えました。このことから、コロナ禍を機会にリモートワークを体験して、その良さを実感した従業員がかなりいたことが見て取れます。

そんな在宅勤務をしているアメリカ人にとって、リモートワークのどういう点が難しいと感じるのでしょうか。難しいと感じた項目の割合を少ない順に見てみると、「職責を果たすための技術と設備を持つ」、「締め切りに間にあわせたりプロジェクトを時間通りに終了する」(19%)、「仕事をするために十分なスペースを持つ」(23%)、「邪魔されることなく仕事を終了できる」(32%)、「仕事へのモチベーションを保つ」(36%)となっており、仕事に対する集中力やモチベーションを保つことに難しさを感じている人が多いようです。以上のことを踏まえて、アメリカにおけるリモートワークのベストプラクティスとしては、「在宅勤務のための明確な基本ルールを設定する」、「適切なソフトウェアとハードウェアの導入」、「仕事のアウトプットに関して明確なゴールを設定する」、「頻繁なコミュニケーションを心掛ける」、「従業員が抱く孤独感を最大限取り除くことに尽力をする」といったことが挙げられると思います。
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