「人的資本経営」の注目が高まっているが、経営戦略と人事戦略の連動に苦心している企業も多くみられる。企業の持続的成長を実現するために、人事は何をすべきなのだろうか。本講演では、事業変容をくり返しながら成長を続けるソフトバンクの源田氏と、コロナ禍でも34期連続増収増益を実現するニトリの永島氏を迎え、経営に資する人事の取り組みについてお話しいただいた。後半ではProFuture株式会社 代表でHR総研所長の寺澤も交え、HRトランスフォーメーション(HRX)について議論を行った。

講師

  • 源田

    源田 泰之 氏

    ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 人事本部 本部長 兼 組織人事統括部 統括部長 兼 未来人材推進室 室長 兼 ウェルネス推進室 室長

    1998年入社。営業を経験後、2008年よりHR領域を担当。 2019年HRアワード個人部門の最優秀賞、2018年プロリクルーターアワード最優秀賞などを受賞。 幅広い分野で活躍する若手人材と、企業の枠を超え、国内外問わず交流を持つ。大学などの教育機関での講演実績も多数。新卒及び中途採用全体の責任者に加えて、社員向けの研修機関であるソフトバンクユニバーシティやソフトバンクグループの後継者育成機関であるソフトバンクアカデミア、 新規事業提案制度(ソフトバンクイノベンチャー)の責任者でもあり、 2016年に設立した公益財団法人 孫正義育英財団の事務局長も兼任。 2018年からディープラーニングのインキュベーション及び投資事業を行うDEEPCOREのHR Advisorも務める。



  • 永島

    永島 寛之 氏

    株式会社ニトリホールディングス 理事/組織開発室 室長

    1998年東レ入社。法人・海外営業に従事後、2007年にマーケティングマネジャーとしてソニーへ。ソニーではマイアミ駐在時に10 カ国を超える出身国が異なった部下を統括し、ダイバーシティやグローバル組織の運営に興味を抱く。2013年に米国で初出店を果たしたニトリへ入社。入社後は2年半の国内店舗勤務の中で店長まで経験し、2015年より採用責任者、2019年3月より人事責任者へ。「個の成長が企業の成長。そして、社会を変えていく力になる」という考えのもと、全従業員へのグロービス学び放題永年契約、IT パスポート取得義務化、タレントマネジメントシステム(Workday)の導入を矢継ぎ早に決め、テクノロジーを駆使した「多数精鋭教育」の実現に向けて陣頭指揮を執る。



  • 寺澤

    寺澤 康介

    ProFuture株式会社 代表取締役社長/HR総研 所長

    1986年慶應義塾大学文学部卒業。同年文化放送ブレーン入社。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。常務取締役等を経て、07年採用プロドットコム株式会社(10年にHRプロ株式会社、2015年4月ProFuture株式会社に社名変更)設立、代表取締役社長に就任。8万人以上の会員を持つ日本最大級の人事ポータルサイト「HRプロ」、約1万5千人が参加する日本最大級の人事フォーラム「HRサミット」を運営する。

変化と混沌の時代、人事はどう動くべきか――ソフトバンク、ニトリの人事責任者と『人事の未来形』や『HRX』を議論する

HRテクノロジーを活用した、ソフトバンクの採用・組織改善・育成
ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 人事本部 本部長 兼 組織人事統括部 統括部長 兼 未来人材推進室 室長 兼 ウェルネス推進室 室長 源田 泰之氏

ソフトバンクで人事を担当している源田と申します。これまで、「ソフトバンクアカデミア」や「ソフトバンクイノベンチャー」などの新しい人事施策を推進してきました。現在は関連会社の役員、そして孫正義育成財団を担当しています。

ソフトバンクでは新規事業を積極的に創出しており、Yahoo! JAPANやLINEなどをはじめとして、グループ会社も拡大しています。そういったグループ会社間のシナジーの活用はもちろんですが、いま人々の価値観もどんどん変わるなかで、「人事の未来形」をまさに考えているところです。その中で今回は、当社の「HRテクノロジー活用事例」に特化してご紹介いたします。

まずは採用関連で、大きく二つの取組みを紹介します。一つ目は、「AIによるエントリーシートの評価」です。75%の人件費及び対応時間を削減し、創出された時間を活用して戦略的な採用活動へシフトしています。これにより、学生にじっくりと向き合い、会社の状況やカルチャーをしっかりと伝える時間を確保できました。また、当社では一次面接を「動画面接」に置き換え、AIで判定をしています。ただ、エントリーシートも動画面接も、AIが「不合格」と判定したものについては、人間の目で再度確認をしています。

もう一つが、「面接官トレーニング」。学生に対して適切な面接が行われているかを、AIで解析して面接官へフィードバックします。発話のタイミングや話の長さなどを振り返るとともに、どのようなアプローチをすれば学生が本音で話してくれるのかを学んでいくことができます。

採用以外の領域でも、HRデータを活用したピープルアナリティクス、配置の最適化、パルスサーベイ導入による個人の価値の最大化に取り組んでいます。ESサーベイで結果が低迷していた部門に対して、ピープルアナリティクスチームが定性・定量データをつきあわせて、課題を分析した事例もあります。分析によって、この部門は上司の働きかけ次第で仕事や職場の改善が見込めることが分かりました。そこで、上司をキーパーソンとした組織作りのために、プロジェクトチームを立ち上げて組織改善に取り組んだのです。その結果、ESサーベイの満足度が急上昇しました。データを堅実に分析し、粘り強く改善に取り組むことが、成果につながると立証された好事例だと思います。

最後にDX人材の育成です。ソフトバンクでは世の中の産業をデジタル化することでより良くすべく、さまざまな法人顧客やパートナー企業とともに、DXを積極的に推進しています。そのため、DXを推進する専門部署では「事業プロデューサー制度」を導入。DXは短期で成果が出るものではなく、企画・開発~運営まで長く取り組む必要がありますし、業界による特性もあります。そのため、直販営業とは異なる視点で人材育成をしなければなりません。そこで、求められる役割やスキルを明文化し、OFF-JTとOJTをミックスした育成プログラムを構築します。さらに、求められるスキルの到達度を定期的に測定し、1on1でフィードバックを実施。そこから、さらなる能力開発へとつなげています。

以上、ソフトバンクにおける、データやAIを活用した採用・組織改善・人材育成の取り組みを紹介いたしました。
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