2015年9月に立ち上がったベネッセの社内有志組織「One Benesse」。会社の理念である「Benesse=よく生きる」の実現を目指し、社員同士が有機的に“つながり合い”、自らを高めるために“学び合い”、意志を持って“とがり合う”といった活動を行っている。その「One Benesse」が、7月10日(金)、オンラインイベント「対話型鑑賞」を開催した。ファシリテーターを務めたのは、対話型鑑賞に魅了された株式会社ベネッセi-キャリアの白木 知裕 氏と株式会社ベネッセコーポレーションのアルムナイである渡邊 めぐみ 氏。「対話型鑑賞」とは、アート作品を鑑賞しながら思考と対話を深める取り組みを指す。イベントでは「対話型鑑賞」のワークショップ、ビジネスにおける活用法の共有などが行われた。ファシリテーターの二人によると、対話型鑑賞によって、「問題解決力」や「コミュニケーション力」といったビジネススキルを磨くことができるという。今回は、アート作品を鑑賞しながら参加者同士で対話を深めるというユニークなイベントの模様を紹介する。
ベネッセの社内有志組織「One Benesse」が、オンラインイベント「対話型鑑賞」を7月10日(金)に開催した。今回のイベントは、多くの方にアートを身近に、そして対話型鑑賞を通して対話×思考の楽しさを純粋に味わってもらいたいというのが主旨となっている。

アート作品を鑑賞しながら議論する「対話型鑑賞」という取り組みは、ニューヨーク近代美術館が最初に始めたとされる。その後、ビジネスや教育・医療などの領域でも活用され、社内の研修に導入する企業が増えてきている。

背景には、「VUCA」と呼ばれる正解のない時代にある今、思考力や問題解決力、コミュニケーション力といった能力がビジネスパーソンに求められていることがある。絵画の鑑賞には正解がないため、自分なりに人物や風景の特徴を捉え、相手が理解できるような言葉にして伝えなければならない。対話型鑑賞によって、参加者は考える力や話す力を身につける訓練ができるため、VUCA時代にマッチする取り組みと言える。

対話型鑑賞で伸ばせる能力は、個人だけに留まらない。例えば、社内のチームで取り組めば、メンバー間の相互理解を促進することでチームビルディングに役立てることができる。組織強化の観点から、メンバークラスだけでなく、マネジメント層にも対話型鑑賞の取り組みが注目されているのだ。

「観る」、「考える」、「話す」、「聞く」を意識することで、思考力が高められる

イベントの冒頭、白木氏は対話型鑑賞の概要について「グループで一つのアート作品を観ながら、発見や感想、疑問などを話し合い、思考と対話を深める鑑賞法です」と説明した。続けて、アートの語源にも触れ、「『アート』とは、ラテン語で生きる術を意味しており、価値観が大きく変わりWithコロナ/Afterコロナと呼ばれる不透明な社会においてもアート作品を理解することは、生きるうえでも役立つはずです」と対話型鑑賞が今の時代に合った取り組みだと語った。

今回のイベントは、2つのアート作品を30分ごとに鑑賞して感想をシェアし合うワークショップと振り返りで構成されている。白木氏は、ワークショップに移る前、鑑賞するうえで「観る」、「考える」、「話す」、「聞く」という4つのアクションを意識して作品を鑑賞してほしいと参加者に呼びかけた。これらのプロセスを踏むことで思考力なども高められやすいという。

また、鑑賞後の対話についても、「作品の解釈に正解はありません。なんでもオープンに話しましょう」、「話すこと、聞くことを楽しんでください」、「他者の考えを否定せず、自分の考えとの違いを楽しんでください」と3つの小さな約束を付け加えた。

時間が経つにつれ、根拠立てて考えを述べる参加者が徐々に増加

さっそく画面上に一枚のアート作品が映し出され、数分間の鑑賞が始まった。その後、ファシリテーターの渡邊氏は参加者一人ひとりに絵からどんなことを発見したかを問うた。すると参加者からは、登場人物の表情や服のしわなどに着目した発見や考えが共有された。

着目したいのが渡邊氏の会話だ。感想をただ聞くだけでなく、「絵のどこからそう思うか」といった質問を参加者に投げかけている。参加者が持つ考えを自然な形で深掘っているのだ。先述した4つのアクションの「話す」をサポートしており、ファシリテーターの役割も重要と言える。

時間が経つにつれ、オンライン上のチャットでは「自分にはなかった面白い視点」、「斬新な発想」という会話が徐々に飛び交い、各参加者が「聞く」を実践する様子が窺えた。渡邊氏は対話型鑑賞の意義に言及し、「一人では気づけない発見があるのが対話型鑑賞の魅力の一つ。ぜひ複数人で取り組んでみてください」と前半のワークショップを締めくくった。

後半は白木氏にバトンタッチし、渡邊氏同様、鑑賞後に参加者の考えを深掘りする質問が行われた。前半と違うのは、なぜ描かれている人物の顔が俯いていると思ったか、人物の心情をなぜそう捉えたかなど、自分で根拠立てて考えを述べる参加者が増えてきた点だ。「観る」、「考える」、「話す」という一連のプロセスを意識的に実践した結果と言える。短時間の間で、早くも対話型鑑賞による効果が参加者に表れた格好だ。

白木氏は、「対話の締めとして、みなさんで鑑賞しているアート作品にタイトルを付けてみるのも面白いですよ。全員揃うことはないと思うので、そこでまた発見があるんです」と新たな視点が身につけられる鑑賞方法を提案し、ワークショップのパートを終えた。