会社を守るか、社員を守るか。難しい決断を迫られる人事担当者の苦悩【27】

Inside HR−人事はここを見ている

本気で雇用を守りたいと考えているが……

本当に業績が悪化して会社が持たなくなりそうになると、企業ではまず希望退職者を募ります。将来にわたって雇用するよりも、少し多めの退職金を支払って一部の人員を整理した方が長期的に会社を維持できるからです。このようなケースでは、20代〜30代よりも、45歳以上のシニア世代が狙われることが多いでしょう。

多くの日本企業では40代半ば〜後半が、一番賃金が高くなるように設計されています。これは日本人のライフプランを考慮して、子供に教育費がかかる年齢に合わせた賃金設計を行ってきたからです。

最も人件費抑制に効果的な対象を検討すると、40代半ばの従業員が最初のターゲットとして上がってきます。反対に20代〜30代は、一般的にシニア世代と比べると体力もあり、ひとり当たりの人件費も高くないため、希望退職者を募ることは稀です。

こうした希望退職者を募る話やリストラの話は、従業員目線で描かれがちです。しかし、人事もできるなら雇用を守りたいと本気で考えています。とはいえ、会社を維持するために、人件費を抑制しなければならない。会社がなくなってすべての従業員を守れなくなるのか、会社を維持して少しでも多くの従業員を守るのか。本当に難しい決断を迫られるのです。

どの世代も甘んじず、常に自分を高めていくことが必要

実は今回あえて雇用の話をしたのは、残念ながら40代や50代になっても、キャリアについて真剣に考えていない方が多いからです。30代でさえも、自分の職業人生をきちんと考えている方はまだまだ多くない。こうした方は40代や50代になって会社の業績や世の中の環境が急に変化した時に、対応できなくなってしまいます。

日本では労働者が法律に守られています。雇用が手厚く保証されているのです。それはこれまで日本の雇用制度がメンバーシップ型だったからです。メンバーシップ型とは、企業に所属することで仕事が割り振られる仕組みです。採用時点で能力やスキルがなくても、企業が雇用後に教育することで、徐々に仕事に対応する力をつけていくため、長期間雇用されることが前提になっています。

しかしいまの時代は、もう企業が雇用を守れる時代ではなくなりつつあります。これから生き延びてさらに活躍していくためには、シニア世代や非正規雇用者はもちろんのこと、若い正規雇用者であっても常に自分自身の価値を世に問わなければなりません。

「大きな変化がある時にこそ、人の本質が露呈される」
これは最近のニュースのインタビューで、絵本作家の五味太郎さんが語っていた内容です。シニア世代でも、常に学び、常に自分を高めている方はどんな環境にも対応できるのです。ある70代のフリーランスの方がいます。その方は自分の技を磨いてきたため、高齢になってからも常に仕事が絶えません。反対に20代〜30代でも、日々自分に甘んじている方は何もできずに立ちすくんでしまいます。

どんな方であっても常に学んで備えておけば、どんな変化にも対応できるはずです。こんな不安定な時代だからこそ、常にどこでも仕事ができるエンプロイアビリティを高めていくべきではないでしょうか。
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著者プロフィール

中野 在人

大手上場大手メーカーの現役人事担当者。

新卒で国内最大手CATV事業統括会社(株)ジュピターテレコムに入社後、現場経験を経て人事部にて企業理念の策定と推進に携わる。その後、大手上場中堅メーカーの企業理念推進室にて企業理念推進を経験し、人材開発のプロフェッショナルファームである(株)セルムに入社。日本を代表する大手企業のインナーブランディング支援や人材開発支援を行った。現在は某メーカーの人事担当者として日々人事の仕事に汗をかいている。

立命館大学国際関係学部卒業、中央大学ビジネススクール(MBA)修了。

個人で転職メディア「転キャリ」を運営中:http://careeruptenshoku.com/
他に不定期更新で人事系ブログも運営:http://hrgate.jp/

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