「特例子会社」とはどのような制度なのか【後編】〜特例子会社の設立までの流れと要件〜

障がい者雇用の悩みと解決のヒント

「特例子会社とはどのような制度なのか」について、2回に分けてお伝えしています。前編では、障がい者雇用を促進するためにつくられている特例子会社とはどのような会社なのか、また、設立することのメリット、デメリットについて説明しました。後編では、特例子会社を設立するときにおさえておきたいポイントと、特例子会社の設立までの流れについて、さらに、設立に定められている親会社・特例子会社の要件について見ていきます。

特例子会社設立のためにおさえておきたいポイントと設立するまでの流れ

特例子会社は、雇用している障がい者を「親会社に雇用している障がい者」としてカウントできるという点では特別な会社といえます。しかし、その点以外は、いち企業としての経営や運営、管理が一般企業と同様に求められます。ですから、設立の際には、その手順を知るとともに継続的に運営していく方法についても併せて検討していくことが大切です。

また、特例子会社には親会社の意向が大きく反映されることが多々あります。つまり、親会会社の経営理念・経営方針・事業内容が特例子会社におよぼす影響は少なくありません。そのため、親会社の業種や規模が同じであったとしても、自社の特例子会社に関してはそれぞれの会社が経営方針や運営について考えていく必要があります。

ここでは、まず特例子会社の特徴としてあげられる「経営方針」と「業務」、「スタッフ」についてのポイントを確認します。その後、設立までのステップを見ていきたいと思います。

【特例子会社に見られる特徴】
「経営方針」と「業務」、そして「スタッフ」という観点から特例子会社の特徴を見てみると、下記のようにまとめられます。

(1)経営方針
特例子会社の経営方針は、大きく2つのタイプに分けることができます。1つ目は、親会社が基本的な方針(予算やスタッフの人数など)を決めて、特例子会社がこの方針に枠内でスタッフ人員や業務内容を検討していくタイプです。このタイプは、親会社やグループ会社内で、ある程度の業務が切り出せる可能性がある企業や、特例子会社を設立してから年数があまり経っていない特例子会社に多く見られます。方針の大枠は親会社が決定するため、親会社やグループ会社からの業務を一定程度受注できることが多いのですが、特例子会社の独自性を積極的に出させるような取り組みはあまり行われません。

2つ目は、親会社が提示した障がい者雇用率合わせて特例子会社が事業計画を立案し、年間予算を親会社とすりあわせる方法です。これは、親会社やグループ会社内で切り出すことが難しい企業や、設立から一定の年数を経過して新規事業に取り組み始める企業などで見られます。こちらの場合は、特例子会社自体に、ある程度任された形で事業計画を立てて運用をしていくため、会社運営については自由度が高いものの、親会社やグループ会社を除いた外部からの業務を受注することに加え、新たな取組を行なっていくことも求められます。1つ目のタイプよりも、資金面の自由度は高く、スタッフは障がい者と一緒に働く以上の企画力や実施遂行力が求められます。

(2)業務
一般的に特例子会社の業務としては、親会社やグループ企業のサポート業務が多いです。特に事務作業・軽作業・清掃・物流などの業務が切り出される場合が多く見られます。特例子会社の社名自体にも親会社やグループ会社のサポート的な役割を期待してか、「サポート」の他にも「サービス」や「アシスト」という単語が入っていることも多々あります。特例子会社が独自の業務を創り出しているところは少なく、創出できている場合でも、親会社の業務と並行して行っているケースが多くなっています。

(3)スタッフ 
スタッフの構成は特例子会社それぞれで異なりますが、大きくは2つのタイプに分けることができます。ひとつは、特例子会社に親会社の社員が出向者として一定数いるものの、他のスタッフは特例子会社のプロパーの社員というタイプです。特例子会社の規模が比較的大きかったり、拠点が複数あったりする場合に、このようなスタッフ構成になっている例が多く見られます。

スタッフは親会社で働いていたり、福祉機関や障がい者との関わりがある場所で働いたり、あるいはまったく障がい者と関わったことのない職場だったりと、さまざまなバックグラウンドをもっています。そのため、スタッフ間の共通理解や認識の浸透をはかるのに工夫が必要なことがあります。

もう一方は、特例子会社への出向者となった親会社の社員が、全スタッフの大半を占めているタイプです。この場合、出向しているスタッフは同じ親会社での勤務経験があるため企業理念や組織文化をすでに共有していたり、特例子会社に切り出される業務の背景を理解していたりします。そのため、親会社との関係や特例子会社のスタッフ同士の共通理解や認識が共有されやすい傾向があります。しかし、特例子会社の業務や、障がい者のマネジメントが未経験なスタッフである場合が多く、苦労するケースも見られます。

どちらの場合でも、特例子会社で勤務するまで障がい者と接する経験がなかった社員が多かったり、親会社からの出向・転籍社員は50〜60代の割合が高くかったりします。特例子会社は、役職定年後の職場として、親会社や関係会社で経験が豊富なシニア社員が活躍できる場となっている傾向がうかがえます。

【特例子会社設立までの流れ】
次に、特例子会社設立の流れについて見ていきます。大まかな流れは、まず株式会社の立ち上げを行なってから5人以上の障がい者を採用し、その後、特例子会社認定を受ける、というものです。詳しいステップは下記のようになります。

(1)特例子会社の設立を検討
特例子会社の設立を検討することになったら、ハローワークや高齢・障害者・求職者支援機構、障害者職業センターなどの支援機関から特例子会社に関する情報収集をしたり、特例子会社を見学したりして、自社で特例子会社の設立・運営が可能なのかを考えます。また、特例子会社で請け負う業務内容や業務の量、障がい者を何人雇用するのかなどを検討します。

(2)特例子会社設立プランの策定
設立までのプランを策定します。プロジェクトチームを設けて特例子会社設立プランを作成することが多いようです。この設立プランは、役員会で提案や承認を受ける必要がありますので、下記の内容を盛り込んでください。

・設立趣旨
・特例子会社の概要:社名、資本金、所在地、事業内容、社内組織、役員・人員体制、従業員数(障がい者数)、採用計画、経営計画、労働条件、設備など
・障がい者への支援体制:支援者、設備、関係機関との連携、助成金等

(3)役員会への提案準備、役員会の承認
(2)で作成した特例子会社設立プランを役員会に提出し、承認を得ます。

(4)設立準備室の設置
承認を得た後の特例子会社立ち上げ準備です。また、必要な法人印(社印・代表取締役印・銀行印などの印鑑)を作成します。

(5)会社設立登記の準備
定款を作成し、公証人役場で定款認証を受けます。会社設立登記申請を行い、審査を受けます。

(6)会社設立
会社設立後には、会社運営に関係する官庁への届け出が必要になりますので、事業所設置にかかる手続きを行います。法人設立届を、税務署や各行政機関に提出してください。

併せて、就業規則といった社則の作成も進めます。前編の「特定例子会社をつくるメリット」でもあげましたが、親会社と切り離した独自の制度設計や運用が可能となりますので、就業規則は親会社に準じるのではなく、特例子会社独自の設計にするとよいでしょう。雇用形態や賃金、労働時間や休日、契約期間などについては、特例子会社の業務内容や会社の所在地域の実情などを鑑みながら検討していくことをおすすめします。

(7)障がい者採用準備、採用
ハローワークへ求人登録し、実際に面接や実習を行います。最寄りのハローワークと情報交換するようにしてください。

(8)特例子会社認定申請
障がい者を雇用(5人以上)してから、特例子会社認定を申請します。提出する書類は、「子会社特例認定申請書」と「親事業主及び子会社の概要」に関する書類になります。なお、「親事業主及び子会社の概要」については、下記のようなものがあります。

・親会社の直近の有価証券報告書(写)または附属明細書(写)
・子会社の株主名簿または出資口数名簿
・親会社の「障害者雇用状況報告書」
・申請日現在における親会社(当該子会社を含む)の「障害者雇用状況報告書」
・定款
・法人登記簿謄本
・親会社から派遣されている子会社の役員名簿
・子会社の社員名簿
・子会社の障害者雇入れ通知書(写)
・子会社の就業規則、給与規定等
・障害者の職業生活に関する指導員の配置状況
・子会社の図面、案内図
・子会社の勤務中の写真
・その他、子会社が行う事業に関する資料など

認定申請を行ってから1〜2ヵ月程度で、特例子会社として認定されます。設立時期を決めている場合には、余裕をもって提出するようにするとよいでしょう。

親会社と特例子会社の双方が満たす必要がある「特例子会社設立の要件」とは

特例子会社を設立するためには、親会社と特例子会社それぞれに求められる要件があり、それを満たすことにより厚生労働大臣の認定を受けることができます。

特例子会社の認定要件
【親会社の要件】
・親事業主が特例子会社の意思決定機関(株主総会等)を支配していること(具体的には、子会社の議決権の過半数を有すること等)
・親会社から子会社への役員派遣、従業員の出向など、人的交流が密であること

【子会社の要件】
・特例子会社が株式会社であること(特例子会社については既存又は新設のどちらでも可)
・雇用される障害者が5人以上で、かつ、全従業員中に占める割合が20%以上であること。また、雇用される障がい者中に占める重度身体障がい者、知的障がい者、および精神障がい者の割合が30%以上であること
・障がい者の雇用管理を適正に行うに足る能力を有していること
・障がい者の雇用の促進及び安定が確実に達成されると認められること


以上、特例子会社設立までのステップや要件について見てきました。特例子会社設立にむけて少し具体的なイメージがわいてきたでしょうか。

特例子会社は、確かに障がい者雇用を進めるうえで有効的な制度だと思いますし、「雇入れ計画作成命令」が出されて社名公表までの猶予がないという場合には、特例子会社設立をすることによって、社名公表を避けることもできます。

しかし、株式会社として存続させていくためには、どのように経営・運営していくのか、5年〜10年後といった少し先までイメージしながら設立することも必要になってきます。特例子会社を設立すれば、障がい者雇用に関するすべての問題が解決するわけではないことを覚えておいていただきたいと思います。


【参考資料】
「特例子会社の設立を考えたら必ず読む本」松井優子
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著者プロフィール

障害者雇用ドットコム 障害者雇用アドバイザー 松井優子

特例子会社の立ち上げや国立特別支援教育総合研究所主任研究員等を経て、障害者雇用ドットコムを運営、障害者雇用の情報発信やコンサルティングに携わる。東京情報大学非常勤講師。著書に「はじめての企業でもできる障害者雇用を成功させるための5つのステップ」、「障害者雇用アドバイザーが教える障害者枠で働きたい人が知っておくべき就活の基本」、「特例子会社の設立を考えたら必ず読む本」等がある。
障害者雇用ドットコム

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