シニア社員は「やっかいな存在」なのか? 現場のリアルな声と高齢化時代の活用術【19】

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日本企業では急速に高齢化が進んでいます。多くのメーカーでは平均年齢が40代後半に差し掛かりつつあります。メーカーに限らず、多くの日本企業では40代と50代が社員の半数以上を占めているでしょう。一方で日本企業の人事部では、年齢構成がいびつだから、50代以上のシニア社員を減らしてもっと若手を入社させたいという声がささやかれ、あたかも社員が高齢化することが悪であるかのような意見を耳にすることもあります。いったいシニア社員の何が問題なのでしょうか。今回は、シニア活用の現場に焦点を当てます。

「シニア」という言葉からイメージする年齢と特徴は

そもそも「シニア」とは何なのでしょうか。

マーケティング調査会社のリサーチ・アンド・ディベロップメント社の調査によれば、20代〜50代までの現役世代がシニアだと思う年齢は「64.2歳」だそうです。この調査結果と私の人事としての「シニア」の実感値はかなり異なります。社内外の人事関係者と話をしていると「シニア」は40代後半以上の社員を指しているように感じるため、多くの場合は50代社員をイメージしているのではないでしょうか。

また、この「シニア」と呼ばれる層は、あたかもある特徴を持っているかのように語られます。それは「昭和生まれ、日本人男性、ジェネラリスト、転職経験なし」というものです。「シニア」が出てくる話はたいていいつも、時代遅れでパフォーマンスが出せなくなった社員をどう活性化するのかという文脈です。

例えば先日、人材紹介会社から新しいサービスの売り込みを受けました。その内容は「非活性シニアを社外に出して再教育しませんか」というものでした。具体的にはシニア社員をベンチャー企業などの異業種と交流させるサービスでした。

営業担当者の方に「『非活性シニア』とは何ですか?」とお伺いしたところ、「やる気がない、パフォーマンスが出せない、会社にしがみついている高齢社員」のことだと返答されました。会社にしがみついていて転職なんてできない存在だからこそ、社外に出して将来的なセカンドキャリアを考える必要があるのだ、そんな主張でした。

「シニア」とは、会社にとってそんなにやっかいな存在なのでしょうか。

シニア社員の何が問題なのか

別の研修会社の方からも、「おたくのシニアはどうですか? 昭和生まれの方ばかりだと、イノベーションは起きませんよね」と言われました。たしかに、なぜか「シニア」社員からはイノベーションを感じるイメージがありません。片や優秀な20代社員を見ると、つい「会社を変えてくれそう」という期待感が湧いてきます。しかし社内の50代社員の様子を見てみると、それなりに楽しくやりがいをもって働いているように見えます。

実際に話を聞いてみると、ある50代社員がこんなことを打ち明けてくれました。「楽しく仕事をしているし、本当はもっとやりたいこともある。でも50代になると、現実的に体力や気力、健康面で、若いころよりもできなくなることがたくさん出てくる」ということでした。

「シニア」活性化の文脈では、あたかもシニア社員自体が問題かのように語られます。しかしどうやら実際には、シニア社員ではなく、会社側が年齢と体力に考慮した仕事の与え方をしていないことが問題のようです。体力が低下してきたシニア社員に対して、20代や30代の社員と同じ役割や成果を期待するべきではないのです。それよりも、経験や知識を活かした仕事へアサインすることが重要なのではないでしょうか。

年齢なんて関係なく、それぞれが持つ知識を活かせばいい

50代の先輩社員は相談を持ち掛けると、熱心に指導してくれます。特に会社の歴史や仕事の進め方について話を聞いてみると、たくさんの示唆をいただきます。一方で、たしかに50代社員はITスキルや現代社会への理解に関してアップデートしていただく必要があると感じる瞬間も多々あります。

しかし、高齢社員のアップデートの必要性は、いつの時代も話題になってきました。昔から若者たちの間では「年寄りに若者の気持ちはわからないよね」と言われてきたように思います。逆にシニアは、いつの時代も「最近の若いもんはけしからん」と思ってきたのではないでしょうか。

50代社員に対しては、経験や知識を敬いつつ、ITなど新しい知識の習得を支援すると意外と素直に受け入れてくれます。このことからも、年齢だけが問題ではないように感じています。例えば、20代でも仕事をサボっている社員はいますし、30代でも会社にしがみついている社員はいるでしょう。しかしなぜか「シニア」だけが問題になります。定年が近い「シニア」には未来がないから、という前提が当たり前のようにまかり通っています。

しかし高齢化が急速に進むいま、20代や30代よりも50代以上が圧倒的なマジョリティになります。加えて日本は人口がどんどん減少していきます。このような時代では、若い人材だけにこだわっていると、経済活動を維持することができなくなってしまいます。だからこそこれからは、年齢に関係なく、それぞれが持っている知識やスキルを活かした働き方が重要になるでしょう。

定年も段階的に引き上げられ、元気に活躍する60代や70代も増えてくるはずです。「未来がない」はずの「シニア」社員にも、あと10〜20年は活躍してもらわなければなりません。年齢に関係ない人材活用の仕組みがこれから整えば、日本から「シニア」という言葉が消える日がいつか来るかもしれません。

【参考】
リサーチ・アンド・ディベロップメント社:75才でようやく自他共に“シニア”
https://www.rad.co.jp/report_list/20180208/
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著者プロフィール

中野 在人

大手上場大手メーカーの現役人事担当者。

新卒で国内最大手CATV事業統括会社(株)ジュピターテレコムに入社後、現場経験を経て人事部にて企業理念の策定と推進に携わる。その後、大手上場中堅メーカーの企業理念推進室にて企業理念推進を経験し、人材開発のプロフェッショナルファームである(株)セルムに入社。日本を代表する大手企業のインナーブランディング支援や人材開発支援を行った。現在は某メーカーの人事担当者として日々人事の仕事に汗をかいている。

立命館大学国際関係学部卒業、中央大学ビジネススクール(MBA)修了。

個人で転職メディア「転キャリ」を運営中:http://careeruptenshoku.com/
他に不定期更新で人事系ブログも運営:http://hrgate.jp/

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