2020年のHR業界を予測:採用活動を成功させるには【14】

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「2020年こそ採用活動を成功させたい!」と意気込んでいる採用担当の方も多いのではないでしょうか。2019年は新卒一括採用の拡大といった大きな変化がある1年でした。昨年は採用市場の活況を背景に、欲しい人材が有名企業にもっていかれてしまった……という苦い思いをされた方もいたかと思います。そこで今回は2020年の採用活動成功を祈願して、今年の成功へのポイントをご紹介したいと思います。

2020年は採用活動にとってどんな年になるか

今年は採用ルール、手法ともに大きな変化はない一方で求人倍率が上がり続ける採用難の年となるでしょう。募集費は大企業を中心に高騰し、採用支援や採用ベンチャーのサービスが活況になることが想定されます。

新卒採用は、今年も引き続きルールを守りながら戦う従来通りの活動が続くでしょう。昨年4月、経団連と大学側が新卒通年採用の拡大に合意しました。政府も同6月に発表した「成長戦略実行計画」の中で、今後の日本の成長戦略の一環として新卒一括採用を見直すことに言及しています。一方で、経団連の就活ルール廃止にともない、少なくとも2022年度卒までの新卒者については政府主導でルールを設定することを決定しています。 

中途採用については、多くの企業がさらに苦戦する年になるでしょう。実は日本では有効求人倍率が上がり続けている一方で、雇用の流動化はほとんど進んでいません。厚労省の2018年「雇用動向調査」の結果によれば、転職市場が活況に思える現在でも転職者の入職率は全体の10%程度です。15年前の2004年と比べてもほぼ同水準で推移しています。

しかし、人材業界は活況です。矢野経済研究所の調べによると、人材派遣・人材紹介・再就職支援という主要人材ビジネス業界の国内市場規模は、2013年から毎年、前年比10%以上の拡大を続けています。現在の好景気と企業の人材不足が続く限り、この伸びは続くことが想定されます。

このように、今年は採用に関して大きな変化はないけれど、採用には苦戦を強いられる、人事部門にとってはもどかしい1年になる見込みです。また、我々人事がもどかしさを感じているところに、好景気を背景にした採用支援ベンダーがさらに強気で売り込みをかける姿がよく見られるようになるでしょう。

日本の採用活動における「本当の課題」とはなんなのか

人事担当者は毎日、大量の履歴書やエントリーシートを確認して、ダイレクト・リクルーティングで電話でもメールでも求職者へアタックします。それなのに、気づけば採用目標数に到達していない……。そんな日々を送っている担当者も多いと思います。一見、我々人事担当者が採用に苦戦しているようで、モヤモヤした気持ちになる原因はなんなのでしょうか。
 
採用における真の問題は、一言で言うと「問題の原因を把握していないこと」ではないでしょうか。ついつい私もやってしまいがちですが、施策がうまくいかないと他の施策や手法を試してしまいます。しかし結局、採用がうまくいかない「本当の原因」を把握していないと、他の手法を試しても同じ結果になります。
 
近年は人材不足といわれます。「少子高齢化が進んでいて学生を含む生産年齢人口も減少している」というような話を聞くと、日本にはもう働き手がいないとつい思いがちです。

しかし実際は、そうではありません。実は日本の企業数は20年前と比べると約100万社も減っています。一方で、大学生は20年間で約7万人増えています。30年前と比べると80万人以上も増えています。また、生産年齢人口も20年間ほぼ横ばいです。つまり、日本に働き手は十分にいるのです。では、なぜ現在のような人手不足感があるのかというと、好景気と働き方の多様化が原因です。単に企業業績の拡大により、求人数が増えているというだけなのです。

新卒採用は、近年の終身雇用時代の終焉やグローバル化の進展により働き方の多様化が進んでいます。自己実現のために複数社経験したい人もいれば、安定的に長く1社に勤めたい人もいます。先ほどお伝えしたように、学生数は増加しているので、きちんと学生のニーズと求人が合致すれば採用はできるはずです。

一方で、中途採用は全体の比率からするとまだまだ転職者数が少ない状況です。転職者は徐々に増えているものの雇用者全体の1割程度しかいません。つまり、そもそも求人に応募する人自体が少ないのです。

今年、採用活動を成功させるために必要なアクションとは

では、2020年に採用活動を成功させるためにはどのようなアクションをとればよいのでしょうか。

まずは、全体的な問題として採用の戦い方が変わったことを認識するべきです。現在は以前と比べると好景気です。有効求人倍率もバブル期を超えています。数年前のように求人を出せば入社してくれる時代ではなくなった、ということです。

また、働き方の多様化により、新卒の大企業志向は弱まっています。これは、ベンチャーや中小企業にもチャンスがあるということです。ただし、新卒生の価値観に合う企業でなければ入社してくれません。ニーズを把握して、きちんとターゲット像を設定したうえで自社を売り込む採用手法が今後の中心になるでしょう。

一方、中途採用の場合は先述のとおり、転職者自体がまだまだ多くありません。また、有効求人倍率の高まりは、どの企業も優秀な人材を欲していることの表われでもあります。そもそも市場に求職者がいないのですから、他社からスカウトするしかありません。
 
つまり、2020年の採用活動は、新卒・中途ともにスカウト中心で行うべきです。大企業の場合は大規模な求人広告や宣伝とともにスカウトを活用すべきでしょう。資金的体力のない企業ならば、SNSやダイレクト・リクルーティングを活用した地道な接近戦でスカウトを行うべきです。特に自社に興味がありそうな学生や、他社でのキャリアアップを狙う潜在的な転職者をターゲットとして囲い込んでいきましょう。

売り手市場である採用市場で新たな戦い方を制した企業が、今年の採用活動に成功するでしょう。ぜひ、一緒に頑張りましょう。
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著者プロフィール

中野 在人

大手上場大手メーカーの現役人事担当者。

新卒で国内最大手CATV事業統括会社(株)ジュピターテレコムに入社後、現場経験を経て人事部にて企業理念の策定と推進に携わる。その後、大手上場中堅メーカーの企業理念推進室にて企業理念推進を経験し、人材開発のプロフェッショナルファームである(株)セルムに入社。日本を代表する大手企業のインナーブランディング支援や人材開発支援を行った。現在は某メーカーの人事担当者として日々人事の仕事に汗をかいている。

立命館大学国際関係学部卒業、中央大学ビジネススクール(MBA)修了。

個人で転職メディア「転キャリ」を運営中:http://careeruptenshoku.com/
他に不定期更新で人事系ブログも運営:http://hrgate.jp/

HRサミット2019/HRテクノロジーサミット2019 アフターレポート公開中

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