「VDT症候群」とは、パソコンなどのディスプレイ(VDT:Visual Display Terminal)を使った作業を長時間続けることにより、目、体、心に同時にあらわれる一群の症状のこと。

主な症状としては、目にはドライアイや眼精疲労、視力の低下などが起きるほか、体にはキーパンチャー病とも呼ばれる頸肩腕症候群、首や肩のこり、だるさなどが起き、慢性化すると背中の痛みや手指のしびれなどに進展します。また心については、不安感を招いたり、抑うつ状態を引き起こしたりするきっかけになるとされています。

IT眼症、テクノストレス眼症とも呼ばれるVDT症候群は、近年、オフィス業務のIT化が進むにつれて増えてきました。治療方法としては、点眼薬で目の疲れをやわらげ、うるおいを与えるほか、飲み薬で体や目の緊張をほぐすといった方法が取られますが、いずれも対症療法にとどまります。

特に、目に関する訴えは1日の連続作業時間が長くなるほど多くみられ、ひどくなると角・結膜炎や、めまい、吐き気まで起こすこともあるため、日常の業務の中でVDT症候群の発生を予防することが重要です。予防のためには、ディスプレイを見ながらの作業を1時間続けたら10分程度はディスプレイを見ない作業をすることや、時々軽いストレッチをするなど体を動かして緊張をほぐすことに加え、反射防止型のディスプレイを使用し、ディスプレイと目の距離を40 cm程度以上に保つといったことを普段から心がけることが大切です。また、オフィスの照明はできるだけ明暗のコントラストがないようにし、まぶしく感じないようにすることも推奨されています。

従業員の健康を守るためだけでなく、業務効率の低下を招かないためにも、会社としてVDT症候群の対策を立て、各職場で実行してもらえるように促すことは重要です。VDT症候群に特有の症状がいくつ出ているか、従業員にアンケートを取ってチェックしてもらい、不調を感じている従業員がどの部署に多いのか、また、最近そうした従業員が増えて部署がないかといったことについて、定期的に状況把握や分析を行い、対策につなげることも有効でしょう。