「あいつは減給だ!」、「もう来なくていい!!」などと感情的な言葉を発してしまったり、もしくは心の中でそう思ったりする経営者は多いのではないか。会社組織であれば、就業規則に照らして懲戒根拠を示した上で、労働者に懲戒処分を行うこともあるだろう。ただし、そのやり方を間違えると、のちに大きな労使トラブルに発展することがある。以下、懲戒について解説したい。
懲戒

なぜ、懲戒が必要なのか

懲戒は、会社秩序の維持のためにある。会社と労働者は対等関係であり、会社が恣意的・一方的なペナルティーを科すことは不公平だろう。しかし、会社は秩序を維持する必要があり、労働者は秩序を守る義務があるとされている。秩序を乱した者を放置するわけにはいかない。組織である以上、しかるべき労働者に懲戒を科すことは当然のことである。

前提としての就業規則への記載

懲戒処分をするには、どのような「行為」に対し、どのような「種類」のペナルティーを与えるのかを、就業規則に規定する必要がある。

・行為
勤怠(遅刻や無断欠勤)、ハラスメント(セクハラ・パワハラ)などがある。時として、能力不足について懲戒処分をする・したいというケースがあるが、それはあくまでも人事評価の範疇であり、懲戒すべきことではない。

・種類(下記が代表的なものになる。下にいけばいくほど重いペナルティーとなる。)
譴責(けんせき):始末書を取り戒める
減給:一定範囲の減額
出勤停止:一定期間出勤の停止を命じる
降格:職位の引き下げ
諭旨退職:自主退職を勧める
懲戒解雇:罰としての解雇

懲戒処分が有効となるために

結論から言うと、処分の内容が重ければ重いほど、「妥当性」と「公平性」が厳しく問われる。

・妥当性
いわゆる一般的な常識に照らして、懲戒に該当する行為に対して処分が重すぎないようにしなければならない。(例えば、1分遅刻で降格など。)大前提として、労働基準法は労働者保護のためにある。相反する行為を行う以上、妥当性が問われれるのは当然のことである。

・公平性
同様の行為に対し、Aには譴責、Bには諭旨退職、といったように異なる処分を科す場合には、その根拠を十二分に説明できなければならない。
恣意的に処分に差がある場合、処分自体が否定されたり、モチベーションの低下を招いたりなど、トラブルになるだろう。

まとめ

好き好んで懲戒処分を行う会社はないだろうし、懲戒処分に及ぶには、必ず相応の理由がある。一定の秩序を保つために懲戒処分を行うのに、その処分によって会社と従業員との間でトラブルになっては、元も子もない。懲戒処分を行う際には、ルールをきちんと定め、決して恣意的な感情を挟まず、定めたルールに則って粛々と実行していただきたい。
社会保険労務士法人ステディ
代表社員 瀧本 旭

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