働き方改革関連法は、2018年の労働施策総合推進法を皮切りに順次施行されている。これに伴い、各企業も就業規則を改正しなければならない。すでに改正作業を終えている企業も多いだろう。ただ、書籍やセミナーだけでは情報が散在していることから、こちらでは改正すべき事項を総ざらいしてみたい。

働き方改革関連法で義務化された事項と就業規則の改正

改正された法律は、「旧雇用対策法(「労働施策総合推進法」へ改正)」、「労働基準法」、「労働安全衛生法」、「労働時間等設定改善法」、「労働契約法」、「旧短時間雇用労働法(「短時間・有期雇用労働法」へ改正)」、「労働者派遣法」と多岐にわたっている。これらの中でも、企業にとって対応が任意(努力義務など)となっている事項を除き、就業規則への規定が必須となる。その内容をわかりやすく説明すると、以下の(1)(2)が主な改正点と注意点になる。

(1)「労働基準法」の改正に伴う就業規則の改正
a)年5日の年次有給休暇付与義務(2019年4月1日施行)
当年度において、年休が10日以上付与される労働者に対し、5日以上を取得させないと当該企業に罰則が適用される、という法改正である。年休は労働者の権利であるから、それを取得するか否かは労働者に委ねられる。従って、就業規則の改正にあたっては、年休取得に関して使用者と労働者間の対話を密にする規定が必要となる。具体的には、労働者に「取得計画届」を提出してもらい、それに基づき「取得計画表」として企業が時季指定をする仕組みがよいだろう。

注意すべき点は、企業の時季指定の単位を「1日又は半日」とすること、当該時季指定を取消・変更が可能であることを規定すること、などである。また、「時間単位年休」は今回の「5日間以上付与」の対象とはならないので、すでに導入している企業は年休管理が二重となることを忘れないようにしたい。

b)時間外・休日労働の上限規制(大企業2019年4月1日施行/中小企業2020年4月1日施行)
法定労働時間を超える時間外労働について、上限が罰則付きで法律に明記された。さらに、時間外労働時間数の上限にとどまらず、2〜6カ月平均で80時間以下、単月100時間未満という規制も加わる。しかも、法定休日労働時間数を含めて算定する必要があるので注意が必要だ。また、特別条項を適用する際の手続きや、労使協定締結の相手方である労働者代表の適正な選出手続も同時に規定しておくべきである。就業規則そのものの改正は、法改正事項をトレースするだけなので難解ではないが、新たな36協定の内容を含めて、その運用は極めて難しい。

特に、長時間労働が慢性化している企業は、これまでの勤怠管理による事後的労働時間管理では対応できない。残業の事前許可制を含めた「予防的労働時間管理」の仕組みを構築し、規定しておきたい。

c)月60時間超の割増賃金率の猶予措置廃止(中小企業2023年4月1日施行)
すでに大企業では実施されている月に60時間超の時間外労働に対する賃金割増率50%が中小企業にも適用される。これには、労使協定により代替休暇を与えることで60時間超の割増賃金の支払が一部不要となる特例があるので、検討した上で給与規程を改正することとなる。

(2)「労働安全衛生法」の改正に伴う就業規則の改正
a)医師による面接指導及び労働時間の状況の把握(2019年4月1日施行)
管理監督者を含むすべての労働者を対象に、1週間あたり40時間を超えて労働させる際に100時間を超えた場合は申し出により医師の面接指導を行うことが義務付けられていたが、この時間数が80時間に縮減された。注意点は、労働時間数に「法定時間外労働」と「法定休日労働」が含まれること。また、その算定にあたっては、毎月1回以上の基準日を定めて行うことなどである。

労働時間の状況把握に関しては、前述のとおり、すべての労働者の労働時間を把握しなければならず、把握した労働時間の記録は3年間保存することが義務付けられている。

b)産業医・産業保健機能の強化(2019年4月1日施行)
産業医と事業場の連携を強化することにより、労働者の心身の健康を確保しようとする改正である。対象となるのは、常時50人以上の労働者を使用する事業場となる。具体的には、
(I)産業医への権限の付与、その業務内容や選任・解任の周知
(II)産業医への情報提供
(III)産業医からの勧告内容や講じた措置の記録・保存など
(VI)労働者の心身の状態に関する情報の適切な取扱いを就業規則に規定する

なお、(VI)については事業場の規模に関係なくすべての事業場が対象となる。

特に注意すべき事項としては、(II)の産業医への情報提供と(VI)心身状態に関する情報の取扱い方についての規定である。(II)は、時間外労働が1カ月あたり80時間を超えた労働者の属性や勤務状況を産業医へ情報提供しなければならない。(VI)は、すでに定めてあるであろう「個人情報管理規程」といった他の規定との整合性をはかりながら、「健康情報取扱規程」を整備しなければならない。

2020年度以降は、「労働契約法」と旧「短時間雇用労働法」の改正にともなって、いわゆる「同一労働同一賃金」への対応が控えている。これも、雇用管理区分ごとの就業規則の整備や給与規程の改正が必要になることが考えられるので、準備を怠らないようにしたい。
大曲義典
株式会社WiseBrainsConsultant&アソシエイツ
社会保険労務士・CFP