セクハラ防止のため、受け手との意識のギャップを知ろう

「ほんの冗談のつもりだった」、「好意から出たことだ」と自分では思っていても、相手にはとても不愉快な行為と受け取られる──このようなギャップはありがちなことだが、それが職場で、しかも性的な内容であると、セクハラという問題になる。意識の上でどのようなギャップがあるかを知っておくのも、こうしたセクハラを防止するために必要なことだ。

セクハラに対する正しい認識を持っていますか?

セクハラ防止のために、まずはどのような行為がセクハラになる可能性があるかを知っておく必要がある。

次に掲げた項目について、あなたはセクハラだと思うだろうか。

(1)酒席等でお酌やデュエットを強要された、席を指定された
(2)容姿や年齢、身体的特徴について話題にされた
(3)「男のくせに」、「女には仕事を任せられない」などと発言された


実は、これらの項目は、独立行政法人労働政策研究・研修機構によって、2016年に行われた「妊娠等を理由とする不利益取扱い及びセクシュアルハラスメントに関する実態調査」の中の、セクハラに関する質問項目の一部である。

つまり、3つともセクハラに該当する可能性がある行為だということだ。

体に触る、性的な話をするだけがセクハラではない

ここから上記3項目について、一つひとつ解説していこう。

(1)酒席等でお酌やデュエットを強要された、席を指定された

酒席での行為については、セクハラであるという認識を持つ人も増えているが、まだまだ「はい、女性はこっちとこっちね」と、男性の隣に席を指定するということがあるようだ。

普段職場であまり接点がない人同士が隣り合うよう配慮する、というのであればよいのだが、「女性の席を指定し、男性の隣になるようにする」というやり方だと、女性が男性にお酌やデュエットなどの「接待」をすることを期待している、と受け取られても仕方がないだろう。それを強要したら、明らかにセクハラである。

(2)容姿や年齢、身体的特徴について話題にされた

これは、この調査において、正社員、パートタイマー、派遣労働者など、すべての雇用形態で、「経験した」と答えた率が最も高かったものである。(セクハラを受けたことがあると回答した人のうち、53.9%)

次に、「不必要に身体に触られた」(40.1%)、「性的な話や、質問をされた」(38.2%)と続いている。このあたりは、分かりやすいセクハラなので、解説の必要はないだろう。

「容姿や年齢、身体的特徴」についての話題とは、スリーサイズを尋ねたり、ブラジャーのカップの大きさを尋ねたり、という露骨なものだけではない。次のようなものも、不愉快な発言と受け取られる可能性が高い。

「ちょっと太った(やせた)んじゃない?」
「若い子がいるといいなぁ」
「最近きれいになったね」

これらを見て、「ちょっと待ってくれ、それがセクハラになるのか?」と驚いている人もいるだろう。

ひとつ注意が必要なのは、容姿や年齢、身体的特徴について「話題にされた」となっていることである。「からかわれた、侮辱された」など、明らかに相手がいやがる発言だけではないのだ。

つまり、容姿・年齢・身体的特徴については、ただ話題にしただけで、しかも褒めたとしても、いやな思いをする人がかなりの割合でいる、ということである。

これは、(1)でも見たように、女性が「職場の花」的に扱われ、その職務上の能力ではなく、容姿や年齢で評価されてきた、という長きにわたる日本社会の悪習が反映している。

職場では、女性としてではなく、ひとりの職業人として扱って欲しい。「きれいと言われても別にうれしくない」と思っている女性は多いのだ。

これは、男性、特に中高年の男性には分かりにくいようで、「女性は容姿を褒めれば喜ぶ」と思い、相手への好意からそのような発言に及ぶことが多い。だが、それが逆効果になる可能性が高いことは覚えておくべきだろう。

(3)「男のくせに」、「女には仕事を任せられない」などと発言された

これは、性別による差別意識や、固定的な役割分担をよしとする意識から出てくる発言である。「ジェンダーハラスメント」と呼ばれることもある。

これらのパターン以外にも、「子供が小さいうちは母親が面倒を見るのが一番だ」というのもある。

男女は違いがあるのが当たり前で、その違いを尊重すべきだ、という考えは多くの人が持っている。それが自分の信条なのだ、そう言って何が悪い、という反論もあるだろう。

心の中でどう考えていようと自由なのだが、職場でよい人間関係を保つためには、また、すべての人が気持ちよく働けるためには、そうした個人の信条はあまり表に出すと問題が起きやすいのだということも、知っておくべきだ。

このように、セクハラに当たる言葉を解説すると、「昔はよかった」、「最近はやりづらくなった」という感想をいただくこともある。しかし、昔、つまり旧来の考え方では、多くの人、特に女性は能力を発揮するのを妨げられていた、ということを認識する必要があるだろう。


李怜香(り れいか)
メンタルサポートろうむ 代表
社会保険労務士/ハラスメント防止コンサルタント/産業カウンセラー/健康経営エキスパートアドバイザー

著者プロフィール

HRプロ編集部

採用、教育・研修、労務、人事戦略などにおける人事トレンドを発信中。押さえておきたい基本知識から、最新ニュース、対談・インタビューやお役立ち情報・セミナーレポートまで、HRプロならではの視点と情報量でお届けします。

新卒採用フォーラム2019 アフターレポート公開中