「プレゼンティーイズム」とは、出勤しているものの、何らかの体調不良で業務効率が落ちてしまっている状態のことをいう。普段の90%のパフォーマンスしかできないのであれば、残りの10%が会社にとって損害になるという考え方だ。従業員の健康状態がコストとなるという点では、「アブセンティーイズム(病欠)」が分かりやすいが、実は企業の健康関連の総コストの中ではプレゼンティーイズムから生じるものが最も大きい、という研究結果が多い。
「プレゼンティーイズム」に対処する上司の朝の習慣

部下の体調に気づくことが第一歩

上司として、プレゼンティーイズムに対処するには、どうしたらよいのだろうか。

人間であれば、体調がいい日もあるし悪い日もある。そして、基本的に体調管理は自己責任である──こう言ってしまうと、上司としてやることがないようにも感じる。だが、これを念頭に置いた上で、マネジメントの観点から次のようなことが必要になってくる。

(1)部下の体調の波を織り込んだ上で、日々の業務指示をしたり、体調の悪い部下への配慮をする
(2)不調が長く続くようであれば、仕事が原因になっている可能性もあるので、面談して話を聞いてみる
(3)長く続く病気であれば、治療をしながら仕事を続けられるような方法を、本人と相談しながら模索する


以上のような対処の前提として、「部下の体調に気づく」ことが重要になる。

とは言え、ちょっとくらい体調が悪いからといって、「今日は調子が悪いです」と申告してくれる人はそれほどいないだろう。たいていは隠そうとするものだし、もしくは不調がもはや日常になってしまい、本人も気づいていないということもある。

したがって、上司の側からの「今日はちょっと顔色が悪いな」という気づきが大切なのだ。そのためには、一人ひとりの日頃の状況を知っておかなければならない。

部下の体調や気分の定点観測の場としては、全員が顔をそろえ、これから仕事を始める、という朝の時間が最適だ。もちろん職場によっては、朝全員が顔をそろえないこともあるだろうから、適宜自分の職場に合うように読み替えて欲しい。

部下を観察する際は、次のような点を注意深く見てみよう。

・顔色はよいか
・声が極端に小さいことはないか、声に張りがあるか
・応答するときに不自然な間がないか
・服装が整っているか
・笑顔があるか

朝のあいさつにプラスすること

観察といっても、もちろん意味もなく、相手の顔をじろじろと眺め回すことは難しい。勝負は一瞬である。その一瞬とは、朝職場に来て、互いにあいさつする時だ。

部下からのあいさつに対して、顔も見ず、口だけモゴモゴ動かしてあいさつを返していないだろうか? これでは観察どころではない。

あいさつするときには、次の3点をプラスする習慣をつけよう。

(1)名前を呼ぶ
名前を呼ばれると、部下はあなたの顔を見る。これで顔色などをはっきり見ることができる。観察のためだけではなく、相手の名前を呼ぶことは、信頼感を得るコミュニケーションの基本である。

(2)笑顔
上司から笑顔であいさつされれば、普通は部下からも笑顔が返ってくる。この時に相手がにっこりしないようだと、疲れているのか、何か気がかりがあるのか、ということを心配する必要がある。当然ながら、名前を呼ぶだけではなく、笑顔を向けることで、相手との心の距離がさらにもう一歩縮まるだろう。

(3)一言加える
単純に「暑いね」でもいい。しかし全員に「暑いね」と声をかけるわけにもいかないので、やはり、その部下の個性に合った言葉を探す必要がある。何か変化があったり、気になることがあれば、人前で言える範囲で一言声をかけてみよう。
「お、新しいスーツだね」
「何か眠そうな顔だなぁ。寝坊したの?」
こんな調子で、相手に関心を持っているということを、自然に伝えるといい。そうすれば部下も、「観察されている」のではなく、「関心を持ってくれている」と好意的に受け止めるだろう。

以上のような朝のあいさつの習慣をつけると、部下の体調の変化に気づくようになるだけではなく、調子の悪い時、困った時に、部下が隠すことなくあなたに相談してくるはずだ。

上司として、プレゼンティーイズムに対処する方法とは、部下の状態に気づくよう心がけるとともに、部下が自分の状態を素直に伝えてくるようような信頼関係を築くこと、と言ってもよいだろう。
李怜香(り れいか)
メンタルサポートろうむ 代表
社会保険労務士/ハラスメント防止コンサルタント/産業カウンセラー/健康経営エキスパートアドバイザー

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