近年、依頼心は強いにもかかわらず、素直に「人を頼る」ということが苦手な若者が増えたように感じます。
どうやら、上の人に頼らないで、わからないことがあると、仲間内で相談するようです。結果、時間はかかるが、
たいした成果に結びつかないということになるようです。
そのような傾向があるためか、「報連相の研修をやって欲しい」という要望が増えました。
ある会社では、「報連相の順番ではなく、とにかくまず相談。それから、連絡、報告の順だ」とも言われています。
それくらい、相談ごとができなくなっているようです。
逆に、やたらと周りを頼って、自分で仕事をしない、と見られる新人もいるようですが、どちらかと言えば、
「相談できない新人」の方が多数を占めるようです。これは、表面的には、「コミュニケーション能力の欠如」ですが、裏には様々な思考が隠れていると思います。

例えば、
・「他人からどう見られるかを気にする意識」があり、「できない奴」とは思われたくない。
・仕事の上で自ら工夫しようとはしない。結果「こうしたいのですが」という相談は生じない(この背景には、
「余計なことをして失敗するのはイヤ」という意識がある)。
・年配者と話す事に対する苦手感が強い。意識して、敬語や丁寧語を使う環境に慣れない。
等の意識が考えられます。

さて、「できないことを「できません」とハッキリ言うようでは、職業人としての資格に欠ける」という設問の
回答傾向は次のようになっています。
そう思う   26.3%
わからない  16.6%
そう思わない 57.1%

この数値、「そう思わない」という回答で52.7~59.4%の間で推移しており、増減に変わった傾向はありません。
2005年と2009年に52%台まで下がった他は、ほぼ57%程度で推移しています。
6割近い新入社員が、「できないことは、できないと言った方がいい」と判断しているわけです。
分からないのに取り掛かって、業務全体を混乱に陥れるよりは、できないと言ってもらった方がよほど良いので、
正しいことではあります。

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現場では、「教えてもらっていないことはできない」とはっきり言う新入社員が増えた、という意見も聞くことがあります。
それに対して、昔の職人のように「四の五の言わず、とにかくやれ!」というと、新人がメンタル不調に陥るか、
上司がパワハラで訴えられるかしてしまいますので、言ってはいけません。
ここは、丁寧に教えるしかないのが、現実のようです。

ただ、どうも「応用を効かせる」ことが、ほとんどできなくなっている。そこは問題視しておきたいと思います。
基礎を覚えたら、そこから応用ですが、応用の部分までいちいち教えないといけない状態になっています。
「1を聞いて10を知れ」とは言わないまでも、「8教えた。残りは、やっているところを見せたから、後はやってみて」
という程度でも通じないので、仕方なく、10まで教えることになります。
それが「指示されたことしかやらない」という年配者からの批判となっています。

弊社の研修では、研修の始まりと終わりに「お願いします」「ありがとうございました」とあいさつをするよう徹底します。
ところが、弊社の研修が終わって、お客様社内の研修になった途端、その挨拶をやらなくなる、という事例が
この数年散発的に生じています。「あの先生だから、やるんだと思いました」と悪気なく、言うそうです。
同じように研修期間中だから、やる、という発想はなく、そこで、言われたら、またやり始めるわけです。
こうなると、報告の仕方やメモの取り方、名刺交換の仕方等、あらゆるもので応用が利かず、「ここでもやるのですか?」「この場合はどうやるのですか?」と状況が変わるたびに聞いてくるか、やらないかという羽目に陥ります。

また、通常、上司は「彼になら、できる」と思うから仕事を振っていることがほとんどです。その状態でも「できません」「やったことがありません」と言われると、おそらく、上司の方がへこみます。
この時に期待している応えは、「なぜ、できないと思うのか」、「どの部分がわかればできるのか」ということを
指示された側が言うことでしょう。「何ができて、何ができないのか」の全体像を見据えて、自分で把握している人は
間違いなく伸びます。そうでなく、指示されたことをやっているだけで、業務の全体像を見据えていない人は、
ただの作業者としか見られません。

このようなことは、新入社員研修の場面で伝え、研修の中でも実践させるのですが、それでもまだこの考え方が体得できる人は少数、というのが近年の実態です。

この辺り、同じ「できない」というとしても、質の差がでているのが実態ではないでしょうか。
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