OJT偏重の社員教育の問題点

ごく最近、あるコンペティションがありまして、役員を育成していく、次の経営者を育成していくことをゴールとする教育の体系を提案しろという話がありました。背景として、その会社は業界で長くナンバー1でしたが、あるときからナンバー2になってしまいました。ナンバー1だった時代が長かったので、ナンバー1企業を経営する経営力は身についているのですが、ナンバー2になって、ナンバー1をもう一度奪還する経営力がないと、経営者は認識されています。そのため、今必要な経営者の能力を、今後5年から10年の間になんとか高めていく教育体系を作りたいという内容でした。これは、現在の日本企業の要請として非常に典型的な話だと思いました。これも、今必要な能力、スキルが、今までのやり方では育たないということだと思います。
 人材開発部門のミッションを追っていくと、経営計画達成のための人材育成、人材構成になり、経営計画を実現するための人材を確保し、育成して配置していくということになります。
 「ヒューマン・リソース・フロー」という言葉があります。これは、20年ぐらい前にハーバード大学の人材育成策として紹介され、モービル石油の梅津さんという人事部長が訳されていますが、フローを管理するという方法です。当時の日本企業の人材育成は、少し余剰の人員を抱えながら、トーナメント型で選抜していくというモデルでした。これに対して、ヒューマンリソースフローという考え方は、常に、適時的確な人材構成にしていくというもの。どの瞬間を切っても、最適な人たちが最適な数だけいるという考え方です。
 しかしそれができていない、環境の変化に対応する経営戦略が考えられているわけですが、それに応じたスキルが育成できていないと経営者が考えているのだと思います。
 教育体系は各社とも持っていますが、それは以前に作られたもので、当時の人材要請から作られたものです。そこで作られるスキルが、今必要なものと一致しているのかという問題があります。また、教育体系自体を行事的に運用しているという会社もあります。今年の10年目社員の研修は、教育体系のなかでみると、こういうことをやりますというように、毎年やっていく。あるいは、教育担当が今年はどんな研修をやるかを計画する際に、「今度の研修はコーチングをやろうか」などと、従来の勘と経験から決められていたりします。
 また、OJTが大事だという方が多いのですが、私もOJTは重要だと思いますが、どうもOJT偏重の弊害もあると思っています。
 ひとつは、OJTは過去のやり方を継承していくためのものだという点です。もしかすると新しいやり方が必要な状況なのに、OJTによって過去のやり方が再生産されているということが考えられます。もうひとつの問題はOJTの多くが属人的である場こと。仕組みになっていない場合があります。

スキルギャップを可視化して問題点を見つける

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