管理職の能力不足が問われている

今日の話は、こうした定量分析アプローチでスキル課題を可視化できるというものです。会社の各階層、各セグメントで必要なスキルと、今、その仕事に就いている人のスキルとのギャップを見るという考え方です。セグメントというのは、例えば会社のなかで生産系の部長なのか、営業系の部長なのかといったことを、セグメントという言い方をしています。そのギャップの度合いが全社でどのようになっているかによって、どこから育成的な施策を打つのかを考えていきます。
 ご紹介する方法は皆さんの会社でもすぐに取り組むことができるものです。まず、私たちが仕事のなかで経営者の方から投げかけられる人材開発的な課題を類型的にまとめたものを見ていきましょう。
 多くの経営者からは、今の管理職の能力をすぐに上げたいという要請を受けることがあります。大きな会社でも、管理職への育成施策はあまり実施されていないと思います。新任管理職のトレーニングについては、ほとんどの会社が実施していますが、既任の管理職についての育成施策はあまりされてきていません。例外的に、資格の滞留者に対して、それ以上昇格しない、ある資格以上は昇格しないであろうと予想される滞留者の方に対してのブラッシュアップのための研修、あるいは上位資格への昇格直前のブラッシュアップについては取り組まれている会社もありますが、全管理職に対しての教育はほとんど実施されていません。
 そうしたなかでここ数年、管理職を鍛え直したいという要望がよく出されます。要望にはいくつかのパターンがあります。
 一番多いのは部下育成への要望です。日本の管理職の大半はプレイングマネージャーですので、プレイヤーとしての働きを優先して、部下を育てるということが後手に回ってきたというのが問題になっています。これが経営者にとっては、リーダーが輩出されてこないという危機感につながっています。
 もうひとつは、変革期をリードする人材を育成したいという要望です。今までと同じやり方では通用しない時代にあって、自ら課題を発見し解決策を考えていけるリーダーを育てたいという要望です。
 以上の要望を整理すると、課題発見、解決力、戦略策定力、計画提案力といった言い方になります。
 現場力という言葉もよく出されます。現在の多くの経営者が求めているのは、各部門の目標をきっちり達成する、全部長が部門の目標を達成できるようにしたいという内容です。実際には、達成できる部長と達成できない部長がいるので、できない部長をすぐにできるようにしたいという要請だったりします。
 これは、通常の教育体系、教育施策が機能していれば、現場力というスキルも開発できていたかもしれませんが、それでも、今求められているスキルは前とは少し違うということで、「今、必要スキルを高めたい」という要望につながっているのだと思います。
 例えば、「戦略育成プログラム」を作りたいという要請が非常に多くなっています。階層別の育成施策はあるのだが、それでは足りないから選抜型で若い層で、目をつけた人材を経営者の予備軍として育てたいという要請があったりします。
 これまでの人材育成施策では、今必要な能力、スキルを育てられないというのが、経営者に共通した問題であるようです。さらに、それをすぐに実現したい、それを仕組みとして作り直したい、今の教育体系が必要なスキルを生み出していけるものではないから、それを作り直したいという要望が多くなっています。
 役員育成の仕組みという話もよく聞きます。これも、既存の役員に対するスキルアップと、役員候補者の育成という2つが上げられます。

OJT偏重の社員教育の問題点

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